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土浦日大が3強を下して優勝した茨城大会を総括!【茨城大会総括】

2018.08.31

 甲子園では土浦日大興南に初戦で敗れ悔しい思いをした茨城。茨城大会から1箇月が経った今日、そろそろ始まる秋季大会に切り替えるためにも、激戦が繰り広げられた茨城大会を振り返ってみたい。

土浦日大が3強を下して二年連続優勝。

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富田卓(土浦日大)

 優勝した土浦日大は、準々決勝から決勝までは秋季関東大会と春季関東大会に出場した県トップチームを相手にハードな戦いを勝ち抜いた。準々決勝は秋季県大会2回戦において0対16で大敗を喫した明秀学園日立だったが、細川拓哉対策が実って8対3と雪辱を果たした。

 準決勝は春季県大会準々決勝で5対3と敗れた霞ヶ浦に先制を許したがすぐに逆転。9回に3点差まで詰め寄られたが逃げ切って勝利を収めた。決勝は新チームでは初顔合わせとなった常総学院。1点を先制された後の5回表に相手のエラーに乗じて打者一巡の猛攻で畳みかけ、6対1で勝利した。最優秀選手を挙げるとすればエース富田卓だ。昨年は優勝こそしたものの、序盤にノックアウトされその様子をベンチから眺めていた富田。今年は準々決勝から3連投で3強打線に真っ向勝負の力投を見せ、優勝を自らの手でたぐり寄せた。

常総学院は決勝で持ち味発揮できず

 春季関東大会8強入りを果たした第1シードの常総学院。春の躍進の原動力となったのは、ホームラン攻勢で圧倒する爆発的な打力と、エース谷田部健太を中心とした安定感抜群の投手陣だ。しかし、この夏は春に見せた投打の勢いが陰りを見せた。特に春に量産したホームランは伸び悩んだ。春季県大会4本塁打の二瓶那弥は本塁打0本。チームとしては4回戦の下館工戦で菊田拡和手塚悠が放った2本に終わった。

 また、春は大車輪の活躍だった谷田部健太は関東大会以降に怪我の影響で調子を落としたまま夏本番を迎えた。代わって春にメンバー入りしていなかった塙雄裕菊地竜雅がベンチ入りし投手陣の窮地を救ったが、春に見せたような投打ががっちりかみ合った戦いを決勝で再現することができなかった。

2年生右腕充実。秋以降も投手王国になる霞ヶ浦

 第3シードの霞ヶ浦は右腕の福浦太陽鈴木寛人、左腕の中田勇輝など有望な2年生投手が多数在籍しているが、楽に勝ち上がれなかった。2回戦は鬼怒商に6対2。3回戦は多賀に2度追いつかれる苦しい展開も最後はサヨナラで5対4と辛勝。

 4回戦の石岡一戦は一つのヤマとなるかと思われたがここでようやく投打がかみ合って10対0の5回コールド勝利と予想を覆す大勝で突破した。準決勝の土浦日大戦は序盤に2点を先制したが、ホームラン攻勢で突き放されて8点を献上。最終回に3点を反撃する意地を見せたが及ばなかった。

[page_break昨夏初戦敗退の水戸商が4強入り]

昨夏初戦敗退の水戸商が4強入り

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水戸商ナイン

 第4シードの水戸商は4回戦まで3試合連続二桁得点で大勝した。準々決勝では難敵・藤代小林嵩の満塁ホームランなどもあり序盤に5点を奪った。中盤には1点差に詰め寄られるも、8回に突き放して9対5で勝利し6年ぶりの4強入りを果たした。
 準決勝の常総学院は4回に1対1に追いついたが、その後は先頭打者を出塁させるもののチャンスを作れずに追い上げきれず1対5で敗れた。主砲の小林俊輔は打率.636をマークし、準決勝でもチーム唯一のタイムリーヒットを放つ活躍を見せた。ホームランは2回戦の清真学園戦で1本飛び出し、細川拓也(横浜DeNA)に並ぶ高校通算ホームラン数63本でピリオドを打った。

