第949回 【西東京大会総括】29歳の青年監督による快挙、そして力を発揮できなかった実力者たち2019年07月31日

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【目次】
[1]長所を引き出した29歳の青年監督
[2]エースの存在の大きさ

エースの存在の大きさ



日大三・井上広輝(春の都大会・修徳戦から)

 昨夏の甲子園でベスト4の日大三は、廣澤 優井上 広輝のWエースに、捕手の佐藤 英雄らが残った。昨年の甲子園で全国区の存在になった廣澤と井上だが、廣澤はやや伸び悩んだ感がある。
 廣澤は昨夏の身長189センチから、今年は193センチに伸びた。「まだまだ伸びている」という廣澤が、本当の力を発揮するのは、次のステージであろう。

 井上は昨年の春季大会で肘を痛めてから、小倉監督は回復した後も大事に使った。それは指導者として正しい判断であると思う。ただこの夏敗れた桜美林戦では、廣澤が打たれた後、2年生の児玉 悠紀をはさんで井上を投入した。小倉監督は、児玉も投手として経験を積んでいると語ったうえで、「大事にいったことで、思い切りや奮い立たせることができなかったのかもしれない」とも語っている。

 横浜高校時代の松坂 大輔は、準々決勝のPL学園との延長17回の死闘を繰り広げた翌日に行われた準決勝の明徳義塾戦は登坂を回避したものの、劣勢の中、投球の準備を始めた途端、球場の雰囲気が変わり、逆転勝ちにつながった。エースは単なる投手陣の駒の1人ではない。その意識が変わらない限り、球数制限などはうまく機能しない。

 八王子帝京八王子に敗れた試合で八王子は4番手くらいの投手が先発した。期待の選手であり、今後の長い戦いを考えれば、必要な投手起用だったと思う。ただそれを、両チームの選手たちがどう感じたかは、別の問題である。

ベテランの指導者が育て上げた都立豊多摩



国士舘(春の都大会・東海大菅生戦から)

 今大会、波乱の幕開けは、秋優勝、春準優勝の国士舘が初戦で都立日野に敗れたことだった。都立日野も実力のある学校であり、波乱と呼ぶのは失礼かもしれない。それでも同じ日、シード校の法政も都立狛江に敗れた。

 ノーシードながら強豪の明大中野八王子は、都立田無に苦戦し、明星に敗れた。
 明星には本来、西村英紀という2年前の秋季都大会で準々決勝進出の立役者となった好投手がいるが、故障で夏に間に合わない。そこで遊撃手で器用な鈴木歩夢を投手に育てた。しかし春季大会では経験不足から、都立紅葉川に打ち込まれた。ところが夏は制球力が抜群になり、チームのベスト16進出に貢献した。
 結局夏に向けてチームをどう仕上げてくるかがカギとなるわけだが、それ以前に監督と選手の信頼関係も重要である。

 この夏西東京で、都立では唯一準々決勝に残った都立豊多摩は、平岩了監督が都立城東から異動して4年目になる。甲子園経験もある都立城東との意識の差に、当初は「カルチャーショック」と言って戸惑っていた平岩監督であるが、指揮官の意思が浸透し、選手に自主性が芽生えるようになった。

 また佼成学園を破り4回戦に進出した啓明学園の芦沢真矢監督は、ヤクルトのOB。「一朝一夕にはいかない」と言いつつも、年々確実にチーム力を上げている。
 初戦でコールド負けしたものの、途中まで都立小平西と互角の試合をした国際基督教大高も、かつてのような弱小校ではない。
 相変わらず、実力上位の学校と下位の力の差は、はっきりしているが、ステップアップしているチームもあり、東京の戦いを面白くしている。

 東西東京の代表として甲子園に行く関東一國學院久我山は春季都大会の準々決勝で対戦し、延長10回の熱戦の末関東一が勝っている。あれから3カ月余り、両チームとも力をつけて晴れの舞台に立つ。まずは甲子園を思い切り楽しみ、暴れてほしい。

 と同時に、敗れた学校には来年の夏に向けての戦いが始まっている。来年は東京オリンピックが開催される。明治神宮球場は開会式しか使えない代わりに、東京ドームが準決勝と決勝戦の舞台になる。きっと今後も語り継がれる夏になるに違いない。来年のドラマも楽しみである。

文=大島 裕史

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