藤代が12年ぶり2度目の優勝!水戸商は個の力を結集して常総学院にサヨナラ勝ち!
4月27日から開幕した茨城県大会は藤代がサヨナラで水戸商を下して優勝を果たした。まずは1回戦から決勝まで試合をピックアップして振り返ってみる。
2回戦屈指の好カード、霞ヶ浦vs明秀学園日立の一戦
長身右腕の黒田晃大(佐和)
<1回戦>
1回戦は4試合が行われた。古河三は打線がつながって佐和の2年生エース・黒田晃大を攻略。投げては右腕の金丸敬介が低めを丁寧に突く投球で9回1失点の好投を見せた。水戸商は背番号10の坂本大輔(2年)が科技学園日立を完封。打っても3安打と躍動した。水戸啓明は昨秋県大会で1勝を挙げている守谷に4対2で逃げ切り元プロ野球選手の紀藤真琴監督にとって県大会初勝利となった。
<2回戦>
2回戦からシード校が登場。第1シードの常総学院は古河三・金丸のコースに決まる遅球を打ちあぐねて5回まで1対0で折り返した。終わってみれば7回コールドで勝利したが、6安打に抑えられ強打がなりを潜めた。投げては秋の関東大会でサヨナラホームランを浴びた右腕の和田琉希哉が7回を完封する見事な投球を見せた。
21世紀枠でセンバツ出場を果たし盛岡大附との激闘を見せた石岡一は第4シードとして水戸商と対戦。エース岩本大地の凱旋登板に注目が集まったが5回5失点7四死球と大乱調。打線も水戸商エース小林嵩の前に4安打1得点と沈黙し水戸商に5対1で敗れた。
第2シードの藤代は水戸啓明と対戦。先発を任された背番号10の一條遥翔が7回2/3を1失点に抑え3対1で辛勝した。水戸啓明は長身右腕の生田目友貴が四球を連発したが、2番手の塚本智史(2年)がその後を抑えて試合を作った。3番手に投じた右腕の小島は小柄で分厚い体格から勢いのあるボールを放っており今後が楽しみな存在だ。
第3シードの水城は取手一に対して1年生右腕の樫村佳歩を先発させた。樫村は期待に見事に応える投球で6回を無四球2安打無失点。後を受けたエース櫻井隼人がパーフェクトに抑えて7対0(8回コールド)で取手一を退けた。
強打の下館工は好投手・濱崎鉄平(土浦三)から9安打4点を奪って6対4で退けた。観戦できなかったが「下館工の上位打線はよく振れている」という声を多方面から聞くことができた。
日立一はエースの二瓶真斗(2年)を温存したが、水戸工・中庭の前になかなか得点が奪えず、終盤に中継ぎ投手がつかまって逆転を許した。最後は1点差まで詰め寄ったが二瓶の出番なく初戦で姿を消した。
投手陣の救世主となるか佐藤紅琉(明秀学園日立)
2回戦最大の注目カードであった霞ヶ浦vs明秀学園日立は乱打戦となった。4回まで0対0で進んだ試合は5回表に動いた。明秀学園日立4番の高橋隆慶が二死満塁から走者一掃のツーベースで先制。1点を返された後、7回にはボークや牽制悪送球などで明秀学園日立が5点を追加してコールドが濃厚となった。しかし霞ヶ浦は諦めなかった。7回裏に2点を返してコールドを阻止すると、8回には4点を返して2点差に迫ったが最後は10対7で明秀学園日立が勝利した。
霞ヶ浦のプロ注目右腕・鈴木寛人は最速146キロをマークし、平均でも140キロを超えていたが、1イニングしか登板しなかった。福浦太陽は試合中に2段モーションを2度指摘されてから足を上げて静止できなくなり体の開きが早まった。他方、有望な1年生が多数起用された。霞ヶ浦は6番センターで起用された飯塚恒介が2安打を放ち存在感が際立った。明秀学園日立は6番サードで永井龍樹を起用したがエラーもあり、2打席で結果は残せなかった。また投手として右腕の須貝将希を3番手に、佐藤紅琉を4番手に登板させた。佐藤は130キロを超える威力のあるボールを投げており、投手が手薄な明秀学園日立にあって夏は主戦投手になり得る存在だ。
<3回戦>
3回戦では常総学院vs土浦日大の昨夏決勝以来の再戦となった。土浦日大は1回に二死から3番・丸山恭平、4番・石渡耀の連打で幸先よく先制。常総学院は序盤にチャンスで得点できず劣勢ムードが漂ったが、3回裏に菊田拡和の左中間2ランホームランで逆転すると、その後も菊田に1発(高校通算41本目)、斉藤勇人に1発が飛び出しホームラン攻勢で10対3の7回コールド勝ちを収めた。
