前評判通りに佐久長聖が優勝!長野の夏を総括する!
佐久長聖と上田西の戦力を振り返る
佐久長聖と上田西
長野大会は、第1シード佐久長聖が決勝で第2シードの上田西に4対3で逆転勝ちし、2年ぶり8度目の優勝で幕を閉じた。大本命と目されていた佐久長聖が苦しみながらも覇権を奪回。上田西も取りこぼすことなく決勝までは進み、順当とも言える順位となった。
昨夏準優勝した強打のスタメン5人が残った佐久長聖は、新チーム発足時から頭一つ抜けた存在と目されてきた。その秋は北信越大会1回戦で敗退したものの、今春は県大会で優勝し第1シードを確保。北信越大会でも甲子園常連校を連破して準優勝した。
昨夏の準優勝メンバーで4番正捕手の鈴木大河が秋前に右肩を大けがし、代役の台頭がこの夏の鍵だった。そこに強肩の小山忍が見事な成長を見せ、正捕手を務め切った。
さらに野手陣も、ショートの上田勇斗ら秋とは異なるメンバーが頭角を現し、底上げに成功。エース林虹太は準々決勝から決勝まで一人で投げ切るたくましさと試合をつくる安定感を見せた。
大会後半は自慢の強力打線が大爆発する展開ではなかったが、一気に畳みかける集中力は相手投手も防ぎきれなかった。
藤原弘介監督が12年に就任して以来、7年連続で決勝に進み、優勝は4回目。安定感は突出している。
上田西は第2シードのまま2位に終わった。昨秋は県8強止まりだった。内野手から投手にコンバートした横尾虎之介が県内屈指のエースに成長。さらに半数以上のスタメンに1、2年生を起用しスピードと守備力を向上させ、春から一気に力を付けた。
ただ、2枚看板の一人、塚田純平が春の故障で投げ込みができなかった影響で長いイニングを放れず、横尾への負担が佐久長聖戦の終盤に失点へとつながってしまった。
ここ6年間で佐久長聖と上田西の決勝戦は3度目だが、上田西は初めて敗れた。
[page_break:大会を盛り上げた岡谷南、松本国際、日本ウェルネス筑北、小諸商]大会を盛り上げた岡谷南、松本国際、日本ウェルネス筑北、小諸商
左から、日本ウェルネス、小諸商、岡谷南、松本国際
ベスト4には唯一の公立、岡谷南と、創造学園からこの春校名変更した松本国際が入り、大会を盛り上げた。
岡谷南のベスト4は29年ぶり。公立校だけのブロックを勝ち抜いたとはいえ、準々決勝は2連覇を狙う松商学園に6対3と快勝した。2年生左腕飯田武尊の投げっぷりのいいピッチングと、好調の中軸打線が躍進の原動力となった。
プロ注目の松商学園・直江大輔はその試合で3番手で登板したが、チームが劣勢を覆せず、敗退。県ナンバーワン投手・直江と、佐久長聖強力打線との対戦は実現しなかった。
11年ぶり4強入りの松本国際は、エース後藤晟に安定感があった。攻撃は強力打線ではなかったが、得点圏での一本が効果的に出た。
ベスト8にはこのほか、ノーシードで創部3年目の長野日本ウェルネスが入ってきた。昨秋の県チャンピオンは、好調打線がシード東海大諏訪を10対0と打ち砕いたが、準々決勝ではエース髙山蓮が佐久長聖打線を抑えられなかった。
Bシードの小諸商はAシードの伊那弥生ケ丘に5対1と完勝して4年連続の8強。1年時から出場し続ける3年生野手が数人いたほか、好左腕引木翼と役者は揃っていたが、上田西に準々決勝で3対7で屈した。
第6シードの松本第一は順当に8強に残ったが、同地区の私立ライバル、松本国際に準々決勝で1対4で押し切られた。
[page_break:大会序盤で姿を消した注目校たち]大会序盤で姿を消した注目校たち
松商学園、松本深志、長野日大
早くに姿を消したシード校も少なくなかった。豪腕小林ツインズで注目の第3シード松本深志は、中野立志館の好投手神戸尚哉の前に1対3で初戦敗退。第5シードの諏訪清陵も、混戦ブロックだったが、初戦で上田に打ち合いの末、9対11で敗れた。
今大会、初めて設けられたBシード(春県16強)では、長野東、長野、更級農が初戦敗退。Bシードで躍進したのは、4強の松本国際、8強の小諸商だった。
昨秋県4強でノーシードの長野日大は3回戦敗退で巻き返せなかった。昨夏4強入りしたときのバッテリーが残った岩村田も2回戦で姿を消し、再現はならなかった。強豪長野商は2回戦で、昨年に続き上田西に敗れた。
一方で部員17人の小諸は、Bシードの長野東を破るなど3勝して37年ぶりに16強入りする快進撃を見せた。
好投手擁するシード校の松本深志と松商学園が思わぬ形で敗れる波乱があったり、岡谷南の大活躍があったりと第100回の記念大会は盛り上がった。開幕日のみ雨天で1日順延となったが、その後は猛暑が続き、特に投手陣の体力を奪っていった。
そうした中でも第1シードと第2シードによる決勝戦と、最後は順当なカードとなった。それだけ佐久長聖と上田西の力が抜けていた印象を残した。
昨夏は2年生中心の佐久長聖が決勝で涙を飲み、この夏、3年生になってリベンジを果たした。この夏、2年生中心だった上田西は来年夏、この悔しさをどう晴らすのか。戦いは始まっている。
(文=小池剛)