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唯一の春季大会開催、連合チームの16強入りなど2020年の沖縄を総決算!

2020.12.25

 全国の高校野球ファンと球児たちが被害を被った未曾有のコロナウイルス。選抜高等学校野球大会だけでなく全国高校野球選手権大会までもが無くなった。戦争以外では初となる大会の中止は、沖縄の球児たちにも悲劇のニュースとなった。

 そんな2020年を3点に分けて総括してみる。

1.全国で唯一春季大会開催

唯一の春季大会開催、連合チームの16強入りなど2020年の沖縄を総決算! | 高校野球ドットコム
春季3回戦で興南を撃破した日本ウェルネス沖縄

 センバツの中止が決定後、各都道府県が春の大会開催を延期、中止、または模索していく中、沖縄県高等学校野球連盟は開催を決断。県高校野球史上初となる無観客試合と、関係者の検温などの対策を講じることにした。

 また、選手たちを出来るだけ早く帰すようにと、試合前のノックや勝利後の校歌斉唱もカット。通常、試合を行うチーム以外で行うボールボーイやグラウンド整備などの補助校も無くし、対戦する2校の野球部と先生方で行った。その結果、準々決勝まで何事もなく終わることが出来た。

 4月に入り、沖縄県でもウイルス感染者が徐々に拡大し始めたことで、準決勝以降の日程の中止を決定。その後、選手や関係者にウイルス感染者が出なかったことが何よりの幸いであったが、結果論からではなく、また野球をやりきった球児たちの晴れ晴れとした表情を見てきた者として、大会を遂行した沖縄県高等学校野球連盟の決断は英断だった。

 それが無ければ、次に挙げる連合校の活躍は無かったし、何よりチームに一人しかいなかった2人の野球部員たちに、諦めなければ夢は叶うということを体験させることも無かったのだから。

[page_break:2.連合校初の大会2勝利、初のベスト16入り]

2.連合校初の大会2勝利、初のベスト16入り

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仲宗根 匠(真和志)

 2020年の春季大会で参加した連合校は3チーム。宮古工と宮古総実、那覇工陽明は2校連合だったが、もう一つが開邦・南部農・辺土名真和志の4校。辺土名比嘉 銀二真和志仲宗根 匠は、たった一人の部員となりながらも、顧問の先生とともに野球を続けてきた部員だ。

 諦めず続けてきた練習は、試合があってこそ実を結ぶ。週末に集まり、他校の部員たちと練習出来る喜びに満ちた二人の思いが、ナインの力をも引き出したのか。頭文字を合わせた「開農辺真」連合校が、春の旋風を巻き起こした。

 初戦の沖縄高専との試合では、オーダー9人中7人が安打をマークするなど二桁安打8得点で7回コールド勝ち。投げてはアンダーハンドの仲宗根 匠真和志)が、10奪三振1失点の好投を見せた。圧巻だったのは二回戦。

 秋の準優勝校であるシード八重山農林と対戦した開農辺真連合校は初回、4番・竹内 崇馬(開邦)のタイムリーで先制。竹内 崇馬は3回にもタイムリーを放つ活躍。4回、八重山農林に追い付かれたものの直後の5回、7番・安慶名 真生(南部農)の2点タイムリー二塁打を含む4安打を集め3得点するなど、13安打で7点。

 初戦に続きマウンドを守った仲宗根匠真和志)は、171球を投げる渾身の力投を見せ7対4で見事勝利。これまでの、全ての大会に参戦してきた連合校としては初の同大会2勝利、そして初のベスト16入り。歴史にその名を刻んだのであった。

[page_break:3.独自の夏季大会開催]

3.独自の夏季大会開催

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砂川羅杏(八重山)

 夏の甲子園が中止となった日。各校の三年生が退部を決意するなど、悲劇が起こった。もちろん先生方は留意したが、目指していた甲子園が消えたショックは選手たちには大きかった。甲子園は無くなったが、何とか独自の大会だけはやってほしい。ここまで頑張ってきた三年生たちの思いが、興南・我喜屋優監督や美里工・神谷嘉宗監督らを動かす。

 高校野球の先生方で歌う「ああ栄冠は君に輝く沖縄Version」が作成され、YouTubeで選手たちを励まし続けた。その甲斐あって独自の夏季大会開催の機運が生まれ、2020沖縄県高等学校野球夏季大会が行われることとなった。

 入学式を終えたものの、その翌日から学校に全く通えない新一年生たち。同様に休校状態の二年生や三年生たちは、密にならない人数で集まり、近くの公園での自主練や走り込みなどを続けた。

 その孤独感を吹き払ったのがLINE。「今日はこういう練習をしました。みんな頑張りましょう」そのような言葉を書き込み、野球部で共有しながらモチベーションを保ち続けた。

 6月中旬、ようやく休校が明けグラウンドで白球を追い掛ける球児たちの姿が戻った。感染を出来るだけ防ぐため、練習時間は2時間以内とした。仲間と一緒に野球をする喜びに溢れた選手たちの笑顔があった。高校野球三年年最後の夏のために、学童野球から頑張ってきた球児が殆どを占める。

 たとえ甲子園が無くなっても、自分たちの集大成を見せる舞台がある。「目指せ!心の甲子園」が、全校野球部員の合言葉になった。

 夏季大会は決勝まで何事も無く進み無事終了。勝った三年生、負けた三年生にとっても生涯忘れることのない特別な夏として心に刻まれたのだった。

(文=當山雅通

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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