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【神奈川大会総括】東海大相模圧巻の強さも魅せ4年ぶりV!公立校の躍進が目立つ!

2019.07.30

 今年の神奈川大会は東海大相模の優勝で幕を閉じた。そんな神奈川大会を徹底総括したい。

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第101回 全国高等学校野球選手権 神奈川大会

東海大相模の強さを感じた2試合 ベスト4進出チームの総括

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2年生スラッガートリオ 左から鵜沼魁斗、山村崇嘉、西川僚祐 ※春季大会で撮影

 今年の東海大相模はエグイ強いチームだなと思った瞬間が2つある。春季大会の日大藤沢戦ではいきなり2点の先行を許す苦しい試合展開。それでも、好左腕・武富陸を攻略して最終的には7対3で勝った。最初は武富が繰り出す140キロ前後の速球、切れのある変化球に苦しみながら、ファールで粘り、球数を重ねながら、終盤にボールが浮いてきたところを着実に逃さず、攻略する場面を見て、恐ろしさを感じた。

 2つ目は準決勝の山村学園戦。この試合では左腕・和田朋也の対応に苦しみ、6回まで0対1とリードを許す展開。その間、何度もピンチをまねきながらも堅い守備で点を与えない場面が目についた。打撃型のチームは簡単なミスで点を与えてしまう傾向があるのだが、東海大相模はピンチの場面でも慌てない。そういうところの強さを感じた。

 だから関東大会の優勝も、練習試合で奥川恭伸星稜守備陣の隙をついて5得点を奪って勝ったのも驚きはない。もちろん、夏の神奈川制覇もだ。

 神奈川決勝では、24得点を奪い、戦後の神奈川大会決勝の最多記録を更新。鵜沼魁斗山村崇嘉西川僚祐の2年生スラッガートリオ。二刀流・遠藤 成が決勝戦で本塁打を放った。パワー面だけではなく、手を緩めない積極的な攻撃、走塁は隙がなかった。また投手陣は石田 隼都紫藤 大輝野口 裕斗冨重 英二郎諸隈 惟大 と遠藤の6人で運用を進めて継投策で逃げ切った。甲子園でも優勝候補として臨んでくれそうだ。

 準優勝の日大藤沢は序盤から厳しいブロックを勝ち上がった3回戦では好左腕・佐藤一磨擁する横浜隼人にサヨナラ勝ち、準々決勝では試合巧者の鎌倉学園に4対1で競り勝ち、準決勝の桐光学園には終盤に突き放し7対5で勝利。ただ、準々決勝、準決勝で完投勝利したplayer]武冨陸[/player]は決勝戦で精彩を欠いた。武富は今大会144キロを計測するなど成長を見せたが、疲労の影響は隠せなかった。それでも次の世代は楽しみな選手が多い。今大会3本塁打を放った強打の捕手・牧原巧汰、4番を打ち、次のチームでは投手としての活躍も期待される姫木陸斗を中心に力のある選手が多い。決勝戦で大敗した悔しさは日大藤沢ナインのエネルギーになるはず。力のある選手が多いこの世代こそチャンスだ。

 ベスト4の桐光学園谷村然安達壮汰富田冬馬を中心とした強力投手陣、桐光学園 鈴木智也、俊足巧打の大型遊撃手・楠本龍聖、安達を中心とした打線も強力だった。優勝を狙える戦力だったが、神奈川を勝ち抜く厳しさを実感する。まだ投打の柱・安達が残る。どのようにチーム作りをしていくのか、楽しみだ。

 ベスト4の県立相模原は佐相監督の指導により毎年、強打のチームを作り上げるが、今年の完成度は例年以上だった。今大会4本塁打を放った温品直翔を中心とした破壊力ある打線で、投手力のある湘南学院横浜を破り、今大会一のサプライズとなった。また、来年も強豪私学を脅かすチームを作り上げるか注目だ。

[page_break:ベスト8敗退の横浜高校の課題]

ベスト8敗退の横浜高校の課題

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及川雅貴(横浜)※春季大会で撮影

 横浜のベスト8敗退は衝撃だった。全国屈指の左腕・及川雅貴、内海貴斗など入学後から期待が高かった世代だが、思うようなパフォーマンスを発揮できずに終わったのは残念。及川はなかなか理想のピッチングができずに苦しんだ。最後の夏も法政二戦で球速を測ったときの最速は143キロ。130キロ後半の速球が引っ張られる姿を見て、マックスの及川の出来ではなく、不安を感じる投球内容だったが、相模原戦で悔しいピッチングに終わった。次のステージでは高い潜在能力を発揮して、世代を代表する剛速球左腕へ成長してもらいたい。

 また野手は無駄なアクションを取って打ち上げたり、内容のないアウトが多く、淡白な試合運びが強い相手になるほど顕著になった。東海大相模との差はそこであり、東海大相模の打者はあれほど本塁打や強打を見せながら、ファールで粘りながら球数を稼いで、甘い球を呼び込むことができる。今年の横浜はそれができなかった。東海大相模の野手の姿勢は大学以上のステージで活躍するには当然のスキルであり、甲子園だけではなく、そういうステージを目指す選手が集まる横浜にとって執念深さを欠けてしまったのは、残念であり、選手育成のあり方を見直す時期に入っているのかもしれない。

 この負けがもう一度、憎たらしい強さを持つ横浜に変えることを願っている。

 今年は強打の相洋、しぶとい試合運びが目立つ向上鎌倉学園横浜商がベスト8入り。一方で桐蔭学園慶應義塾が4回戦敗退に終わり、これまで神奈川をけん引した私学にとっては苦しい夏に終わった。逆に相模原横浜商のほかに、座間横須賀総合湘南がベスト16入り。春ベスト8、夏ベスト32の藤沢清流も公立校とは思えない力強い野球が目立ち、勢力図が変わる予感をさせた夏であった。これまで私学優位の神奈川県だが、公立校やあまり目立っていなかった私学の躍進で神奈川県の高校野球のレベルを底上げしてほしい。

 日本一の野球県へ。有名私学だけではなく、公立校の選手のポテンシャルの高さを見れば、そうなれる可能性は十二分に持っている。

文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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