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春夏連続・松山聖陵か?今治西復権か?それとも済美3連覇か? 急成長選手多き愛媛、大混戦大会到来【愛媛大会展望】

2019.07.15

 雨天にたたられ7月13日(土)は開会式のみ、14日(日)も全試合中止。よって59校58チームによる57試合熱戦の最終章となる決勝戦は7月30日(月)10時から愛媛県松山市の[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]で行われることになった「第101回全国高等学校野球選手権愛媛大会」。センバツ出場の松山聖陵を第1シードに、今治西帝京第五八幡浜の順で決まったシード4校に加え、大会3連覇を狙う済美をはじめとするノーシード勢もシード校と互角以上の実力を有している。
 そこで今回は春までの公式戦結果を振り返りつつ、超ホットな情報も交えながらシード4校のブロックごとに注目選手を交えながら大会を展望していきたい。

第1シード・松山聖陵、今年も厳しいブロックに

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高校通算本塁打も10本を超えた松山聖陵の4番・大村 侑稀(3年・左翼手)

公式戦のここまで
<愛媛県地区別新人大会>東予・中予は4強、南予は2強までで打ち切り
東予 4強 新居浜西 今治北 今治西 新居浜商
東予 4強 新居浜西 今治北 今治西 新居浜商
南予 2強 帝京第五 大洲

<秋季愛媛県大会>16チーム参加
優勝 帝京第五(初優勝)
準優勝 聖カタリナ学園 3位 松山聖陵 4位 今治西
ベスト8 西条 八幡浜 今治北 済美

<秋季四国大会>
帝京第五(2年ぶり7回目の出場) 初戦<2回戦>敗退  
聖カタリナ学園(初出場)初戦敗退
松山聖陵(2年連続5回目の出場)準優勝

<センバツ>
松山聖陵(2年連続2回目の出場)初戦敗退
  

<春季愛媛県大会>16チーム参加
優勝 今治西(6年ぶり10度目)
*春季四国大会代表校順位決定戦 松山聖陵8-5今治西
準優勝 八幡浜 ベスト4 宇和島東 今治北
ベスト8 新居浜西 聖カタリナ学園 新居浜南 帝京第五

<春季四国大会>
松山聖陵(4年連続5回目の出場)1勝・ベスト4
今治西(6年ぶり16回目の出場)初戦敗退

*第1シード・松山聖陵ゾーン

 前回大会の松山聖陵は最速149キロ右腕・土居 豪人(千葉ロッテマリーンズ)を擁し初のセンバツ出場も初戦敗退。第1シードから捲土重来を期すも夏の愛媛大会では新田に初戦敗退。その新田は勢いに乗って決勝戦まで勝ち上がった。

 それから1年、センバツ初戦敗退・第1シードスタートまでは昨年と同じ系譜をたどる彼らにって同じ轍は絶対に踏みたくないところだが……。今回も初戦は古豪・今治南vs最速142キロ右腕・真鍋 魁(3年・176センチ72キロ・右投右打・西条市立西条西中出身)を擁し、最終登録では愛媛県選抜「」秋山 拓巳(阪神タイガース)がエースだった2009年以来の頂点を目指す西条の勝者。負荷の極めて高い闘いとなりそうだ。

 ただ、松山聖陵も一時は戦列を離脱していた平安山 陽(2年・177センチ80キロ・名護市立大宮中<沖縄>出身)が復帰後、最速142キロのストレートからスライダーを決め球にするスタイルを確立。春季四国大会以降、一塁手から左翼手に転じた大村 侑稀(3年・185センチ84キロ・右投右打・松山市立雄新中出身)も高校通算10本塁打を超え、主砲の風格が備わりつつある。

 この関門を抜ければ昨夏、[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]でアーチをかけた松野 誠士郎(3年・三塁手・178センチ89キロ・右投右打・愛媛松山ボーイズ出身)ら右スラッガーがそろう松山東や、試合運びの巧みな松山南などがいるとはいえ、準決勝への扉が大きく開かれることは間違いないところ。まずは7月21日(木)9時から坊っちゃんスタジアムで行われる松山聖陵初戦、主将の根本 大蓮(3年・投手・188センチ90キロ・右投右打・松山市立拓南中出身)いわく「春夏連続[stadium]甲子園[/stadium]出場にかけてやってきた」意思を明確に示すべき舞台に注目したい。

*第4シード・八幡浜ゾーン

 八幡浜は巧打の3番・石田 翔大(3年・左翼手・168センチ69キロ・右投左打・八幡浜市立愛宕中出身)、最速137キロを出す馬力も備える4番・山脇 康成(3年・一塁手兼投手・175センチ78キロ・右投右打・を中心とした「つながる打線」と、本格派の菊池 光陽(3年・170センチ70キロ・伊方町立伊方中出身)、70キロ台カーブを駆使する超軟投派・大田 龍輝(3年・161センチ55キロ・右投左打・大洲市立長浜中出身)、山脇、遊撃手兼任の主将・清水 一磨(3年・182センチ74キロ・右投両打・西予市立宇和中出身)による複数投手継投が奏功し春の県大会準優勝。

