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春季都大会もいよいよクライマックス!熱戦必至の準決勝、注目選手は?

2019.04.26

 新元号「令和」が発表された4月1日に開幕した春季都大会も、準決勝、決勝を残すのみとなった。勝てば関東大会出場が決まる準決勝は、大会のクライマックスでもある。今年は国士舘都立小山台関東一東海大菅生の東西対決となった。夏に向けて手の内をみせることを意識しないですむだけに、熱戦が期待できる準決勝を展望する。

巧者の国士舘か?勢いのある都立小山台か?

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左から黒川麟太郎(国士舘) 安居院勇源(都立小山台)

 秋季都大会で優勝した国士舘は、順当に準決勝に進出した。しかし試合後、永田昌弘監督の表情は暗く、試合内容への不満は隠せない。

 最大の問題は投手陣の不調だ。先発することが多いエースの白須仁久にしても、リリーフの山田裕也にしても、球威はあるものの、制球に難がある。そのため、4回戦の都立片倉戦にしても、準々決勝の帝京戦にしても、猛烈な追い上げを受けた。しかも秋は抑えの切り札として活躍した山崎晟弥はヒジの故障で投げられない状態だ。永田監督としては、投手陣のやり繰りに頭を痛めることになる。

 そのうえ、打線も大会序盤は湿りがちであった。ただここに来て好材料なのは、1番の黒川麟太朗に当たりが出てきたことだ。黒川が出塁することで、俊足で小技のできる松室直樹渡辺伸太郎、長打力のある黒澤孟朗冨田洋佑鎌田州真らにつながる打線に厚みが出てくる。

 さらに国士舘は秋季都大会の決勝戦で実力的には上である東海大菅生相手に、先行逃げ切りの形で勝って優勝するなど、ベテラン監督の下で、勝ち方を知っているのも強みだ。

 もっとも対戦する都立小山台の福嶋正信監督もベテランで、勝負どころを知っている。そのうえ、この春の都立小山台は、4回戦の早稲田実戦で、追いつ追われつのシーソーゲームを物にするなど、勢いに乗っている。

 4強進出の立役者は、エースの安居院勇源だ。変化球を駆使した投球で、それほど威圧感があるわけではないものの、打たれ強く、劣勢の時でも、冷静な投球ができることが強みである。さらに、昨夏の東東京大会準優勝を経験した捕手の吉田大晟とのバッテリーにも安定感がある。

 また昨夏準優勝を経験した1番・遊撃手の池本仁志、2番・二塁手の佐藤晃という俊足の二遊間コンビが、好守でチームを引っ張る。

 客観的な戦力では国士舘が上回っているだろう。しかし今の小山台には、少々の差は飲み込んでしまうほどの勢いがある。国士舘の投手陣が四死球などで自らピンチを招けば、小山台の勢いに火をつけることになる。ベンチを落ち着かせ、鼓舞する、ベテラン監督の采配も注目したい。

 なお国士舘が勝てば2年連続の決勝進出となる。一方小山台が勝てば初の決勝進出で、都立校としても、1986(昭和61)年の都立足立西以来となる。平成時代、都立城東都立雪谷が東東京大会で優勝しているが、春季都大会の決勝進出はない。平成最後の大会で、平成初の都立勢の決勝進出がなるか注目される。

[page_break:最強・東海大菅生に挑む、関東一の投手陣]

最強・東海大菅生に挑む、関東一の投手陣

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左から中村晃太朗(東海大菅生) 谷幸之助(関東一)

 第2試合は、東西東京の実力校同士の対戦となった。もっとも現状では、東海大菅生の力は圧倒的であり、関東一は挑戦者の立場だ。

 2回戦から登場の東海大菅生は、八王子明大中野八王子二松学舎大附日大三といった強豪に圧勝して勝ち上がってきた。とりわけ二松学舎大附日大三という昨夏の東西東京代表にコールド勝ちした破壊力は圧巻だった。

 球速の割に球威があり、変化球も多彩な中村晃太朗は、東京のエースといっていい存在だ。

 1番・小山翔暉から始まる打線は、破壊力と機動力を兼ね備える。特に4番の杉崎成は、準々決勝の日大三戦では本塁打2本の打点7と大暴れ。二松学舎大附戦でも本塁打を放っており、驚異の存在だ。

 日大三戦で本塁打を放った西垣大輝、三塁打2本の今江康介でもレギュラーが安泰でないほどチーム内の競争も激しい。

 また二塁手・石田隆成、遊撃手・成瀬脩人の二遊間は、守備範囲が広い。捕手の小山は、強肩であるだけでなく、瞬発力もあるので、バント処理なども素早い。

 関東一の米澤貴光監督も、実力は相手が上であることは認めている。けれども勝利を目指し、食い下がらないわけにはいかない。

 勝つためにカギとなるのが、序盤の攻撃と投手陣の出来である。

 ほぼスキのない東海大菅生であるが、エースの中村晃太朗は、序盤、立ち上がりが弱いという欠点は克服できていない。

 準々決勝の国学院久我山戦では、調子を落としていた渋谷嘉人が延長戦で決勝本塁打を放ち勢いに乗ったほか、もともと長打力のある平泉遼馬に2本の本塁打が出るなど、打線は上向きだ。俊足の2番・大久保翔太の出塁率が高まれば、攻撃に厚みが出てくる。

 こうした打線が、東海大菅生中村晃太朗にエンジンがかかる前の序盤にどこまで得点を奪うことができるかが、カギとなる。

 投手陣は147キロの速球を投げる谷幸之助と、球のキレと制球力の良さが持ち味の土屋大和の2本柱。強力打線相手に、完投は困難であることを考えると、谷―土屋のリレーになるのではないか。

 谷は好不調の波があるが、いい時の谷は、そうは打たれない。序盤にリードを奪って、谷―土屋の投手リレーで逃げ切るというのが関東一の勝ちパターンであるが、それには、関東一らしい野球の質の高さが求められる。

 平成から令和に時代が変わる10連休の初日。心に残る好ゲームを期待したい。

文=大島 裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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