キューバで見つけた逸材たち【後編】 ラテン男の雰囲気を持っていた日本大好きなアベレージヒッター
キューバの選手は海外球界からの評価も高い。前回はベラジュニアとブランデル・ゲバラの注目右腕2人を紹介してきた。今回はキューバ遠征を通じて目に止まった注目野手にフォーカスしていく。
キューバで見つけた逸材たち【前編】 偉大な父の血筋を引き継いだ長身速球派右腕・ノルヘ・ベラ
主将・ビクトル・ラグラダをはじめとする注目野手
左からカルロス・ベレグリン、ビクトル・ラグラダ、ギジェルモ・ガルシア、ナルデ・クルス
さて野手についても紹介したい。それにしてもキューバの選手は高校生らしくなかった。体格も、雰囲気も。体重100キロ越えが3名、体重90キロ越えが3名と腕を組んだ時の威圧感がとんでもなく怖かった。だが、実際はフレンドリーな選手が多く、合同レセプションでは音楽が流れれば踊りだすラテン男の雰囲気を持っていた。その中で最もラテンの雰囲気を持っていたのがキャプテンのビクトル・ラグラダ(Ladarada Rodriguez Victor Javier)だ。外見は野球でいうとフランシスコ・リンドーア、サッカーでいうとネイマールみたいな髪型をした選手である。
ビクトル・ラグラダ
さらにこのビクトル、合同レセプションには東京代表の選手たちと一緒に来ていた日本人女性をいきなりエスコートして、サルサを踊ったプレイボーイである。カメラを見つければ写真をせがんでくる目立ちたがり屋。ただユニフォームを着るとその雰囲気は一変。鋭い眼光で速球、変化球を右、左に打ち分け、安打を量産。塁間タイムは4.00秒前後の俊足ぶりで内野安打をたびたび記録。出塁すれと隙さえあれば盗塁を狙い、無駄のない走塁で次の塁を狙う積極性がある。
ビクトル・ラグラダ
ビクトルが出塁するとことごとく点につながる厄介な左の好打者である。筆者はビクトルに「君は本当にアグレッシブなプレーをするよね。なんで?」と聞いてみた。するとビクトルは「代表選手の競争は本当に厳しく、そこでプレーを続けるにはアグレッシブなプレーをしてアピールする必要があるからです」と真剣な眼差しで答えてくれた。外見は陽気なプレイボーイだが、内面は真面目で必死に生き残りをかけた青年だった。
そしてビクトルは将来、NPBでプレーしたい思いを語ってくれた。だからこそ「今のままでは難しいので、さらにレベルアップしたいと思います」とレベルアップを誓った。ちなみに彼の父も日本が好きでこの親善試合中、東京代表を応援したり、日本の言葉を教えてくれと東京代表と一緒に同行している保護者に聞いていた。忘れられない選手だ。
ビクトル以外の野手では4番打者でギジェルモ・ガルシア(Garcia Garcia Guillermo)は178センチ104キロとがっしり体型の左打者で、打球速度や打球の上り方が大人の左打者を見ているようだった。8番打者ながら右、左に長打を打ち分け、東京代表投手陣を苦しめたカルロス・ベレグリン(Pelegrin Martnez Malo Carlos Emilio)、三塁守備では何度もジャンピングスローを披露し、高いバットコントロールで安打を量産したナルデ・クルス(Cruz Calderin Narde Yadan)は189センチの大型三塁手だった。
キューバ遠征期間中、キューバ国内リーグで6年間プレーした25歳以上の選手は亡命なしでMLBでプレーができるようになった。NPBと同じようにサラリーの一部がキューバ政府に支払われる仕組みだ。現地でも大きな話題となっていた。今回、出場した代表選手はキューバを飛び出て、海外でプレーすることはあるのか。今後も注目していきたい。
(文=河嶋 宗一)