 「強い者が勝つのでななく、勝ったものが強いと思うので、1対0でも勝てるようにしたい」と「一時はモチベーションコントロールが難しい時期もあった」と明かす清水は夏の戦いへ向け「練習試合でも先発含めいろいろな想定をしてきた」手ごたえを活かす覚悟で61年ぶり2度目の夏[stadium]甲子園[/stadium]出場を見据えている。

 もちろんライバル校も黙ってはいない。八幡浜と逆ブロックに目を転ずると松山商では「春以降バットの長さを84センチから85センチに変えて飛距離が出た」主将・大村 玄(3年・中堅手・松山リトルシニア出身)が29本・「足の運びを意識したら二塁送球タイムも(1.9秒台まで)上がった」佐藤 勇斗(3年・捕手・右投右打・181センチ90キロ・えひめ西リトルシニア出身)は21本まで高校通算本塁打を積み上げ、その松山商と初戦で対戦する新居浜西は左腕・秋月 大翔(2年・170センチ73キロ・左投左打・新居浜ヤングスワローズ出身)をはじめ、1年夏から公式戦経験豊富な選手たちがエントリー。また、新居浜南には「四国発」でも紹介した巨漢4番・近藤 隆聖(3年・一塁手・右投右打・176センチ106キロ・新居浜市立角野中出身)を昨夏県ベスト8を経験した選手たちがサポートする。

 八幡浜と同ブロックも大洲川之石と一筋縄ではいかない面々がそろい、川之江柴垣 大(3年・174センチ75キロ・右投左打)、松山北新宮 昇悟(3年・180センチ80キロ・右投右打・今治中央ボーイズ出身)は、いずれも身体能力の高い強肩ショートストップであり、前回大会準優勝、最速138キロ右腕・渡部 凱斗(2年・180センチ72キロ・右投右打・松山市立余土中出身)と二塁送球1秒9の吉川 晋平(3年・170センチ77キロ・右投左打・松山中央ボーイズ)バッテリーが生命線の新田と、主将の越智 海斗(3年・遊撃手・173センチ67キロ・右投右打・西条リトルシニア出身)も「気軽に話せることができるし相談もしやすい」と効果を強調する國政 隆吾松山東~広島大)、鈴木 大夢米子北~福井工業大)の「全日本大学野球選手権ホームランコンビ」がコーチ兼寮監として新たな風を吹かせている愛媛小松とが激突する1回戦は、大会の行方をも占う注目カードだ。

[page_break:夏初戴冠へ燃える帝京第五、3連覇期す済美らが今治西に挑戦]

夏初戴冠へ燃える帝京第五、3連覇期す済美らが今治西に挑戦

春夏連続・松山聖陵か?今治西復権か?それとも済美3連覇か?  急成長選手多き愛媛、大混戦大会到来【愛媛大会展望】 | 高校野球ドットコム
帝京第五投手陣の主軸となる片山 維(2年)

*第3シード・帝京第五ゾーン

 「ウチは打線はある程度計算できる。課題は投手です」。ことあるごとに悲願の夏[stadium]甲子園[/stadium]初出場を目指す帝京第五・小林 昭則監督が口にする言葉だ。

 確かに迫間 祥平(3年・遊撃手・175センチ71キロ・右投右打・京都ヤングフレンド<京都>出身)、豊留 輝将(3年主将・三塁手・169センチ71キロ・東大阪レッドジャガーズ<大阪・軟式>出身)、若宮 大聖(3年・左翼手・180センチ73キロ・右投右打・宇和島ボーイズ出身)、四国選抜オーストラリア遠征メンバーの谷本 陸(3年・右翼手・左投左打・168センチ72キロ・大洲市立五十崎中出身)らによる打線はスタンドに次々と放り込む力こそやや不足しているものの、走塁面も含め相手に脅威を与える存在である。

 そして投手陣も指揮官の弁ほど悪くはない。制球力に進化が見える片山 維(2年・176センチ76キロ・右投右打・五條ボーイズ<奈良>出身)、右サイドからのくせ球を有する坂本 優樹(3年・170センチ69キロ・右投右打・東練馬リトルシニア<東京>出身)の2本柱は、初見での攻略は困難であろう。

 まずは最速139キロ右スリークォーター・石川 皓裕(3年・177センチ78キロ・右投右打・伊予三島リトルシニア出身)がいる三島と八幡浜工の勝者と対戦する初戦で、彼らがどんな「2019年夏バージョン・帝京第五」を披露するか、楽しみにしたい。

 このゾーン、もう1つの注目は修徳(東東京)前監督の阿保 暢彦監督が4月から率いる松山城南と、松山商を全国制覇に導いた澤田 勝彦監督が指導する愛媛北条との1回戦である。

