2017~2018シーズン高校野球振り返り(徳島・高知編) 「復活への胎動」徳島県、「戦国時代、序章へ」高知県
第90回記念のセンバツ、第100回記念の選手権と「メモリアルな一年」だった2017~2018年シーズンの高校野球も福井国体のみ。ほとんどの学校は新たな100年への助走に入った。そこで今回は四国地区の4県について、2編に分けてその軌跡と次への提言を紹介したい。
香川県・愛媛県をお伝えした前編に続き後編は、夏の甲子園で鳴門が花咲徳栄(北埼玉)に食い下がった徳島県と、夏に明徳義塾の7季連続甲子園&高知大会9連覇を阻んだ高知商が聖地で2勝をあげた高知県を取り上げる。
徳島県:鳴門が示した「全国で勝つ」指針
鳴門は4季連続の徳島王者となれるか注目だ
生光学園の補欠校2位に留まったセンバツ以降、春の県大会では準優勝の小松島・ベスト4の城東。総体協賛ブロック大会では板野、富岡西が躍進を果たすなど波乱の要素を含んで突入した夏の徳島大会。が、終わってみれば優勝は秋・春に続き第1シードの鳴門が県大会3季完全制覇。
2回戦では徳島城南、準決勝では富岡西に驚異的な逆転劇を演じつつ、決勝戦ではエース左腕・西野 知輝(2年)が高校通算44発の湯浅 麗斗(3年・左翼手)、同じく31発の山口 留以(3年・捕手)を擁する生光学園を2失点に封じる状況対応力の高さが制し2年ぶり12回目の甲子園切符獲得の原動力となった。
甲子園でも昨夏甲子園優勝の花咲徳栄(北埼玉)に終盤失点を重ね5対8と県勢2年連続初戦敗退となったが、序盤の集中打と西野の丁寧な投球で7回までは4対2と主導権を握った鳴門。「全国で勝つ」指針を示した夏をスタメン9人中5人が2年生以下だった鳴門はもちろんのこと、他校がいかに分析し自分たちのスタイルに落とし込めるかが、2014年の池田以来遠ざかるセンバツ出場と、3年ぶりの甲子園勝利を勝ち取るポイントになるだろう。
高知県:明徳義塾「1強」からの脱却へ
明徳義塾の市川悠太を打ち込んだ高知商打線は全国に衝撃を与えた
衝撃的とも言えた高知大会決勝戦の「高知商10対2明徳義塾」。後に侍ジャパンU-18代表に選ばれた市川 悠太(3年)を完膚なきまでに打ち込んだ高知商打線の猛威は、聖地でも吹き荒れた。
山梨学院(山梨)との初戦は16安打14得点、慶應義塾(北神奈川)戦でも12安打12得点。3回戦には済美(愛媛)との四国対決に屈したものの、各打者のコンパクトに鋭く振り抜くスイングが全国でも十二分に通用することを証明したと言えよう。福井国体の出場も決まった彼らのパフォーマンスは大いに県民を沸かせてくれた。
こうして、明徳義塾1強時代から変化の胎動がみえた高知県だが、もちろん高知商以外の学校も黙ってはいないだろう。特に高知は来年春には最速150キロ右腕・森木 大智をはじめ春の文部科学大臣杯、夏の全国中学校軟式野球大会を制した高知中の選手たちが大挙して高知高校へ進学。一方、夏の全日本少年軟式野球大会で全国準優勝した明徳義塾中の選手たちも、「2人、明徳義塾に進学する」と馬淵 史郎監督が明言した右の関戸 康介、左の田村 俊介をはじめ、ほとんどが明徳義塾へそのまま進学する。
この3校の他にも私学では伝統の土佐、夏の高知大会で初のベスト8入りを果たした土佐塾。県立校では安定した実力を発揮する高知中村、岡豊など各々のスタイルを持ったチームが虎視眈々と頂点を狙っている。「明徳義塾を越える=全国で勝てる」が明確になった今、戦国時代の到来は高知県・四国の野球レベルを押し上げる上でも大いに歓迎すべき傾向だ。
(文=寺下 友徳)