あわやコールド負けの明秀学園日立。増田陸のホームランで一矢

 センバツで2勝を挙げ、春の県大会は準優勝の明秀学園日立。第2シードで迎えた夏は、13702が春季関東大会から公式戦12打席連続出塁の県記録を更新した。チームは優勝候補の一角として期待されたが、準々決勝では自慢の強打が沈黙。土浦日大に8回表を終わって0対8とリードを許しあわやコールド負けまで追い詰められた。その裏に増田の3ランホームランでコールドは回避したが、そのまま敗れ春夏連続甲子園出場を逃した。

下館工の躍進。ショート谷内真の堅守にスタンドが沸く

 4回戦で第1シードの常総学院を相手にノーシードの下館工が奮闘したが、2対3で惜しくも敗れた。常総学院打線は120キロ台のボールを打ちあぐねて決定打が出ず、2本のホームランで逆転してなんとか逃げ切った。

 ギリギリの攻防を支えたのは下館工のショート谷内真の好守備だ。6回から8回まで谷内が三遊間の難しい当たりや正面の強いゴロを全てアウトにした。美技を連発するショートに観客は惜しみない拍手を送りスタンドが大いに盛り上がった。

混迷を極めた日立一ゾーン。中央が抜け出す

 Bシードの日立一が初戦で土浦一に敗れ日立一ゾーンは混迷を極めた。シードを撃破して勢いに乗るかと思われた土浦一は次戦で境に大量点を奪われて敗退。は次戦で中央に逆転負けを喫するドミノ倒し状態となり、このゾーンからは中央が抜け出した。

 しかし、消耗戦で勝ち上がった中央の疲労はすでに限界に達していた。迎えた準々決勝の常総学院戦では四死球やエラー、さらに容赦のない盗塁になすすべがなく、初回に6点を献上。最後は1点を返す粘りを見せたが、1対11の5回コールドで敗退した。

[page_break下妻一がCシード水城を撃破]

下妻一がCシード水城を撃破

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水城の好投手征矢 隼輔

 3回戦でノーシードの下妻一がCシード水城を撃破した。下妻一はエース加藤孝太郎水城打線を1失点に抑える好投。打線は水城の好投手・征矢 隼輔 の140キロを超える速球を打ちあぐねたものの、少ないチャンスを確実にものにして3対1で制した。

 水城は秋と春にいずれも霞ヶ浦に惜敗。夏のリベンジはならなかった。

藤代が逆転勝利。無死満塁を2年生右腕が切り抜ける。

 水城を下した下妻一は4回戦で藤代と対戦した。下妻一の1点リードで迎えた8回表から藤代のエース・稲荷田朝陽が肘の怪我を押して今夏初登板。しかし、大乱調でストライクが入らず三者連続四球で無死満塁のピンチを迎える。

 ここでマウンドを譲り受けたのは2年生右腕の中山航だ。中山は強気のピッチングで内野ゴロと2三振に仕留めて絶体絶命のピンチを切り抜けた。藤代はその裏に逆転に成功して3対2で勝利。公式戦初登板の中山が大仕事をやってのけた。

取手一が40年ぶり8強入り

 昨秋に明秀学園日立打線を苦しめた右腕はこの夏にも大車輪の活躍を見せた。取手一のエース三浦優人が4回戦までの3試合19イニングで自責点0と抜群の安定感を誇り、チームを40年ぶりの8強入りに導いた。準々決勝では霞ヶ浦に5回6失点と攻略され、2年連続で霞ヶ浦に敗れた。

粘りの土浦湖北が二試合連続延長戦を制す

 土浦湖北が2試合連続で延長の激戦を制して勝ち上がった。2回戦の科技学園日立戦は8回に同点とされたが、10回裏二死無走者からサヨナラ勝ちを収めた。

 3回戦の水戸癸陵戦は土壇場の9回に1点を返して同点に追いつくと、延長12回に3点を勝ち越しに成功した。12回裏には水戸癸陵が1点を返すが辛うじて逃げ切って勝利を収めた。8回からマウンドに上がった天野宮の力投がチームに勝利を呼んだ。

