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西では日大三、東では二松学舎大付が制した東西東京大会を総括!

2018.08.14

酷暑の大会で輝いた日大鶴ケ丘・勝又

西では日大三、東では二松学舎大付が制した東西東京大会を総括! | 高校野球ドットコム
勝又温史(日大鶴ヶ丘)

 第100回全国高校野球選手権大会の東西東京大会は、東東京大会(以下、東大会)が132チーム、西東京大会(以下、西大会)が130チームと、参加チーム数が全国1位と、2位という激戦区になった。とりわけ、東大会は、[stadium]大田スタジアム[/stadium]と[stadium]都営駒沢球場[/stadium]が使用できないため、かなりタイトなスケジュールになった。

 それでも、決勝戦は台風の影響で1日延びたほかは、局地的な雨で1試合が中止になっただけで、日程は順調に消化された。

 その代わり連日、異常な暑さの中で、大会が進行した。私自身、最寄り駅から球場まで歩く道が、今年ほどきつく感じた年はなかった。もちろん、選手、監督、審判、応援団、観客など、関わった全ての人にとって、今年の暑さは、相当つらかっただろう。

 試合中、足を吊る選手が続出した。挟殺プレーで、走者を追い詰めた野手が、足を吊ってその場に倒れるシーンなど、長年野球を観ているが、初めて観た。

 東大会の準々決勝、都立小山台安田学園の試合では、足を吊った走者に臨時代走が認められた。通常臨時代走は、死球の場合に認められるが、酷暑ゆえの特別処置であった。

 酷暑の東京で光を放ったのが、日大鶴ヶ丘勝又温史であった。勝又は西大会3回戦の都立永山戦では、熱中症の影響もあり打ち込まれたが、両チーム合わせて四死球41、試合時間4時間4分という記録的な試合になった5回戦の明大中野八王子戦では、投打に活躍し、勝利に貢献した。

 日大鶴ヶ丘は、この勝利で勢いに乗り、創価国士舘を相次いで下し、決勝戦に勝ち進んだ。決勝戦では日大三大塚晃平にサヨナラ本塁打を喫し敗れたが、閉会式後、熱中症で倒れ、救急搬送された。まさに酷暑に燃え尽きた敗戦であった。

[page_break成長曲線の二松学舎大附、底力の日大三]

成長曲線の二松学舎大附、底力の日大三

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平間陸斗(二松学舎大附)日置航(日大三)

 本命不在の戦国大会であった東大会であるが、8強に残ったチームには、春を含めて甲子園に経験のあるチームであった、

 結局二松学舎大附が昨年に続いて優勝した。このチーム、秋は都大会の1回戦で敗退している。平間陸斗をはじめ打線には定評があるものの、投手陣に問題があり、前評判は決して高くなかった。それでもこの夏、右腕の大庭颯仁がまさかの活躍をすれば、岸川海が成長を遂げた。1年生投手の香山亮太、1年生捕手の山田将義が活躍するあたりは、大江竜聖今村大輝の1年生バッテリーで夏の甲子園大会初出場を果たした4年前を彷彿させる。秋から春、春から夏にチームの力を確実に伸ばしたからこその2連覇であった。

 甲子園では大会第8日目に広陵と対戦する。厳しい戦いが予想されるが、ここまで伸ばしてきたチーム力を信じて戦ってほしい(5対2で勝利)。

 西大会は、秋、春の都大会を制し、大本命であった日大三が予想通り、優勝した。しかしエース格であった井上広輝は登板せず、中村奎太は本来の調子ではなかった。それでも、春季都大会の終盤から台頭してきた河村唯人が好投してチームを救い、準々決勝では小沢優翔が代打逆転満塁本塁打を放ち、決勝戦では4番の大塚晃平がサヨナラ本塁打を放つなど、一発長打の底力はさすがであった。苦戦続きではあったが、選手個々のレベルは高く、層も厚い。

甲子園では大会第6日目と、時間があるのは幸いだ。チーム力を立て直し、本番に臨んでほしい。

[page_breakベテラン監督による都立勢旋風]

ベテラン監督による都立勢旋風

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戸谷直大(都立小山台)

 東西東京大会で光ったのは、都立勢の活躍であった。中でも小山台は、雪谷以来15年ぶりの都立勢の甲子園まであと一歩に迫った。

 躍進の立役者はエースの戸谷直大。戸谷は春までは強豪相手に弱気の投球をして打ち込まれたが、精神的に見事に成長した。

 都立片倉も、準々決勝で日大三とあわやという試合をした。小沢に代打逆転満塁本塁打を打たれ、試合後「結局こうなってしまうんだよな」と宮本秀樹監督は悔しがったが、左の横手投げ、紙田龍也の好投が光った。

 小山台の福嶋正信監督も、都立片倉の宮本監督もベテラン監督で、長年この学校を率いている。選手は毎年変わるにしても、長い年月をかけて築いたチームの熟成を感じさせた。

 一方都立国分寺は、都立昭和を率いた森勇二監督が、就任2年目で西大会の8強に進み、国士舘を苦しめた。

 片倉以外に日大三を苦しめた都立杉並には、若手の監督として期待されている田北和暁がおり、都立豊多摩には都立城東などの監督を歴任した平岩了がいる。

 都立八王子北日大二を破ったのに続き、2年連続で桜美林を下して西大会でベスト16入りした。都立大島は東大会で3勝を挙げ、離島旋風を起こした。

 力はあるものの大崩れすることもあった都立桜修館持丸航暉は、東大会で東亜学園に敗れたが、奪三振10の好投をみせた。春季都大会の1次予選で奪三振22を記録して注目された西大会・都立東大和南吉岡桃汰は、腰を痛め登板できなかった。

[page_break埋もれていた人材の活躍]

埋もれていた人材の活躍

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清水雅孝(安田学園)

 私立勢にも印象に残るチームは多かった。特に安田学園のエース・清水雅孝は、1回戦からほぼ1人で投げ抜き、そのスタミナと精神力には胸を打たれた。

 関東一を被安打4、失点1に抑えた攻玉社16195の好投も驚きであった。チーム数の多い東京には、埋もれた人材が多くいることを実感させられた。

 2年前の西大会で優勝した八王子はノーシードであったが、3回戦で秋季都大会準優勝の佼成学園を破り、4回戦では優勝候補の早稲田実に勝つなど、チームを仕上げてきた。

 逆に早稲田実八王子戦で、野村大樹が2本の本塁打を放ったが及ばなかった。

 帝京は小山台戦で基本的なカバーリングのミスで傷口を広げた。勝ち負けはともかく、追い上げる気迫のようなものをほとんど感じなかったのが気にかかる。

 シード校の錦城学園上野学園など、本来の力を発揮できないまま敗れたチームも少なくない。夏に合わせて、チーム力を上げていく難しさを感じさせた。

 一方甲子園には距離があっても、それぞれの高さを目指して全力で戦う姿、秋、春とチームや選手個人が成長する姿をみることができるのも、夏の大会の醍醐味である。

 この夏単独チームで出場した学校の中には、秋からは連合チームになる学校も少なくないだろう。それでも目的意識を持って、歩みを続けてほしい。気候条件も厳しいものがあるが、それぞれ工夫して、新チームでの熱戦を期待したい。

文=大島裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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