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7回制で戦った静岡、2人のプロ野球選手が生まれた岐阜の高校野球を振り返る【東海地区・後編】

2020.12.27

 東海地区の高校野球もコロナの影響で3月の春季大会予選以降、すべてが中止となってしまった。そんな状況ではあったが、7月には各県高野連の管轄下で独自の大会が開催された。

 岐阜県は開幕を予定していた土日の雨で開催が1週間遅れた。三重県も大会そのものはずれ込んだ。静岡県は7回制で開催するということになった。まさに、独自大会ということになった。それぞれの大会を経て、秋季大会も無事終了。東海地区の高校野球は来季への希望をつないだ。

 なお、愛知県に関しての総括は別途紹介しているので、ここでは静岡、岐阜、三重の総括とする。後編では岐阜と静岡に焦点を当てていく。

7回制で戦った静岡、2人のプロ野球選手が生まれた岐阜の高校野球を振り返る【東海地区・後編】 | 高校野球ドットコム前編はこちらから!
常連校が健在の岐阜、実力拮抗の三重と静岡 2020年東海地区高校野球を総括【前編】

大垣北、岐阜第一らが躍進した岐阜大会。ドラフト指名の2選手の活躍にも期待。

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中日5位の加藤翼(帝京大可児)

 岐阜の夏の独自大会を制したのは大垣日大だった。3回戦では岐阜総合学園の粘りに6対5と苦しんで勝利。準々決勝で美濃加茂に3対1で快勝すると、準決勝は岐阜第一に終盤の攻防を制して5対3で勝った。

 さらに決勝では昨年の優勝校中京に延長11回タイブレークの末に6対5で勝利。2年ぶりに夏の岐阜大会を制した。大垣日大は、その後、8月に開催された三重県1位のいなべ総合との交流試合(三岐大会)でも接戦で勝利している。

 近年、上位進出校が固定してきているという印象も否めない岐阜県の勢力構図だ。そんな中で、この夏の大会では大垣北が93年以来のベスト4と躍進したのが光った。初戦で曲者とも言うべき海津明誠を下して勢いに乗れたのも大きかったようだ。

 さらに3回戦で岐阜城北、4回戦は飛騨高山と下して準々決勝では岐阜聖徳学園に延長10回タイブレークで競り勝ってのベスト4だった。準決勝では中京に完敗という形だったが、中盤までは互角に近い戦いで食い下がって健闘した。

 昨夏の甲子園ではベスト4まで進出した中京(当時は中京学院大中京)は、プロ注目の元 謙太君が5試合で3本塁打とその強打ぶりを見せつけた。元君は10月のドラフトではオリックスから2位指名を受けているが、この大会での活躍は大いにアピールの場になっていたであろう。

 岐阜県のドラフト指名ということで言えば、最速153キロをマークした帝京大可児20110君も中日から5位指名を受けている。もっとも、大会では初戦の武義との試合途中に中指のマメを潰したということで、夏季大会の登板は少なかった。準々決勝で岐阜第一戦に終盤で投げたものの、万全ではなかったこともあり本塁打を浴びるなどして破れた。それでも、最後は自己最高をマークするなど素材力の高さは示したようだ。

 岐阜第一は夏はベスト4。秋季県大会も3位校となり東海大会にも進出してベスト4まで進出している。2年生で4番を任されていた阪口 樂君は来季の注目選手として今から話題に上っている逸材だ。

[page_break:静岡大会に波乱をもたらした「7回制」。勝利へのポイントは、先制と粘り。]

静岡大会に波乱をもたらした「7回制」。勝利へのポイントは、先制と粘り。

7回制で戦った静岡、2人のプロ野球選手が生まれた岐阜の高校野球を振り返る【東海地区・後編】 | 高校野球ドットコム
高田 琢登

 7回制で行われた静岡大会は波乱含みだった。

 頂点に立ったのは1985年に創部以来、夏初制覇となった聖隷クリストファーだった。初戦が昨秋の優勝校藤枝明誠浜松修学舎の勝者。次が浜松学院静清の勝者という序盤から厳しい組み合わせだったが、藤枝明誠を先制攻撃で下して勢いに乗った。準々決勝では常葉大菊川に8回タイブレークで2対1。

 準決勝は静岡商に9対6。ダブルヘッターとなった決勝で浜松開誠館に6対5と競り勝って、2016年秋以来の県1位。夏としては初の優勝を果たした。ベテラン上村 敏正監督が就任して3年目。ようやく悲願達成となった。

 浜松開誠館は大会通じてチーム打率3割5分1厘と破壊力を示した。近鉄などで活躍した中村 紀洋打撃コーチの指導成果とも言えようか。また、エースの長屋 竣大君は7回制ということもあってか、序盤から力の投球で投げまくった。

 序盤が終わったら、中盤がなくいきなり終盤という展開になる7回制では戸惑いも隠せなかったところもあったようだ。

 「持ち味は7回以降の粘り」ということを信条として昨秋の県大会と東海大会で結果を出して、明治神宮枠の恩恵でセンバツ初出場を果たしていた加藤学園は、夏は飛龍との初戦で終盤反撃しようという段階で試合終了。2対3で敗れた。それでも、甲子園交流試合では米山 学監督は1年生を起用するなどして大胆にメンバー入れ替えして挑み鹿児島城西を下した。さらに、秋季大会も東部地区を1位通過すると、県大会はベスト4では藤枝明誠に敗れながらも3位決定戦を制して東海大会に2年連続出場を果たした。近年、安定しているところを示している。

 夏季大会の準々決勝では静岡静岡商の伝統の対決もあった。この試合は高田 琢登投手を擁する静岡商が制した。

 父親でもある高田 晋松監督は7回制ということも意識して、「先制点がかなり試合を左右すると思うので、打線は打っている者から並べていく方針」ということを大会を通じて貫いていった。準決勝で、聖隷クリストファーに屈したものの、静岡商健在は十分に示すことは出来たと言えよう。

 昨夏にはチームとして初めての決勝進出を果たした駿河総合は、この夏もベスト4に進出を果たしたのは立派だった。エースの森裕二朗君の好投が光ったが、準決勝では浜松開誠館に屈した。

 古豪と言っていい島田商静岡と共にベスト8まで進出と健闘した。静岡は大型チームとして秋季大会も期待されたが、秋は三島南の準々決勝でかわされた。1年を通して、もう一つ悔いの残った年だったかもしれない。

 昨春には復活を果たした浜松商も、この夏は2勝止まり。静岡市立が常葉大橘、伊東商東海大静岡翔洋市立沼津を下してのベスト8進出は健闘と言っていいであろう。

 コロナに襲われた2020年の高校野球だったが、東海地区でもそれぞれの高野連の尽力などで、無事大会を終了。厳しい環境下でも、「やれることをやれる範囲でやっていこう」という姿勢は貫けたのではないだろうか。

(記事:手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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