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出でよ!「4強+3」に続く勢力 秋季高知県大会総括

2018.12.09

 優勝・高知商(13年ぶり26度目の優勝)、準優勝・高知、3位・明徳義塾、4位・土佐の順位で終了した「第71回秋季四国地区高等学校野球大会高知県予選」。ベスト4には新人戦と同じ4チームが名を連ね、これに続く第2グループが準々決勝で土佐に1点差で敗れた高知工、高知にサヨナラ負けを喫した岡豊高知商を最後まで苦しめた高知中央。その他が第3グループという構図が大きく浮かび上がることになった。

 では、2019年に構図の変化はあるのか?そして夏の高知大会でどこが先頭に躍り出るのか?今回は「四国発」で報道した「高知県高校野球学校対抗戦」から見えた有力校の近未来像も交えつつ「高知県高校野球の2018年秋」を総括していく。

高知県高校野球「潮目の時期」へ

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真城 翔大(高知商)

 暖流の日本海流(黒潮)が流れ込み、豊かな海産物に恵まれる土地・高知県。ただ、高知県の高校野球は明らかに「潮目」の時期を迎えている。

 夏の高知大会で高知商明徳義塾の9連覇を阻み、この秋も準決勝で高知が県新人大会を制し復活を印象付けた明徳義塾に勝利。昨秋まで明徳義塾が独走状態にあった4強の勢力図は、もはや横一線に近くなっていることは間違いない。

 とはいえ、現状で最終的な決め手は4強ともにない。高知商は打線に強みを持つものの、真城 翔大(2年)・赤沢 将宗(1年)両右腕の球速アップと2人に続く投手陣の整備が急務。「秋はストライクが入らなかった」(梶原 大輔部長)から一転、高知県高校野球学校対抗戦では2試合で1完封・17回3分の2を投げ防御率0.00の右サイド・西村 和真(2年)や、秋は主に右翼手も新人戦では登板している左腕・山田 京介(2年)らの台頭が待たれる。

 森木 大智(高知中3年)の内部進学を控える高知は、「多くのポジションをできるようにしたい」と話す森木が、二刀流を投打両面で負担なくできる環境を整えることが必定だろう。夏までは課題が多かった打線には芯ができつつあるだけに、四国大会で最速135キロ前後を連発し将来性を感じさせた右腕・安岡 拳児(1年)や、メデシンボール投げや三段跳び、レッドコードトレーニングを見ても抜群のバランス能力が光る左腕・北山 康生(2年)の成長度合いが、大きなウエイトを占めそうだ。

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森木 大智(高知中)

 明徳義塾は「高知県高校野球学校対抗戦」で能力値の一端を示した選手たちと秋のレギュラー選手たちとのポジション争いが復活のかぎ。「コツコツと努力している」(馬淵 史郎監督)左腕・服部 遼馬(2年)に続く投手を作り、春以降は複数投手制を確立したいところである。

 そしてこの3チームからは少し離された形で追う土佐はエースで主軸の横田 啓悟(2年)や1年夏からのレギュラー・松谷 大輝(1年)など3校に負けない素材はいるだけに、「全力疾走」に代表される効率化・スピードアップの徹底で上昇速度を高めたい。

 高知商も秋季四国大会準決勝で高松商に4対10で敗れ、高知県勢のセンバツ出場は厳しい状況。となれば条件は同じ。4強に限らず夏までの中長期的な視点に立った時間設定、選手・チーム育成プログラムを完遂できたものが、最後に笑うことになるはずだ。

[page_break岡豊、高知中央、高知工に続く勢力は?]

岡豊、高知中央、高知工に続く勢力は?

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台湾からの留学生190センチ右腕・陽 東霖(高知中央1年)

 4強に迫る3校についても触れていこう。岡豊は秋季県大会を目前に監督が交代したものの、右腕・植田 ジゲン(2年)や俊足の堀内 勇成(2年・右翼手)などが安定した力を発揮した。目下「4強越え」に一番近い位置にいるのは間違いない。

 高知中央のポテンシャルは県下でも屈指。「高知県高校野球学校対抗戦」でベールを脱いだ台湾留学生選手たちの育成・起用法が、頂点獲得への第一優先事項となる。

 

 高知工は新人戦予備選敗退の悔しさを糧に、秋は大きな飛躍を遂げ21世紀枠県代表校にも選出された。積極的な走塁を見せる福島 朝人(2年・中堅手・右投左打)に代表される勢いに洞察力を加え、春以降も上位進出を果たしたい。

 彼らに続く勢力も虎視眈々と機会をうかがう。11月18日(日)には「土佐の小京都中村550年祭記念事業」招待試合で1977年センバツ決勝相手の箕島(和歌山)を招き、4対5と互角の戦いを演じた高知中村は、4番の福岡 佑度(左翼手・右投右打・180センチ95キロ)ら1年生に有望選手が多く、昨年21世紀枠センバツ出場時のチームを上回る成果が期待できるチーム。その高知中村を秋は2回戦で下し、夏の高知大会・新人大会に続き3大会連続で県8強以上に入った土佐塾も、侮れない実力を有することを証明した。

 さらに秋は岡豊と接戦を演じた高知追手前や、新人大会予備選では高知工を下した高知南、秋8強の高知東高知西なども冬の鍛錬次第では4強に入れる実力者である。

 組み合わせの妙や、幡多地区・安芸地区が特に深刻な部員減少の要素はあるとしても、「4強」の牙城を崩そうとする意気を示すことが、この夏に話題性を増した高知県高校野球に新たな息吹を与えるための重要なファクター。まずは完全フリー抽選で行われる2019年春の高知県大会で、新星が出でることを期待したい。

(文=寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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