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【愛知大会総括】令和最初の夏の愛知は「戦国愛知」を象徴する大会だった!

2019.08.01

 101回目の夏、令和最初の愛知大会はまさに「戦国愛知」を象徴するかのような大会と言ってもいいであろう。そして、決勝がと愛知桜丘という、どちらが勝っても初優勝(春夏通じても初の甲子園出場)という稀有なケースとなった。結果としてが、8対1と愛知桜丘を下して制した。尾張地区と東三河地区の対決で、決勝で名古屋市内勢がいないということもまた新鮮だった。

 このように、大会そのものとしては愛知の高校野球新時代到来かということを匂わせる結末でもあった。そんな愛知大会を振り返ってみる。

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第101回 全国高等学校野球選手権 愛知大会

初優勝を果たした誉が張ってきた伏線の数々

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優勝を果たした誉(第126回全尾張高等学校野球選手権大会 準決勝 東浦戦から)

 初優勝を果たしたは、4回戦で昨夏の代表校愛工大名電を下し、準決勝では全国最多勝利数を誇り、今大会も優勝候補だった中京大中京を下すなどして、ジャイアントキリングと話題になった。しかし、実は昨年の春季県大会で初優勝して東海大会に進出している。また、12年と15年夏にもベスト8に進出している。この夏への伏線は、徐々に敷かれていたともいえる。

 今年も澤野聖悠君と吉田卓矢君の3番4番も大会前から注目は浴びる存在だった。また、杉本恭一君~山口伶生君という継投も大会を通じてすっかり定着した。準決勝の中京対中京戦でも、初回に2本の本塁打で先制されても慌てることなく、終始自分たちの形を信じて戦っていかれた。このことが、結果として矢幡真也監督の言う「大大金星です」という今回の大殊勲を生んだといっていい。

 ハイライトは準々決勝の星城との試合だった。星城も今大会台風の目として活躍した話題校だった。2回戦でセンバツ優勝校の東邦に10対3とコールド勝ちして度肝を抜いた。さらには、伝統の愛知商を下して4回戦では大藤敏行監督が就任して注目されていたシード校の享栄との試合でも、強烈な打球を放って圧倒。「完敗でした」と大藤監督も脱帽した。投げても最速146キロをマークした石黒佑弥君が安定していた。

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石黒 佑弥 (野球部取材から)

 かつて豊田西で実績を挙げて星城では就任5年目の平林宏監督は、「今年は、ようやく勝負できるチームになったと感じていた」と、大会前から強豪に一泡吹かせて、「甲子園を狙いたい」という意識を明解に示していた。結果的に、優勝したに敗れたことになったが、この両校でいわゆる私学4強を2校ずつ下したということも意味が深かった。

 「雨で日程がずれ込んだり、混戦になった時は強い」と言われていたのが至学館だったが、その言葉通りにというか、ベスト4まで勝ち上がったのはさすがだった。何とか一死三塁という形を作って内野ゴロで得点を挙げていくというスタイルは、「結果として打てないものだから、こういう形にたどり着いた」と麻王義之監督は言うが、この至学館のスタイルを手本としたいという県内の公立校も多い。「どことやっても接戦、勝っても負けても接戦」という至学館、準決勝で延長の末に愛知桜丘に屈したが、最後まで至学館らしい戦いだったといえよう。

 愛知桜丘は組み合わせの妙で、準決勝で至学館に当たるまでは三河勢と対戦し続けたが、躍進著しい岡崎学園や近年同地区内でのライバルとなっている豊橋中央などを下して言うならば勝ち上がるべくして勝ち上がってきた。

 大会前半で私学4強が相次いで崩れていく中で、ベスト4まで残ってさすがと思わせた中京大中京。ベスト8、ベスト4が決まっていった段階では本命視されていたが、2年生エース高橋宏斗君も力のあるボールで安定感もあった。ただ、準決勝でに粘り負けたのは、最後で好機にあと一本を出し切れなかったことに尽きる。OBなど関係者は昭和時代の立襟の中京ユニフォームとなって令和最初の年に甲子園で蘇らせたかったという思いは、一入だったはずだ。

[page_break:次に向けて刺激となった大会だった]

次に向けて刺激となった大会だった

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春の愛知王者・中部大一(2019年春の大会 春季愛知県大会 3回戦 西尾東戦から)

 公立校で唯一ベスト8に残った安城東は大健闘だった。やや変則気味の振り子投法とでも言おうか、足を振って投球リズムを作っていく河合鉄平君の投球が見事にはまって、シード校の愛知黎明を下した名古屋工や春の全三河大会を制した科技豊田などの有力校を翻弄していった。準々決勝でも敗れはしたものの愛知桜丘と対等に渡り合った。

 「大会終盤にここ([stadium]岡崎市民球場[/stadium])へ来るときはいつも、大会役員の仕事としてなんですけれども、今年は試合として選手たちに連れてきてもらえた」と、大見健郎監督は素直に選手たちに感謝してベスト8進出を喜んだ。

 そんな安城東に刺激を与えていた西尾東は5回戦で、ライバルともいえる愛産大三河に屈したが、2回戦では豊田西と西三河の公立の雄としての雌雄を決する対戦を制した。さらには、3回戦では昨秋の県大会3位決定戦で20対23という、史上稀に見る大乱戦で敗れた中部大春日丘に、延長タイブレークの末に借りを返すなど持ち前の粘り強い戦いぶりは健在だった。

 愛産大三河は、新チームになって勝てなかった西尾東に、昨夏の東愛知大会決勝以来の勝利だったのは、さすがに勝負強いなという印象を与えた。準々決勝では中京大中京に力負けはしたものの、昨夏の代表校らしい戦い方は示せたであろう。

 ベスト8では豊川が、6回表まで4対0と至学館にリードしていながら、雨天中止となり、再試合で敗れたのは気の毒だった。「どんな経緯であれ、敗戦は事実として受け止めなくてはいけない」という思いではあったが、エースの菊間悠斗君も安定しており、質の高いチームという印象だった。

 他には、4回戦で東浦に競り勝った刈谷北の粘り強い戦いも印象的だった。東浦を筆頭に4回戦では西尾東に敗れたが知多翔洋と、国府に敗れた半田東、夏の3勝は間違いなく自信になったであろう日本福祉大付とともに今大会で健闘した知多勢といっていいであろう。その一方で、知多の雄ともいえる大府の初戦敗退はやや残念だった。
 14年と17年、近年の中で夏は2度準優勝を果たしている栄徳も、この夏は初戦では成章を下したものの、3回戦で科技豊田に屈した。

 いずれにしても、春季県大会で1位の中部大一、2位の愛知黎明の両シード校がいずれも初戦で散るなど、混戦に拍車がかかった。そうした中で188チームの頂点に立った。この進撃は、私学4強を追い続けてきた中堅以上のチームにとっては格好の刺激になっているはずだ。

 それぞれの思いで夏休みを過ごして、秋の新チームがどうなっているのか。「戦国愛知の秋」が早くも楽しみでもある。

文=手束 仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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