Column

逆襲の横浜、完ぺきな内容で春制覇!南北ともに混戦模様に。

2018.05.17

 春の神奈川は横浜が2年ぶりの優勝を決めた。そんな春季県大会を振り返っていきたい。

4強の収穫と課題

逆襲の横浜、完ぺきな内容で春制覇!南北ともに混戦模様に。 | 高校野球ドットコム
左から中野雅大(鎌倉学園)、斎藤 礼二(東海大相模)、山田陸人(桐光学園)、及川雅貴(横浜)

 圧巻だった。秋の鎌倉学園戦にコールド負けした悔しさを力に変えてきた横浜。地区予選から準決勝まですべてコールド勝ち。準決勝では秋に敗れた鎌倉学園に対し、5回コールド勝ちを収めリベンジを果たした。それぞれの打者がレベルアップを果たし、多くの試合で本塁打が飛び出した。

 本塁打を打ったのは長南有航内海貴斗角田 康生横浜斎藤大輝板川 佳矢万波中正山崎拳登となんと7名。全国トップクラスの長打力をいかんなく発揮した。それに加え、内外野ともに堅い守備を随所に発揮し、全試合無失策と攻守ともに完璧だった。

 投手陣ではエースの板川が盤石なピッチング。球速は130キロ中盤でも、切れのある変化球を低めに集めて得点を与えなかった。そして衝撃を与えたのが2年生左腕・及川 雅貴だ。4回戦横浜創学館戦で最速149キロを計測。現時点では現役高校生最速左腕へ成長した。及川は夏にはリリーフ起用が中心になるのか、先発の機会が増えるのか、注目される。

 そのほか、右サイド・黒須 大誠、1年生ながら145キロを投げる大型左腕・松本隆之介など素材が優れた投手が多い。

 一昨年、去年のチームと比較しても戦力は充実してきた。これから1年生が競争に加わり、どんなチームになるのか、注目される。

 準優勝の桐光学園は北神奈川のライバル・慶応義塾を準々決勝東海大相模準決勝で破ったことは大きな自信となった。今大会はリトル松井裕樹と期待される冨田 冬馬、本格派右腕・谷村然の2年生投手コンビが好投を見せた。

 2年生が多い今年の桐光学園、その若いチームの中で活躍を見せたのが主将の山田陸人法政二戦で特大本塁打、慶応義塾戦では3安打3打点、東海大相模戦で先制適時打と随所に勝負強さを発揮。間合いをうまく取れて、フォロースルーがしっかりと取れる技術を持つ長距離打者で、頼もしい存在だ。山田の活躍で二季連続の関東大会を決めた。

 春の結果に満足することなく、走攻守でワンランクレベルアップを果たし、6年ぶりの甲子園出場を狙いたい。

 東海大相模は、投手陣ではエースの斎藤 礼二以外の投手起用が目立ち、特に2年生の速球派右腕・遠藤 成を起用し、一人立ちさせようとする首脳陣の意向が見えた。打線は小松 勇輝山田拓也森下翔太を中心とした打線の破壊力は県下トップクラス。選抜では準決勝智辯和歌山戦で10点を取りながら逆転負けした経験を活かし、1点を取ることにさらに貪欲になっていた。

 また東海大相模は例年、多くのスーパールーキーが門をたたく。この夏まで激しい競争が行われそうで、夏には2、3年生が競争を勝ち抜くのか、それとも新1年生が出てくるのか、注目していきたい。

 二季連続のベスト4の鎌倉学園は準決勝以外は10得点以上と強力打線で勝ち上がった。3番・新倉将大、4番・松丸航太郎、5番・中野 雅大のクリーンナップを中心に、長打を打てる打者が多く、一気に畳みかける打撃を見せる。

 投手では小島和也、130キロ後半の速球を投げ込む大浦駿人と顔ぶれは悪くない。ただ準決勝横浜に5回コールド負けを喫したように、投打で圧倒された。横浜打線に通用する投手づくりが課題となりそうだが、打線、守備面でも横浜と対しても力を発揮できる打線となっていきたい。