藤代vs明秀学園日立は藤代エース右腕・中山航が明秀学園日立打線を7安打2失点に抑えて1点差で逃げ切った。中山はこの試合で最速144キロをマークした。明秀学園日立は5回途中から1年生の佐藤紅が登板し、被安打1自責点0に抑えた。
水城vs鹿島学園は7回表に鹿島学園6番の井川康徳のソロホームランで先制すると、8回途中からリリーフした1年生左腕の坂上春喜が無安打無失点で締めてシードの水城を撃破した。
水戸商vs下館工は序盤から点の取り合いになった。6回に1点差に迫られた水戸商はエース小林を投入して火消しに成功。さらに最終回に1点を追加して9対7で辛くも逃げ切った。
つくば秀英vs水戸工はつくば秀英のエース右腕・吉田青矢が9回を3安打1失点に抑えて3体1で水戸工を下した。水戸工の先発・青柳翔空は右サイドから最速120キロ台ながら球威があり、1回に2失点したもののその後は立ち直った。
[page_break:劇的な展開を披露し味わった水戸商]劇的な展開を披露し味わった水戸商
常総学院にサヨナラ勝ちを決めた水戸商
<準々決勝>
常総学院はつくば秀英に対して右アンダースローの池田隼彦を起用。公式戦初登板ながら6回失点1と見事に大役をこなした。打っては7番に下がった鈴木琉晟がレフトへソロホームランを放った。つくば秀英の先発・峰村貞は最速140キロを計測。5回を2失点に抑えたが打線が1安打しか打てずに常総学院投手陣に手も足も出なかった。常総学院で3番手に登板した菊地竜雅(2年)は最速145キロを計測したが、140キロのボールを打ち返したセカンドへの打球の速度が計測されたのではないか(球場のスピードガンの計測違い)との声もある。
水戸商は常磐大高に7対5で競り勝った。常磐大高は右腕の大和佑一郎が先発したが3回途中で6失点と打ち込まれた。後を任された鶴見凌也が4イニングを無失点で切り抜け、6回に所の3ランホームランで追い上げたが序盤のビハインドが最後まで響いた。
藤代は竜ヶ崎一に8対0の7回コールドで圧勝した。藤代は先発の一條遥翔がチェンジアップを効果的に使って7回をわずか1安打に抑える好投で完封。打線は竜ヶ崎一の好投手・幸山耀平から5回までに5点を奪って一方的な展開とすると、7回には3番・藤井皓大のレフトホームランが飛び出してコールド勝ちに成功した。
鹿島学園は3対1の接戦をものにして16年ぶりに春の4強に駒を進めた。鹿島学園先発の常世田康誠(2年)は8回途中まで水戸葵陵打線を4安打1失点に抑え、後を受けた1年生の坂上が無失点で切り抜けた。打っては3番・岡崎雄大のタイムリーなどで3点を奪った。水戸葵陵は小橋一輝、定塚涼の2枚看板が粘投したが、打線の中軸も担うこの二人が完全に抑え込まれて逆転には至らなかった。
三拍子揃った中妻翔(常総学院)
<準決勝>
春季関東大会の切符をかけた準決勝は常総学院vs水戸商と藤代vs鹿島学園のカードとなった。
常総学院はこの春背番号1を付けた左腕の中妻翔が先発したが、1回に水戸商4番・小林からタイムリーを浴びて早々に1点を失い1回もたずに降板を余儀なくされた。リードを許した常総学院は2回表に5番・鈴木がライトスタンドにソロホームランを放って試合を振り出しに戻した。その後常総学院は犠牲フライで得点を重ねて3対1で9回裏へ。水戸商は代打攻勢を仕掛け、ヒットと四死球で二死ながら満塁とした。ここで9番代打・宇野叶夢がファウルで粘った末にファーストゴロを放った。ファースト菊田の捕球とピッチャー一條力真のベースカバーが遅れて内野安打となり1点。さらに二塁ランナーの赤城も一気にホームに生還して同点とした。騒然とした雰囲気の中、常総学院は一條が続投した。続く1番・高橋優太は真ん中に甘く入ったボールを逃さず右中間に運んで4対3。水戸商の劇的な逆転サヨナラで幕を閉じた。
藤代はエース右腕の竹内航が7回まで鹿島学園打線を3安打1失点に抑えた。打っては13安打の猛攻で8点を奪い8対1の8回コールド勝ちで関東大会出場を決めた。鹿島学園はここまで勝ち上がりの原動力となった1年生左腕の坂上が4回途中から粘投したが藤代打線を封じることはできなかった。
前編はここまで。後編では決勝戦を振り返り、Aシード4校を中心に夏の茨城県大会について掘り下げます
文=伊達 康