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好投手擁する菰野、津田学園の三重県勢が有力か。浜松商、県岐阜商の伝統校復活も期待

2019.05.22

 24日から、今年は静岡県管轄で開催される春季高校野球東海地区大会。東海4県から常連校、新鋭校、伝統校が入り乱れる顔ぶれとなって、興味深い戦いが繰り広げられそうだ。早速、初戦の組み合わせから展望していこう。

選抜で評価を上げた津田学園のエース・前佑囲斗に注目

好投手擁する菰野、津田学園の三重県勢が有力か。浜松商、県岐阜商の伝統校復活も期待 | 高校野球ドットコム
選抜で評価を上げた津田学園のエース・前佑囲斗君

 今大会、有力視されているのは三重県勢だ。
 三重県大会優勝の津田学園は、今春のセンバツ大会出場校。甲子園では龍谷大平安に延長11回の末に敗れたが、エース前佑囲斗君は龍谷大平安打線を4安打2失点に抑えた好投は評価された。182cm87kgという恵まれた体の右腕は、全国レベルで十分に通用することを示した。春季県大会では、夏を見据えて前君に続く投手の成長が期待されたが、小柄ながら141キロの降井隼斗君が十分に期待に応えた。

 ことに、東海地区大会進出を賭けた大事な準決勝で先発、津商相手に7回投げて1失点。さらに、リリーフした栄龍騰君もしっかりと抑え、前君を使わずに勝ったところはチームとしての底上げもなったことを確認したであろう。佐川竜朗監督としても、「ベスト4以上の戦いで前以外の投手で行けたのは成果」と認めている。打線は長打力のある前川夏輝君、石川史門君が軸となる。今大会の優勝候補筆頭に押していいだけの力がある。

 その初戦の相手は加藤学園だ。初出場の加藤学園だが、米山学監督と佐川監督は同年代で交流も深く、毎年交流戦も行っている仲でもある。「東海大会で戦おう」を合言葉として励んできたが、それが実現したことになる。加藤学園は静岡県2位だが、昨秋も4強入りしており、肥沼俊君と林口泰地君のバッテリーを中心としたチームの力は安定している。県大会では日替わりヒーローが生まれる流れで、準決勝では7安打で常葉大橘をコールドで下したように、ソツのない攻めも定評があり、津田学園にどのように食い下がっていくのか興味深い。

 三重県2位の菰野には、西勇輝(オリックス→阪神)二世とも言われている150キロ超のスピードを誇る岡林勇希君が注目されている。制球にバラつきがあるのが心配されるが、いささか荒れ気味なのも魅力の一つにもなっている。準決勝ではライバルいなべ総合学園とタイブレークを戦い、伏兵ともいえる8番吉田光輝君が満塁弾を叩き出すなどの意外性の爆発力もある。昨秋は、地元開催の東海大会で1位校として有力視されながらも初戦敗退。悔しい思いをしただけに、今大会での活躍は期待したい。

 対する相手は大垣日大だ。県大会は勝つべくして勝ってきたと言う実力校。事実上の決勝戦とも言われた中京学院大中京との準決勝では、序盤に3点リードされながらも8回、9回で追いつき逆転した。林拓馬君を軸とした打線はやはり勝負強い。岡林君との対決が実現すれば面白い。やや不安の残る投手陣ではあるが、打っても中軸を任される内藤圭史君が肩痛から徐々に復活の兆しを見せてきている。権田翼君、村田直俊君らも県大会を通じて粘りの投球を身に着けてきている。

[page_break:実績のある指揮官が率いる浜松商と県立岐阜商]

実績のある指揮官が率いる浜松商と県立岐阜商

好投手擁する菰野、津田学園の三重県勢が有力か。浜松商、県岐阜商の伝統校復活も期待 | 高校野球ドットコム
新しいユニホームで臨む県岐阜商(写真は野崎慎裕君)

 話題としては、浜松商と県岐阜商といった伝統校の復活もある。
 浜松商は2003(平成15)年以来の優勝となったが、鈴木祥充監督が就任して6年目、「これまで、なかなか越えられなかったベスト4の壁を突破できてよかった」と喜んだが、伝統ともいえる「逆転の浜商」の粘り強さは生きている。エース[player]湖東遼馬[/player]君と瀬戸口雄太君というタイプの異なる両投手をどう使いこなしていくのか。

 浜松商の初戦の相手は弥富時代から通じても春季東海大会は初出場となる愛知黎明だ。沖縄尚学長崎日大で実績を作った名将金城孝夫監督が今春に復帰就任して一気に実績を挙げた。「この春は、こちらに風が吹いた」と言っていたが、指導時間のほとんどをブルペンで費やしているという成果もあって大野浩史朗君はメンタル面で著しく成長した。東海大会という大きな舞台でどのような戦いができるか。夏という舞台を見据えても大事な戦いとなる。

 ベテラン監督の就任ということで言えば、秀岳館を3季連続で甲子園ベスト4に導いた鍛治舎巧監督が昨春から母校で采配をする県岐阜商も注目されている。しっかりと数字目標を立てていく考え方や追い込まれてからのノーステップスイングで粘って食いついていく打法など、心技ともに徐々に鍛治舎イズムが定着してきている。
 昨秋からのエースだった松井大輔君が試合で前十字靭帯切断してしまい投げられない状態になったのは痛いが、そのアクシデントを乗り越えて選手たちの意識も強くなってきている。1年生の台頭も著しく、投手では野崎慎裕君、打者では4番を任された廣部嵩典君が準決勝の岐阜第一戦では活躍した。また、初回から打席が回ってくるようにと春は3番だった佐々木泰君の打撃も期待されている。

 今春から、ユニフォームのカラーと帽子も一新。明るいブルーが基調となった新生県岐阜商の戦いは、いろいろな意味で注目だ。
 この県岐阜商と戦うのが、今春のセンバツ優勝校東邦を愛知県大会2回戦で下し、一躍大会の眼となった中部大一だ。その原動力は磯貝和賢君だが、最速はMAX143キロを記録しているストレートとタテのスライダーが武器だ。準決勝では中京大中京をタイブレークで下し、今春は東邦享栄中京大中京と愛知県を代表する名門校を総なめしての優勝となったことも大きな自信となっている。

 最終的には、三重県勢対決もあり得るが、名門復活の兆しを感じさせている浜松商も侮れない。初戦を突破したら、菰野大垣日大との勝者と当る組み合わせ。開催県の1位校としては、「ベスト4の壁」を突破して、何とか決勝までは残りたいという思いも強くあることだろう。

文=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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