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ベスト8の戦力状況

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横浜隼人に勝利した金沢

 準々決勝に残った学校を見ていくと、選抜出場の慶應義塾は、投手では生井 惇己、野手では宮尾将と、完成度の高い選手が多い。チームをさらに押し上げるには、新戦力の台頭が不可欠だろう。

 公立校で唯一ベスト8入りした市立金沢は、星槎国際湘南横浜隼人を破る大健闘を見せた。市立金沢は140キロを投げる投手に対しても、しっかりと打ち返せる技術がある。エース・田中翔は120キロ台ながら、丁寧に低めに集め、また内外野ともに堅い守備で、余計な失点を与えなかった。ただ打力が上がる夏では、市立金沢の投手陣の能力を考えると、ある程度の失点は覚悟し、打ち勝つ野球で勝ち上がっていきたい。

 ベスト8の横浜商大高は、走攻守三拍子そろった外野手・斎藤巧、4番・吉田賢吾を中心にコンタクト能力が高い打者が多く、打ち勝ってベスト8まで勝ち進んできた。一方で、投手陣は平均球速120キロ台の投手が多く、夏を考えると不安を感じる。今のままだと、夏は打ち勝つ野球か、序盤に試合の主導権を握るほどの大量点をとって逃げ切る野球で勝ち上がることになりそうだ。

 ベスト8の湘南学院はエース・関野柊人を中心に守り勝つ野球で勝ち上がった。投手力が高い日大藤沢から7得点を奪うなど打力も高い。コールド負けした横浜戦の経験を活かし、投打で実力を身に付けていきたい。

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ベスト16でも優勝候補として期待できる横浜隼人、ノーシードで怖いのが藤嶺藤沢

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横浜隼人 横瀬辰樹

 シード圏内のベスト16。ベスト16に終わったものの、夏の南神奈川の優勝候補として期待できるのが横浜隼人だ。投打の総合力を考えれば、4回戦で負けるチームではない。打線は強打の核弾頭・横瀬 辰樹、強打の二塁手・百合野稀平平塚江南戦で本塁打を放った河野真大など本塁打が打てる打者が多い。

 守備力も一定以上のものがあり、140キロ中盤の速球を投げ込む青山 美夏人小石川 遼音と今年の神奈川の右投手ではナンバーワンといえるほどの素質の高さがあり、選手のポテンシャルの高さは横浜東海大相模に負けていない。ただ打線がうまくつながらないところがあり、エース・青山はイニングごとに波があるように、ムラがあるのがこのチームの課題だ。そういうムラをなくしていきたい。

 日大藤沢新村太郎重富 陸の両左腕が活躍を見せ、ベスト16に進出。打線は3番・重村瑠惟、4番・山本心太郎を中心に振れる打者が多く、得点力は高い。ベスト16の市立橘も、長打力のある羽二生 和樹、エース・斎藤 由宣を中心に1年生から経験している選手が多く、投打ともに実力がある好チームだ。

 北神奈川の実力校・向上は攻撃力は高いが、投手陣は絶対的なエースがおらず、全体的な底上げが問われるだろう。

 ノーシードで最も怖いのは藤嶺藤沢。エース・矢澤宏太は最速148キロのストレートとキレのあるスライダーを武器に、2回戦の慶應藤沢戦では6回無安打、10奪三振の快投を見せたが、3回戦日大藤沢戦では11四死球と大きく荒れた。2失点にとどめ、12奪三振と及第点といえる内容を残したが、連戦が多くなる夏ではもっと安定した内容を求めていきたい。打線も矢澤、4番・宮原悠貴、5番須田 敬人を中心に長打力のある打者が多く、投打の総合力はベスト8のチームと比較しても戦力差はほとんどない。甲子園出場のカギは矢澤が握っているだろう。

 6月の抽選会では藤嶺藤沢がどこのブロックに入るのかが、大きな注目となりそうだ。

 他では武相カレオン・ジョニル・マラリは身体能力抜群の外野手、平塚江南の好投手・富田歩、NPBのスカウトも注目する海老名の速球派・落合真広など公立校にも好投手が多かった。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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