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九州大会総括 全国クラスの投手陣、高校通算42本塁打のスラッガー…。今年の福岡大大濠はゲキアツ!

2019.05.09

 西日本短大附の優勝で終わった九州大会。その西日本短大附にライバルになりそうなチームがある。それが福岡大大濠だ。この春は福岡3位で出場したが、とても3位とは思えない層の厚さがあった。夏へ向けて非常に楽しみなチームだった。

来年まで福岡を沸かせる快速コンビ・山下 舜平大、深浦幹也

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大型右腕・山下 舜平大

 まず目についたのは投手陣の能力の高さだ。140キロ右腕が2人、140キロ間近の左腕が1人ととてつもないレベルの高さだ。

 背番号1をつけた山下 舜平大(2年)は186センチの長身から角度ある速球を武器にする大型右腕。福岡市立筑紫丘小の先輩である三浦銀二(現・法政大)を慕って福岡大大濠へ入学した2年生右腕は、常時140キロ前後・最速143キロを計測し、角度と威力を備えた直球は高卒プロ入りした濱地真澄の2年時と比較しても上回っている。

 チームの方針でカーブしか投げないが、縦に大きく落ちるカーブは空振りが奪える。投球フォームを見ても肩、ひじが柔らかく、無駄な力が入っていない縦回転の投球フォームは魅力たっぷり。八木監督は「1試合通して投球ができる濱地と違って、山下の場合、「目の前のことで精いっぱいですね」と語るように、投手として大事な内面を見る力が養えればと期待する。確かに山下は口数が少なく、正捕手の星子海勢に引っ張ってもらっている様子が見られる。

 現在の2年生投手で、長身の本格派右腕はなかなかいない。出力の高さ、奥行きという点では、全国トップクラスなので、その出力を徐々に高め、3年生にはドラフト上位クラスと騒がれるような逸材となってほしい。

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注目左腕・深浦幹也

 その山下とともに注目したいのが左腕の深浦幹也だ。右腕のグラブをくいっと上げて、振り下ろす動作は小島和哉(現・千葉ロッテ)と似ていて、ストレートの球速は手元のガンで常時135キロ前後、最速138キロを計測。またガンによっては140キロを超えた情報もある。いずれにせよ、この夏、秋には常時140キロを投げ込んでいてもおかしくない逸材だ。

 福岡フェニックス時代はU-15代表入り。昨年は1年生ながら公式戦登板。そして九州大会初戦では先発登板して、無失点の好投を見せた。八木監督は「1年生から経験がある投手で、控えている投手の中ではいつも通りの力を出せる投手として送り出しました」との言葉通り、活躍を見せた。

 リードする星子も「今までで一番良かったです。深浦は落ち着いているので、配球面のすり合わせをするぐらいです」と信頼も高い。また打者としても、15打数5安打、1本塁打5打点の活躍を見せた。寡黙な人柄の深浦だが、負けん気は強く、甲子園で活躍している2年生を見て悔しさを感じたという。投打ともに魅力たっぷりな選手だろう。

[page_break:U-15代表経験のある星野、星子を中心に逸材揃いの福岡大大濠]

U-15代表経験のある星野、星子を中心に逸材揃いの福岡大大濠

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星野 恒太朗

 そして星野 恒太朗も楽しみな右腕だ。元ダイエー、ソフトバンクでは投手として活躍した星野順治氏を父に持つ星野はリリーフとして待機。縦回転を意識した投球フォームから常時140キロ~143キロを叩き出す直球は威力があり、120キロ中盤のスライダーも切れがある。

 ただ時折、開きが早くなることで、しっかりと体を回転できず、押し出すような投げ方になってストレートの精度が悪くなることがある。いつでも自分の力を発揮できるメンタリティ、技術を突き詰めていければ、先発・中継ぎといろいろなポジションで活躍ができるだろう。

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3投手を引っ張り、4番としても4番を担う星子海勢

 その3人の投手陣をリードするのが正捕手の星子海勢だ。星子も中学時代、侍ジャパンU-15代表として世界の舞台を戦った捕手。持ち味は何といっても強打。尚志館戦から準々決勝・大分戦まで3試合連続本塁打を記録。振り幅が大きく、それでいて打ち損じをせず、ボールを捉える能力の高さは全国トップクラス。

 打撃フォームは高校の先輩・古賀悠斗(中央大)のようで、甘い球を逃さない鋭さは素晴らしいものがある。ただ星子は九州大会に入るまで打撃の調子が上がらなかった。

 県大会前の練習試合では愛媛小松戦で3打席連続本塁打を放つなど上々の仕上がりを見せたが、県大会では不調に。そこから八木監督のアドバイスで九州大会で大爆発した。打撃面がクローズアップされる星子だが、守備面も非凡なものがある。

 ゲームキャプテンを任される星子。投手の操縦については八木監督から一任されるほど信頼されており、山下のように大人しい性格の投手は自分から引っ張ったり、寡黙な深浦については配球面についてすり合わせをしたりと、対応が柔軟。スローイングタイムは2.00秒前後だが、コントロールが良いので刺すことができる。

 福岡大大濠の投手陣が能力を発揮できるのは星子のインサイドワーク、キャッチングがあるからだろう。目標とするのは2学年上の古賀。1年生の時に古賀から捕手のイロハを学んだ星子は、九州大会で自分の力を出し尽くした。

 3試合を終えて星子は「夏ではこういう連戦が多くなるので、集中力を欠いてしまうところが課題だと思います。そこをしっかりと修正していきたい」と反省点を淡々と振り返った。星子は性格も明るく、話を聞いているとコミュニケーション能力も高く、安心感がある。今年は全国クラスの正捕手が多いが、星子も全国クラスの正捕手といっていいだろう。

 またほかには11打数6安打3打点を記録した強打の一塁手・溝田翔、シュアな打撃と軽快なフットワークが光るショートストップ・宮本 光志朗(2年)、2番打者として11打数5安打を記録した右の強打者・山城 航太郎(2年)など打撃力が高い選手が多く、センバツをはじめ数々の地方大会で強豪校を見てきたが、それを比較しても個々の能力は全国トップクラスだと思う。

 その能力をこの夏、思う存分、発揮できるか。平成元年に夏の甲子園に出場した福岡大大濠は令和元年でも夏の甲子園出場を実現させて見せる。

文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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