日大三の初戦敗退から始まり国士舘の優勝で幕を閉じた秋季東京都大会を総括!
日大三敗れ、波乱の幕開け
日大三に勝利し喜びを爆発させる目白研心ナイン
大会の組み合わせを見れば、東海大菅生、二松学舎大附、帝京などは厳しいブロックに入ったのに対し、夏の甲子園で4強の日大三は、抽選運には比較的恵まれていると思われていた。
しかし1回戦の目白研心戦で、まさかの敗戦。日大三は平野将伍、小川敦星が打ち込まれ、後半に井上広輝を登板させたが、追いつけなかった。目白研心は、4番の山田瑞記が3ランを含む6打点の活躍で大金星を挙げた。
斎藤佑樹の活躍で優勝した2006年の早稲田実も、強力打線で優勝した2011年の日大三も、その年の秋は1次予選で敗れている。甲子園で上位に残った学校は、新チームの結成が遅れる。そのうえで秋季大会を戦う難しさを、再認識させられた。
日大三の敗戦は、強豪校には緊張感をもたらし、その他の学校には、希望を与える結果になった。
西東京大会の決勝戦で日大三と激闘を繰り広げた日大鶴ヶ丘は、1次予選で都立小平西に敗れ、東東京大会準優勝の都立小山台は、都大会1回戦で、昭和一学園に延長11回の激闘の末、敗れた。
日大鶴ヶ丘を破った都立小平西のエース・野崎師は、左腕独特のスライダーのキレがあり、今後が楽しみな投手だ。
関東一も成蹊にあわや初戦敗退という大苦戦を強いられた。9回裏に力尽きたが、成蹊の廣渡優斗のツーシームなどを駆使した好投は、見応えがあった。
東海大菅生と二松学舎大附の高レベルの戦い
左:中村晃太朗(東海大菅生) 右:海老原凪(二松学舎大附)
今大会は、3回戦が大きなヤマであった。中でも東海大菅生と二松学舎大附の一戦は、事実上の決勝戦ともいえる試合であった。強打の両チームだけに、打撃戦が予想されたが、東海大菅生・中村晃太朗、二松学舎大附・海老原凪という、ともに湘南ボーイズ出身の左腕の見応えのある投手戦になった。
試合は数少ないチャンスを物にした東海大菅生が勝利したが、秋季大会でこれだけ高いレベルの戦いは、久々にみた。
3回戦ではほかにも、早稲田実・帝京、国士舘・関東一という好カードがあった。
早稲田実は再三ピンチを招きながらも、エースの伊藤大征がここ一番で力を発揮。奪三振12という力投であった。
国士舘は立ち上がり、関東一の好投手・谷幸之助を一気の攻めで攻略し、強豪対決を制した。
3回戦に強豪対決が集中した分、準々決勝では一方的な試合もあった。その中で、岩倉の健闘は素晴しかった。
東海大菅生戦で好投した宮里優吾はもちろん、控えの左腕・坂本一樹も球にも力があり、2人ともU17東京代表として、年末のキューバ遠征に参加する。
都立城東は、都立校として唯一8強に残ったが、守りなどに課題が残った。
東亜学園は夏に向けてじっくりチームを作るので、秋季大会ではそれほど実績を残していないが、この秋は、エースの細野晴希をはじめとして夏の経験者が多く残り、7年ぶりに4強に残った。
東海大菅生[/team]のレベルの高さを感じることができる。
まず、小山翔暉、杉崎成、成瀬脩人と続くクリーンアップの破壊力は、東京ナンバーワンである。
1次予選の代表決定戦の日大豊山戦で、成瀬が放った超特大の3ランは、相手の戦意を喪失させるほどの破壊力があった。しかも4番の杉崎以外は積極的に走ってくるので、相手チームは気が抜けない。
また、センターラインの守りがしっかりしている。左腕のエース・中村晃太朗は、今大会の好投で自信を深めた。
どのポジションもこなす万能選手である小山は、捕手としてその力量を遺憾なく発揮している。強肩のうえに動作が素早く、相手チームの作戦の幅を狭くしている。
若林弘泰監督が「夏までの田中幹也と比べると……」と語る二遊間の守備にしても、二塁手の石田隆成、遊撃手の成瀬の守りは高いレベルにある。
決勝戦の1回表を除けば、攻守に隙のない戦いをしていた。ただその1回表に生じた隙で、優勝を逃した。
東海大菅生[/team]を破って優勝したのは、国士舘だった。石井崚太ら投手陣が充実した夏のメンバーが大幅に入れ替わり、新チーム結成当初、永田昌弘監督は、「国士舘史上最低のチーム」と酷評していた。
最初はギクシャクした時期もあったが、「このままではいけない」という危機意識から、チームがまとまった。
試合ごとにヒーローが変わり、1番の黒川麟太郎、3番・冨田洋佑、4番・黒澤孟朗から下位の鎌田州真に至るまで、どこからでも点を取れるのが強みだ。
投手も白須仁久、石橋大心、山崎晟弥が、継投になることを前提に、それぞれの役割を果たした。
秋季都大会は1次予選を含めると約2カ月の長丁場だ。開幕前に強かったチームより、大会を通じて強くなっていった方が勝ち進むことが多い。国士舘は間違いなく強くなったチームだ。国士舘のセンバツ出場は確定。東海大菅生も微妙な立場にあるが、全国レベルの力があるだけに、センバツでの活躍を是非観たい。
秋季大会は、チーム結成間もないということもあり、バント処理などにミスが目立った。勝ち進むためには、基本がしっかりしていることが重要だ。そのうえでプラスαの何があるかが、上位に進んでからの勝敗を分ける。
日大三は1回戦で敗れたため、春はノーシードからの戦いになる。日大鶴ヶ丘は1次予選から戦うことになる。U17東京代表に選ばれた山崎主真のいる都立日野も1次予選から出場だ。101回目の夏に向けての厳しい戦いは既に始まっている。
文=大島 裕史