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侍ジャパンU18代表 投手陣考察 「吉田輝星に負担をかけない構成を考える」

2018.08.26

侍ジャパンU18代表 投手陣考察 「吉田輝星に負担をかけない構成を考える」 | 高校野球ドットコム

戦況を左右する球数制限と大会ルール

 侍ジャパンU18代表18名が決定した。さて、今回のメンバーでどう勝つべきか。その構成をじっくりと考えていきたい。まず投手陣である。今回8名の投手が選ばれたが、内野手で選出された根尾昂も投手として起用するべきであり、9人で回す構成になるのではないだろうか。テーマは金足農吉田輝星に如何に負担をかけない構成をするべきか。
 今大会は球数制限がある。今大会に設けられているルールは以下の通りだ。

【球数】
1~49球:制限なし
50~104球:1日休み
105球(上限):4日休み

【連投】
2日連続登板
・球数が2日間で計50球を下回る:翌日も連投可能
・球数が2日間で計50球を超える:1日休み
3日連続登板:1日休み
4日連続登板:不可
これを見ると、投手陣の運用も戦略の1つになる。球数制限を踏まえながら投手陣の実力、起用法を考察したい。

【投手】8名
吉田 輝星金足農
板川佳矢(横浜)
奥川 恭伸(星稜)
柿木 蓮(大阪桐蔭)
渡邉勇太朗(浦和学院)
市川悠太(明徳義塾)
山田龍聖高岡商
野尻幸輝木更津総合

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柿木は台湾、韓国戦で先発を!吉田はとっておきの切り札に!

侍ジャパンU18代表 投手陣考察 「吉田輝星に負担をかけない構成を考える」 | 高校野球ドットコム

 甲子園準優勝投手の吉田 輝星金足農)。
 その能力の高さは、今年の高校生右腕でいえばトップクラス。健康な状態ならばエースとして託すべき投手だろう。しかし、秋田大会、甲子園を通じて、1517球。その消耗度は半端ではない。吉田を中心とする構成は彼の将来のためにはならない。2年前、アジア大会では今井達也作新学院)は疲労気味ながら、台湾戦で2試合に登板。調子が上がらないピッチングだった。結果、プロでも1年目は故障続きで出遅れたことを考えると、吉田はリリーフ限定の起用が望ましいといえる。やはり、首脳陣は吉田を完全別メニュー調整で無理させない方針となっている。となれば吉田はとっておきの切り札としてスタンバイしておきたい。

 板川佳矢(横浜)は今年の高校生左腕で最もピッチングができる左腕。ただ、今年のピッチングのピークは6月前半。7~8月は体の切れが鈍く、ストレートも135キロ前後。多彩な変化球で勝負していた。板川は自分のピッチングを復活させることができるか。板川が万全の状態に戻ると、先発・リリーフとして活躍してくれそう。

 奥川 恭伸(星稜)は最速150キロのストレートが注目されるが、試合展開によって130キロ後半・140キロ中盤・140キロ後半とストレートに強弱をつけるのがうまい投手。変化球の精度は非常に高く、高校2年生としてはかなり高度な投手だ。甲子園では不完全燃焼なところはあったが、万全の状態ならば、先発・リリーフとしても活躍してくれそうだ。

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 柿木 蓮はリリーフとしては150キロ、先発としては140キロ中盤の速球、スライダー、フォークを投げ分け、コーナーワークを存分に生かしたピッチングは高校生屈指。この甲子園では連投でも精度の高いピッチングができていたが、基本的に間隔をあけないと精度の高いピッチングができない投手。今年の代表でいえば、だれがエースにふさわしいかといえば柿木だ。柿木は台湾、韓国戦で先発させるべき投手といえるだろう。

 渡邉勇太朗(浦和学院)は149キロのストレート、高速スライダー、140キロを超えるツーシームと高速変化球を武器にする本格派右腕。実力は今年のエースクラス。順調に大会まで調整できれば、台湾、韓国戦で先発をさせるべき投手といえる。

 今年のカギを握るのは、市川悠太(明徳義塾)だといえる。高知大会決勝で10失点したことでマイナスな印象を受けがちだが、実力そのものは高校生トップクラス。右サイドから繰り出す直球は常時140キロ中盤の速球、スライダー、シンカーを両サイド、低めへ投げ分ける投球。特に右打者、左打者問わず投げ込む内角ストレートは、脅威となりそう。市川が何イニング投げられるかで変わってくるといえる。当然、韓国、台湾戦でも投入できる投手である。市川は2年前の堀瑞輝広島新庄)のような獅子奮迅の活躍を期待したい。

 山田龍聖高岡商)は140キロ前半の速球と縦に鋭く落ちるスライダーを武器にする速球派左腕。左打者が多い国にとっては厄介な投手となりそう。山田の起用法は基本的に先発。

 野尻幸輝木更津総合)は基本的に野手メインの投手だが、この夏は投打で大活躍。投手としては140キロ前後の速球、縦横のスライダーを両サイドへテンポよく投げ分ける投手である。味方の野手心理が分かっているのか、実にテンポが速い。だから野尻が投げると好守備が生まれやすい。韓国、台湾以外の試合で先発・リリーフとして投げられればいいだろう。基本的に野手で活躍をしたい選手だ。

 根尾昴大阪桐蔭)は、140キロ後半の速球、130キロ中盤の高速スライダー、140キロ前後のカットボールと1つ1つのボールの精度はドラフト指名クラス。根尾の使い方もポイントだといえる。

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ドットコムが考える投手起用法はこれだ!

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 さて、ここから起用法をまとめてみよう

先発
渡邉勇太朗(浦和学院)
奥川 恭伸(星稜)
柿木 蓮(大阪桐蔭)
山田龍聖高岡商
野尻幸輝木更津総合

先発・中継ぎ
板川佳矢(横浜)
市川悠太(明徳義塾)

中継ぎ
吉田 輝星金足農
根尾昂大阪桐蔭

 板川、市川は大会前のオープン戦の起用次第では先発起用はありそうだが、カギとなるのは、9月5日の韓国戦、9月7日、8日のスーパーラウンドだ。スーパーラウンドでは台湾との対戦が予想される。
 韓国戦で先発するべきなのは柿木、渡邉のどちらか。スーパーラウンドでは、奥川、韓国戦で登板しなかった柿木、渡邉のどちらかが登板することになるだろう。そして決勝戦まで勝ち進めば韓国戦で先発した投手に先発させたい。今年は球数制限があるので、連投ができるよう、早めのリリーフをすることも考えられる。
 終盤で吉田がトップギアのピッチングで相手に絶望感を与える。そんな起用ができれば理想的だ。大事なのは韓国、台湾の2チームにエースクラスを投入する運用ができるかだろう。また、実際のオープン戦の起用法を見ながら、改めて考察をしていきたい。

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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