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令和初の茨城県王者を目指すAシード4校を中心に注目校を掘り下げる!

2019.05.15

 4月27日から開幕した茨城県大会は藤代がサヨナラで水戸商を下して優勝を果たした。ここでは、決勝戦を振り返りAシード権を獲得したチームの特徴などを挙げて総括していく。

 前編:藤代が12年ぶり2度目の優勝!水戸商は個の力を結集して常総学院にサヨナラ勝ち!

決勝戦、公立校同士の対決は藤代に軍配!

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中山航(藤代)

<決勝>

 決勝は藤代水戸商という公立校同士のカードとなった。両チームとも疲れの残るエースの先発は避け、藤代は2番手格の右腕・一條遥翔が、水戸商は平山が任された。

 試合は取られたら取り返すシーソーゲームで、4対4の同点のまま9回裏の藤代の攻撃を迎えた。1点もやれない水戸商はこの回からエースの小林がマウンドへ上がった。二死三塁とし、最後は藤代5番途中出場・北澤太陽がセンター前タイムリーを放ってサヨナラで優勝を決めた。

 茨城1位の藤代は春季関東大会2回戦で桐光学園(神奈川2位)と東農大三(埼玉4位)の勝者と、2位の水戸商は1回戦で山村学園(埼玉3位)と対戦する。

 続いて夏のAシードを獲得した4チームと他の有力校について総括したい。

<投手陣盤石の藤代
 藤代は秋の準優勝に加えて春の優勝で夏の第1シードを獲得した。秋の関東大会で背番号1だった小島拓也を怪我で欠きながらの優勝は投手の層の厚さを感じさせた。

 エース右腕の中山航は最速144キロを計測したが、平均球速は130キロ後半だ。チェンジアップとスライダーを効果的に使って打ち損じさせる。2番手格の右腕・一條遥翔は冬を越えて順調に成長しており、めざましく球威が増した。

 昨夏の県南選抜大会では120キロ前後のボールだったが、今大会では常時130キロを超え最速は138キロを記録した。球威のある右腕・中山と一條の両者に完投能力があることが藤代投手陣の最大の特徴だ。ここに離脱している小島が加われば昨年同様に高い投手力がそろう。

 チームとしては堅守が最大の武器であり、よく鍛え上げられた内野の守備力は県内ナンバーワンといえる。打撃陣は秋から選手の入替えがほとんどなく、上位を任される青木倫太郎田島涼馬、中軸の藤井皓大有村夏輝はいずれも俊足。打席からは単打でしぶとくつなぐ意識が垣間見える。

 藤代は1年春からベンチに入ることは珍しいが、今大会背番号15を付けて1年生の古宮幹太がベンチ入りを果たし、準々決勝と準決勝で2度代打出場の機会を得た。いずれも結果は凡退したが、名門・取手シニアで4番を担った打者として今後も注目だ。

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水戸商の投打の要・小林嵩

<接戦の強さ際立つ水戸商
 準優勝の水戸商は夏の第2シードとなる。今大会は一度もコールドゲームがなく、序盤戦は4点以上の差を付けたものの、その後は2点差以内の緊迫した9イニングのフルゲームを戦い抜いた。速球が武器の小林嵩を基本的にストッパーに据え、シード校には頭から小林でいく形がうまくはまった。
・一回戦 5対0 科技学園日立(坂本9回完投)
・二回戦 5対1 石岡一(小林9回完投)
・三回戦 9対7 下館工(坂本-郡司-小林)
・準々決勝 7対5 常磐大高(平山-小林)
・準決勝 4x対3 常総学院(小林9回完投)
・決勝 3対4x 藤代(平山-坂本-小林)

 エースで4番の小林嵩がチームの大黒柱であり小林に回せばなんとかしてくれるという期待感がベンチを包んでいる。
 小林は170センチに満たない小柄でありながらも馬力のあるスイングで一発長打が打てる。縦系の変化球にも崩れることなくしぶとく拾う技術は秀逸だ。投げては回転数の多い140キロ近いストレートで空振りが取れる。スライダーのキレも抜群。

