第964回 【第101回選手権大会総括】星稜vs智辯和歌山で炙り出された今大会の象徴2019年08月23日

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[1]炙り出た今大会の象徴
[2]ホームランが多かった今大会

 履正社の初優勝で幕を閉じた今大会、最も印象に残ったのは準優勝校・星稜のエース、奥川 恭伸(3年)のピッチングだ。とくに強い印象を残したのは3回戦の智弁和歌山戦で、「14回、165球、3安打、23三振、1四球、2死球、失点1」でわかるように盤石の出来だった。

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炙り出た今大会の象徴



強いインパクトを残した奥川恭伸(星稜) 写真:共同通信

 私が注目したのは1イニング平均11.8球という球数である。9回に換算すれば106球。

 ライバルの佐々木 朗希大船渡)が岩手大会3回戦の盛岡四戦で同じく14回投げ194球を要していることを思えば、奥川の球数の少なさが実感できると思う。ちなみに、佐々木の盛岡四戦の球数は1イニング平均13.9球で、9回に換算すれば125球なのでこっちも非常に優秀である。

 奥川の智辯和歌山戦をもっと詳しく分析すれば今大会の特徴が自然と炙り出されてくる。この試合で奥川は23三振奪っており、そのうち10個が3球三振だった。センバツではどうだったかというと、1回戦で完封した履正社戦では17奪三振のち3球三振はわずか2個。球数が少なく三振を多く取れるのはコントロールのよさと変化球のキレのよさが要因として考えられるが、球審のストライク・ボールのジャッジも影響している。結論から言えば、今大会の球審のジャッジは極めてシンプルで好感が持てた。

 春までは2ストライクで3球目を際どいコースに投げればたいてい「ボール」とジャッジされた。また、私立の強豪と地方の公立の進学校が対戦すれば、有利なジャッジが下されるのはたいてい公立の進学校のほうである。弱いほう(条件が不利なほう)に有利なジャッジをしたほうが試合は面白い。つまり、試合を演出するのは選手ではなく審判である、とはあまりにも極端なもの言いだが、それに近い驕りが審判団にあったと思う。

 そういう驕りがこの夏はまったく見えなかった。ストライクはストライク、ボールはボール、まさにシンプルに球審は「ストライク・ボール」を判定した。奥川の3球三振の多さの陰に審判団の意識改革があったことは否めない。

 審判の変貌を象徴する試合が3回戦の明石商宇部鴻城戦だろう。2対2でもつれ込んだ延長10回裏、明石商は無死一塁の場面で岡田 光(3年)のバントを投手の池村健太郎(3年)が二塁に送球。二里塁審はワンバンドの球をカバーに入った遊撃手が捕球したと判断し、「アウト」とジャッジしたが、審判団が自主的に再検証を行い、セーフと判定し直した。

 テレビの番組でも取り上げていたが、審判のジャッジが覆ったのは長い春、夏の大会史上、初めてのことである。審判の意識の変化を象徴するシーンと言っていいだろう。

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小関 順二
小関 順二
  • 出身地:神奈川県横須賀市生まれ。
  • ■ プロ野球のドラフト(新人補強)戦略の重要性に初めて着目し、野球メディアに「ドラフト」というカテゴリーを確立した。ストップウオッチを使った打者走者の各塁走塁、捕手の二塁スローイングなど各種タイムを紹介したのも初めてで、現在は当たり前のように各種メディアで「1.8秒台の強肩捕手」、「一塁到達3.9秒台の俊足」という表現が使われている。
  • ■ 主な著書に『プロ野球問題だらけの12球団』(年度版・草思社)、『プロ野球スカウティング・レポート』(年度版・廣済堂あかつき)、『ドラフト物語』(廣済堂あかつき)、『野球力』(講談社+α新書)、『プロ野球サムライたち』(文春新書)などがある。
  • ベースボールファン(有料コラム)では、「野球を歩く」を寄稿、野球ファン必見の野球歴史コラムを配信している。 
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