WBSCの球数制限ルールに基づき、センバツベスト4チームに当てはめてみると…?
達(天理)、畔柳(中京大中京)
センバツは東海大相模の優勝で幕が閉じた。大会終盤になると、上位進出チームのエースの球数である。さらにけががあるとその議論はヒートアップする。今年は中京大中京の畔柳 亨丞、天理の達 孝太の存在により過熱した。
現在、実施されている「1週間500球」は試行期間中だという。次なるルールがもし厳格となった場合、どうなるのか。
現在の高校野球で、より厳しい球数ルールが適用されているものといえば、「WBSC(世界野球ソフトボール連盟)」が制定するルールだろう。このルールをもう一度整理するとこうなる。
1球から49球 休養日なしで連投可能
50球から104球 中1日
105球以上 中4日
このルールはU-18ワールドカップに出場すると適用され、読者の中でも出場投手の球数を見ながら、ゲームを見ていた方も多いだろう。
日本の高校球児すべてがあてはまるものではないが、日本代表になりたい投手にとっては、頭に入れないといけないルールだといえる。
球数について意見したいけれど、具体的な提案が浮かばないという方もぜひみていただきたいと思う。
今回サンプルにしたいのは、ベスト4まで勝ち進んだ東海大相模、明豊、中京大中京、天理の4チームだ。
【東海大相模】
1回戦 東海大甲府 3月20日
石川永希 104球
石田隼都 52球
2回戦 鳥取城北 3月26日
求 航太郎 55球
石田隼都 70球
準決勝 3月31日
石田隼都 122球
決勝 4月1日
石川永稀 90球
求 航太郎 36球
石田 隼都 43球
【明豊】
1回戦 東播磨 3月22日
京本 眞 47球
太田 虎次朗 64球
財原 光優 102球
2回戦 市立和歌山 3月26日
準々決勝 智辯学園 3月29日
準決勝 中京大中京 3月31日
太田虎次朗 101球
京本 眞 39球
決勝 東海大相模 4月1日
太田 虎次朗 87球
京本 眞 24球
【天理】
1回戦 宮崎商 3月20日
達 孝太 161球
準々決勝 仙台育英 3月29日
達 孝太 164球
仲川 一平 16球
準決勝 東海大相模
仲川 一平 107球
南沢 佑音 11球
【中京大中京】
1回戦 専大松戸 3月25日
畔柳 亨丞 131球
2回戦 常総学院 3月27日
畔柳 亨丞 110球
松葉 新叶 20球
柴田 青 32球
準決勝 明豊 3月31日
柴田 青 77球
畔柳 亨丞 31球
大江 嶺 50球
明豊の京本、太田、財原
こうしてみると、東海大相模は準々決勝まで抵触する選手はいない。エース・石田は準々決勝の時点で116球を投じているため、この時点でWBSCの球数制限に基づくと、登板不可である。
連投の影響は大きく、福岡大大濠戦の平均球速は135.75キロ、準決勝の天理戦の平均球速は135.63キロとあまり変わりないが、連投となった決勝戦では最速137キロで、平均球速については131.1キロだった。
また天理の達は日程面で恵まれたといえる。宮崎商戦で161球投げているが、WBSCルールに基づいても中4日の健大高崎戦で先発可能。健大高崎戦の時点で134球投げているため、準々決勝では登板不可。それでも中3日のため、まずまずの登板間隔がある。
3試合の平均球速は
宮崎商戦 138.76キロ 最速146キロ
健大高崎戦 141.4キロ 最速148キロ
仙台育英戦 138.2キロ 最速146キロ
達は1年生から見ているが、当時の達は角度のある直球は光っても、スタミナ不足で7回以降にがくっと球速が落ちる投手だった。先発完投できる投手になるために投げ込みの回数を増やし、トレーニングをしてきた成果が3試合完投、平均球速の高さにつながっている。
球数だけ見れば投げすぎではあるが、先発完投を目指したことによって目に見えた成長はしているということは知っていただきたい。
仙台育英戦の時点で登板不可の球数なのだが、脇腹の違和感があったため、登板をとりやめて本当に良かった球数だといえる。
そして対照的なのは中京大中京の畔柳だ。WBSCのルールに基づくと、初戦の時点で3月30日まで登板不可。ここに不公平感を感じる方はいるだろう。日程はかなりタイトだが、畔柳を中1日で抑えられる104球以内の起用法であれば、結果は違ったかもしれない。最も中京大中京がベスト4まで勝ち上がれたかはわからない。
畔柳は専大松戸戦から平均球速141.6キロ、常総学院戦では138.71キロ、東海大菅生戦では139,81キロとかなり高水準だ。2完封もあり、ビッグ4にふさわしい投手だろう。ただ彼は25日から29日までの5日間の3試合で379球を投げていることだ。平均球速140キロ前後の速球を投げられる投手の負担は想像以上に大きい。色々含めると、準決勝の途中降板の要因はそろっていた。
この中で投手運用は最もピカイチだったのは明豊だ。準決勝まで105球以上を投げた投手は1人もいない。準決勝で太田は101球を投げたため、中1日の休養が必要なので決勝戦では登板できなかった。しかし本来、準決勝と決勝の間に休養日があり、従来のスケジュールであれば、太田は決勝戦でも投げられたということになる。明豊の投手陣は初戦から最後までクオリティが落ちなかった。
限られたイニングで力を発揮する調整がうまくできたのだろう。
3投手がバランスよく登板できるまでの実力を身に着けることができたのは、投手担当の赤峰部長の指導が大きく、そしてしっかりとマネジメントを行った川崎監督の采配も素晴らしかった。そして3投手も甲子園という大舞台で持ち味を発揮することができた。
WBSCルールはあくまで一例だが、もしこのルールが導入されていたら、ベスト4進出は変わっていた可能性はあり、このルールでもうまく運用できていた東海大相模と明豊のチームマネジメントは高く評価されるべきである。
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