 1番の高橋優太は立ち居振る舞いが美しい大型ショートで下級生から実戦経験豊富。ヒット数はそこまで多くはないが常総学院戦では値千金のサヨナラタイムリーツーベースを放った。

 3番を打つ大津昌熙は秋には背番号1のエースだったが春は野手に専念した。インコースに特に勝負強く飛距離が魅力だ。秋は[stadium]笠間市民球場[/stadium]でライトに叩き込み、この春は[stadium]日立市民球場[/stadium]のライトスタンドに放り込んだ。投手陣は小林と他の投手では球威に差がある。他の投手でつないで中盤までを3失点以内で継投できれば勝ちパターンだ。

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一條力真

<春関東逃し背水の陣の常総学院>

 水戸商にサヨナラ負けを喫した常総学院は夏の第3シードとなる。野手陣は間違いなく県内随一のメンバーがそろっており、特に3番の菊田拡和土浦日大戦で2打席連続、4番の斉藤勇人土浦日大から1発、5番の鈴木琉晟は準々決勝と準決勝で2試合連続ホームランと中軸の長打力は図抜けている。

 どこからでも得点ができる怖さがあり連打で畳みかける力を持ち合わせているのは誰しも認めるところだ。投打がかみ合って優勝した秋の県大会では次の塁を狙う走塁の意識の高さが際だっており、二死二塁からでもしぶとく得点する怖さがあった。しかし、今大会は打線のつながりが見られず一発ホームランでの得点に頼らざるを得なかった。

 投手陣はセンターとしても2番打者としても存在感を示す左腕の中妻翔をエースに据えたが、持ち味のコーナーワークが決まらず甘く入ったボールを痛打される場面が見られた。

 また秋に右腕2枚看板として活躍した岡田幹太菊地竜雅(2年)はつくば秀英戦で1イニングずつを投げたのみに終わり、右アンダーハンドの池田と右の本格派で最速137キロの一條力真(2年)が2番手格として試合を作った。ほかにも初戦を完投した和田琉希哉など投手陣は豊富だ。

 水戸商戦では9回に一條が四球などで満塁のピンチを作り内野安打で同点とされたが続投。結果的には次打者にサヨナラ打を浴びたが、この窮地に交替させなかったことはベンチの一條への信頼の高さと、壁を乗り越えて成長して欲しいという一條への期待感がうかがえる。

 夏は岡田幹太菊地竜雅が本来の調子に戻れば140キロ超えの2枚看板として抜きん出た存在になるが、現有戦力ではある程度の失点を覚悟した戦いにならざるを得ない。

[page_break:夏のAシード校、その他有力校を総括!!]

夏のAシード校、その他有力校を総括!!

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3勝を挙げた背番号10・常世田康誠

<16年ぶり4強と躍進した鹿島学園

 シードの水城を撃破して16年ぶりに春の4強入りを果たした鹿島学園は第4シードとなる。勝ち上がりの鍵となったのが投手陣の踏ん張りだ。

 驚くほどの球威を持つ投手は不在だがランナーを背負いながらも下級生投手が粘り強く打ち取って支えた。背番号10の常世田康誠(2年)は3試合で先発を任され水城戦も含め3勝を上げた。

 2回戦以降、ストッパーとして大活躍したのが1年生左腕の坂上春喜だ。長身から投げ下ろすボールは130キロを超えており威力十分で将来が嘱望される。背番号1の左腕・井川康徳の登板はなかったが、水城戦でライトに先制のソロホームランを放って存在感を示した。