 松山城南には身体能力あふれる渡邉 光(3年・三塁手・184センチ76キロ・右投右打・松山ぼっちゃんボーイズ出身)や高校通算16本塁打を超える佐久間 和真(3年・左翼手・169センチ62キロ・右投左打・福山リトルシニア<広島>出身)など。北条にも最速142キロ・豊嶋 航平(3年・180センチ78キロ・右投右打・今治市立西中出身)、1年夏にして中心選手の風格すら漂うリードオフマン・西本 祐真(左翼手・180センチ85キロ・えひめ港南リトルシニア出身)ら魅力的なタレントが数多くいる。本当に1回戦で当たらせるにはもったいないカードである。

 その他には、春先から本塁打を連発している宇和島東の村上 裕一郎(3年・中堅手・181センチ78キロ・右投右打・八幡浜市立保内中出身)と森田 武尊(3年・右翼手・171センチ81キロ・右投左打・宇和島市立城東中出身)。最速140キロに乗った江口と50メートル走5秒9の脚を持つ曽我部を中心にチーム力を上昇させている新居浜商などにもチェックを入れておきたい。 

[page_break:すべての試合から目が離せない今治西ゾーン]

すべての試合から目が離せない今治西ゾーン

*第2シード・今治西ゾーン 

 今大会に春夏連続出場した2015年以来、4年ぶり14回目の夏[stadium]甲子園[/stadium]を今治西。四国屈指の奪三振力を持つ最速143キロ左腕・村上 滉典(3年・172センチ68キロ・左投左打・西条市立東予東中出身)や深川 拓人(3年・左翼手・169センチ75キロ・右投左打・今治中央ボーイズ出身)らを中心とした厚みのある打線に加え、ここにきて内野手登録の谷口 恭太(3年・173センチ62キロ・右投右打・尾道リトルシニア<広島>出身)が最速142キロ右スリークォーターとして台頭。大野 康哉監督も「悪くない」と与える秘密兵器の登場で、春季四国大会後主将復帰した澤田 和希(3年・一塁手兼投手・178センチ76キロ・右投右打・ヤング南国マリナーズ<高知>出身)が「練習から1つになることをいしきしてやってきた」チームは盤石の度を高めている。

 これに対し「まずは今治西のところまで行って、そこを倒して勢いに乗りたい」と話すのは大会3連覇がかかる済美・中矢 太監督。高校通算19本塁打のアーチスト・山田 響(2年・左翼手・170センチ75キロ・右投右打・新居浜ヤングスワローズ出身)、昨年[stadium]甲子園[/stadium]ベスト4をリードで導いた高校通算16本塁打委・芦谷 泰雅(3年主将・169センチ80キロ・右投右打・伊予三島リトルシニア出身)ら打線の力は全国級なだけに「毎試合2~3人の継投を考えている」(中矢監督)投手起用と「ベンチを外れた3年生のサポートが大きい」(主将・芦谷)チームの結束がかぎとなりそうだ。

 さらにここには最速142キロ右腕・田中 択磨(3年・180センチ83キロ・右投右打・兵庫尼崎ボーイズ<兵庫>出身)、浪花 鈴太郎(180センチ72キロ・3年・二塁手・右投左打・えひめ港南リトルシニア出身)、「チームとして相手の勢いあるボールに負けないバットスイングができてきた」田中 翔大(3年主将・遊撃手・173センチ70キロ・右投右打・松山坊っちゃんボーイズ出身)が組む二遊間など多くのタレントたちに対し25歳・光田 一樹監督代行が方向性を指し示す聖カタリナ学園が今治西の真逆に2回戦スタートで控える。

 そして練習試合では対戦各校からしきりに「強い」という評判がなされ「冬場にウエイト、春から技術に取り組んだ効果が出ているし、(元・四国アイランドリーグplus愛媛マンダリンパイレーツ主将の)田口 大地部長も4月から来られて外野の連携も、とてもよくなった」と主将の入船 真太郎(3年・左翼手・187センチ80キロ・右投右打・松山市立鴨川中出身)が力強く宣言する松山工。加えて松山中央は総合力、野村も打線でシード校を倒す力あり。北宇和の最速139キロ右腕・大野 恭平(3年・175センチ73キロ・右投右打・鬼北町立広見中出身)と今治北の最速142キロ左腕・藤本 大洋(3年・173センチ68キロ・左投左打・今治市立西中出身)対決が濃厚な7月15日(月)13時開始の[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]開幕戦の行方も含め、このゾーンすべての試合から目が離せない。

 このように、どのゾーンを見ても春以降急成長した選手が点在し、混戦度を深めている「第101回全国高等学校野球選手権愛媛大会」。まずは選手たちがいいコンディションで野球ができることを切に祈りながら、令和初の愛媛王者の行方を見守っていきたい。

文=寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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