[page_break3試合全て1点差。エース有馬(多賀)が魂の453球。]

3試合全て1点差。エース有馬(多賀)が魂の453球。

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多賀の選手たち

 多賀のエース有馬が1回戦から3戦連続で完投した。麻生とは延長12回、水戸工には9回を完投して勝利を挙げた。3回戦では気迫の投球で霞ヶ浦を追い詰めたが惜しくもサヨナラで敗れた。エース有馬の魂の453球は見る者の心を揺さぶった。

石岡一がまさかの5回コールド負け

 4回戦で霞ヶ浦石岡一という好カードが実現した。好投手を擁する両校の対戦だけに僅差の試合になると予想されたが、石岡一が大量失点を喫して0対10の5回コールドで敗れる波乱の結果となった。下級生時代からチームを牽引する河嶋駿太郎主将の下、今年こそと強い想いで臨んだが1991年以来の準決勝進出はならず。

 石岡一は川井監督が指揮を執るようになってから瞬く間に力を付け、秋と春の県大会では幾度も4強入りを果たしているが、夏の最高成績はいまだ8強に止まっている。夏に照準を合わせてベストのチーム状態に持っていき、結果を残すことがいかに難しいかを改めて思い知らされた。

[page_break私が選ぶ茨城大会ベストナイン]

私が選ぶ茨城大会ベストナイン

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増田陸(明秀学園日立)

投手:富田卓土浦日大
 今大会4勝。昨秋から12キロの増量に成功し球速を10キロ伸ばした。準々決勝から3強相手に3連勝で優勝投手となった。二年連続優勝の最大の功労者と言える。

捕手:小澤礼嗣土浦日大
 不振の4番・井上莞嗣の後を打って準決勝まで打率.526と打線を牽引し、決勝では4番に座った。守備では富田のスライダーを後ろに逸らすことがなく鉄壁を誇った。

一塁:斉藤勇人常総学院
 準決勝・水戸商戦で好投手・川澄裕音から先制打を含む3安打。2年生ながら5番に座り存在感を放った。守備ではファーストとライトをこなす器用さも。

二塁:小儀純也霞ヶ浦
 
3番に座って21打数10安打と大当たり。準決勝・土浦日大戦では9回にタイムリーを放って追い上げた。セカンドの名手で1年春から3年夏までセカンドでスタメンフル出場を成し遂げた。

三塁:谷内真下館工
 
4回戦・常総学院戦で先制の2点タイムリーを放った。その後4回から守備位置をショートに変えて好守を連発。正面の強い当たりや三遊間深めのゴロを逆シングルでさばいて一塁を間一髪アウトにする美技を披露すること8度。堅い守りで観客を魅了するとともに常総学院の追加点を許さなかった。

遊撃:13702(明秀学園日立)
 夏4試合で13打数8安打2HRの打率.615。さらに公式戦12打席連続出塁の県記録をマーク。土浦日大戦では8点ビハインドの場面で意地の3ランホームラン。明秀学園日立の顔としてのみならず茨城の高校野球を牽引し記憶に残る選手。

左翼:小林俊輔水戸商
 大会打率.636。プレッシャーがかかる中、清真学園戦でホームランを1本放って細川拓哉の県記録である高校通算63本に並んだ。準決勝ではチーム唯一の打点を挙げチームを鼓舞した。

中堅:鈴木健太土浦日大
 明秀学園日立・細川からチームを勢いづける3安打。準決勝・霞ヶ浦戦で2本のホームラン。決勝で大会打率.519でホームラン3本。負傷しながらも爆発力ある打撃を遺憾なく発揮しチームを牽引した。

右翼:水野勢十郎常総学院
 3回戦・総和工戦では4打点。準決勝まで打率5割を残しチームトップの打点9を記録した。1番打者として打線を牽引した。

文=伊達康

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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