 打線は3番を打つ岡崎雄大がポイントゲッターであり左打ちの好打者。準々決勝の水戸葵陵戦では先制打を、水城戦では2安打を放った。

 また、試合を追うごとに調子を上げてきたのが昨秋は1番打者を務めた島田翔悟だ。序盤戦は下位打線に下がっていたが、センター方向に逆らわずに弾き返す技術をもち毎試合複数安打の活躍で1番に返り咲いた。ほかにチームの大黒柱であり4番候補である張為瀚が怪我から復帰すればさらに打線の厚みはさらに増す。

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救世主として期待される佐藤紅琉

<投手力に課題残す明秀学園日立>

 明秀学園日立は初戦の霞ヶ浦に勝利して下位シードに滑り込む形となったが3回戦で藤代に惜敗。秋からの課題であった投手陣の底上げが春の注目すべきポイントだったが、120キロ台のストレートと横滑りするスライダーで打ち取る右サイドの川端秀悟がエースとなった。

 背番号10は左腕の嘉本旬平だが、いずれも明秀学園日立で例年見られる球威でねじ伏せるタイプの投手ではない。光明が差し込んだのが1年生右腕・佐藤紅琉の活躍だ。佐藤は130キロ中盤の力のあるボールを持っておりスライダーのキレも抜群だ。怪我なく秋までじっくりと育って欲しいが、喫緊の課題解決のために救世主となる存在だ。

 打撃陣は昨春センバツでレギュラーメンバーだった北野凱士が2番に座って牽引する。4番の高橋隆慶はサードからキャッチャーにコンバートされた。霞ヶ浦戦では先制の3点ツーベースを放ち、藤代戦では貴重な1打点を挙げた。

 怪我で戦列を離れる垣入武尊(2年)に代わって1番を打つ辻は藤代・中山から2安打の活躍で強肩も魅力。霞ヶ浦戦では辻のホームへのストライク返球に[stadium]ノーブルスタジアム水戸[/stadium]場内に歓声が響いた。センターのポジション争いはますます熾烈を極める。

 ショートの木下大我(2年)の守備は水戸商高橋優太にも優るとも劣らない能力の高さと華麗さを持つ。打力が向上すれば明秀日立 増田陸に続くプロ注目野手となる可能性を秘めている。

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146キロをマークした鈴木寛人(霞ヶ浦)

<プロ注目投手がいる霞ヶ浦

 霞ヶ浦は初戦で明秀学園日立に敗退して夏のDシードになりそうだ。そうなると4回戦でAシードに激突することは避けられない。

 明秀学園日立戦は下級生時から主戦登板していた福浦太陽鈴木寛人ではなく、相手の虚を突いた隠し球として背番号11の左腕・山本雄大が先発だった。初見の投手であったがストレートは135キロほどでチェンジアップの落差が大きい。

 4番の高橋にタイムリーを浴びたものの球質は一級品である。投手王国・霞ヶ浦には3年生にまだこんなに良い投手が隠れていたのかという驚きを禁じ得なかった。夏に向けてさらに投手の引き出しが増えた印象である。

 エースの福浦太陽はボーク(二段モーション)を二度取られ投球リズムが完全に狂ってしまい、浮き球を痛打され2回で5失点。また球速は140キロに満たず、1年前に比べてボールに勢いが感じられなかった。プロ注目右腕の鈴木寛人は順調に球速を伸ばしており最速146キロを計測。140キロ台を連発したものの自らの牽制悪送球で1点を献上した。

 打線で核となる選手は1番の仕黒と4番の天野だ。二人とも小柄ながらパンチ力があり、先輩の小儀純也(日体大1年)を思い起こさせる。

 そのほかに、三連覇をかけた土浦日大やエース幸山を擁する竜ヶ崎一、投打の要・櫻井に1年生右腕・樫村を加えた水城、センバツで一気に注目度を増した石岡一など夏の戦いぶりが楽しみなチームが多数ある。次回のコラムは夏の大会直前に書きたい。その前にまずは関東大会だ。茨城県勢の健闘を祈る。

文=伊達 康

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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