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進化し続ける奥川恭伸 西純矢を攻略した広陵打線でさえも太刀打ちさせず!

2018.11.10

 11月10日、星稜は広島広陵との初戦を迎え、7回コールド勝ち。今大会注目右腕の奥川恭伸は7回3安打、無四球、11奪三振の完封勝利だった。北信越大会では10連続三振、最速150キロなど、33回を投げて防御率0.00、41奪三振、K/BBは41.00と圧巻の成績を残したが、北信越大会で見せたピッチングをそのまま神宮大会の舞台で発揮した。

新たな決め球・フォークで三振を量産

進化し続ける奥川恭伸 西純矢を攻略した広陵打線でさえも太刀打ちさせず! | 高校野球ドットコム
奥川恭伸(星稜)

 高校生にスケール、実戦力を兼ね備えた剛腕というのはなかなかいないのだが、奥川恭伸はまさにそんな投手だった。

 広島広陵打線相手に、別格の投球を見せた。ステップ幅が狭く、右スリークォーター。胸の張りも小さい。とても力感がないフォーム。しかし速球を見ると、力感があふれており、常時140キロ中盤のストレートは、回転数・威力ともに兼ね備えている。実はこれでまだ7割ほどの出来。まだまだ球威あるまっすぐを投げられるという。全力ではなくても、140キロ後半のストレートを投げることができたのは奥川の投球フォームが神宮のマウンドが合っていたこと。
「少し傾斜が高い感じなのですが、非常に投げやすかったです」

 自分の思い通りのフォームで投げられると、ストレートだけではなく、変化球も凄みが増す。125キロ前後のスライダーは縦に鋭く落ち、さらに横に曲がる125キロ前後のスライダー、135キロ前後の高速フォークと、3球種の切れは素晴らしく、広島広陵打線は全く対応ができなかった。ちなみに広島広陵は1週間前に創志学園西純矢を攻略してコールド勝ちを収めている。140キロ台のストレートにも対応し、変化球にも合わせた。その広島広陵打線が全く太刀打ちできないのだから、どれだけ奥川が傑出した存在なのかがうかがえるだろう。

 1つ1つの球種も素晴らしいが、奥川のすごさは状況判断能力の高さだ。いきなりアウトはすべて三振に奪ったが、これはすべて狙いにいったもの。三振を狙いにった理由は、前日の試合にあった。初日の2試合、先制したチームが5点を奪い、そのまま勝利している。広島広陵は隙がないチームと警戒していた奥川。立ち上がりが悪ければ、そういう流れになると危惧して、三振を狙う配球を心掛けたのであった。

 また、決め球となったフォークはこの神宮大会から使い始めたものだ。
 「選抜前で練習をしていて投げられるようになっていたんですけど、しばらく使っていませんでした。神宮大会前で、捕手の山瀬と相談して使うことが決まりました。フォークを投げる目的としては、今後のステップアップとして、まずは神宮大会でどこまで使えるのか。それを試す意味でも使いました」
 結果的にフォークが機能し、三振を量産した。

[page_break今まで対戦した投手の中では一番だった]

今まで対戦した投手の中では一番だった

進化し続ける奥川恭伸 西純矢を攻略した広陵打線でさえも太刀打ちさせず! | 高校野球ドットコム
笑顔を見せる奥川恭伸(星稜)

 リードする捕手の山瀬慎之助は、「スライダーが抜けていていつもほどではなかったですが、ストレートも力強かったですし、フォークもよかったのでストレートが生きたと思います」とフォークの精度の高さを評価した。

 恐ろしいのは、ストレートはまだトップギアを入れていないということだ。奥川は「ストレートはまだ7割ほどですし、もっと良くなると思っています」と語れば、山瀬は「まだまだ速度が出ますし、この調子で広島広陵に勝てたのは自信になりました。次はこれ以上のピッチングができればと期待しています」と話す。

 相手の広島広陵側。中国大会では創志学園西純矢と対決しており、西と対比しながら語ってくれた。まず中井監督。

 「真っすぐは西君を打つために練習をしたのでスピードは大丈夫でした。西君の方が速かったです。ただコントロールや緩急、精度は奥川君の方が上でした」と絶賛。特に驚いたのはフォークボールだ。
 「もうフォークボールがすごかったですね。今日は真っすぐでは三振していないのですが、フォークで三振していました。130キロくらいのフォークが切れる。そこが見切れればもう少し違ったかと思いますが、うちのチームではあんな投手はいなかったし、練習をしたことはない。キレ・高さ、変化球でストライクとれるし勝負ができる。スライダーもあってストライク先行で失投を仕留めるしかなかった」と脱帽の様子。

 また、第1打席でヒットを打った3番宗山 塁は「ストレートに狙いを絞ってヒットを打つことができましたが、とはいえ、投げる球種がすべて決め球に見えましたし、ストレートの切れ、制球力、変化球の切れは今まで対戦した投手の中では一番でした」

 これまで創志学園西純矢を含め強豪校との対戦が多い広島広陵の打者にこう言わせ、抑え続ける奥川のすごさ。

 7回11奪三振無四球の完封勝利についても手応えを感じている。「四球は被安打と同じだと考えていますので、四球を出さなかったことは自信になります」と笑顔を見せた奥川。

 神宮大会優勝を目指し、「与えられたマウンドで結果を出すだけ」と語る奥川。この神宮の舞台で、今度はどんな奥川ワールドを見せてくれるのか。楽しみが尽きない。

(文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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