Column

打線は沈黙、エースは炎上…。惨敗の春から生まれ変わった二松学舎大附の夏

2017.08.25

打線は沈黙、エースは炎上…。惨敗の春から生まれ変わった二松学舎大附の夏 | 高校野球ドットコム
市川 睦(二松学舎大附)

 4月15日に行われた春季都大会の準々決勝で二松学舎大附は、日大三に1-16の5回コールドで大敗した。先発の市川 睦は3回途中で降板し、自責点6。打線は内野安打1本に抑えられるという完膚なきまでの完敗であった。このチームがこの夏、甲子園で勝利の校歌を歌うとは、想像できなかった。

 今の3年生は、1年上に大江 竜聖(巨人)、今村 大輝(明治大)、三口 英斗(上武大)という、1年生の夏に甲子園の土を踏んだ、実力も実績もある先輩たちがいた。3年生にしても、最初は外野手だった市川をはじめ、鳥羽 晃平永井 敦士遠藤 聖生ら、1年生の夏または秋から試合に出ている選手も多く、素材としては早くから期待されていた。しかし、気持ちを前面に押し出してくる先輩たちに比べ、気持ちの弱さがあった。選手個々の個性を見極めて指導する市原 勝人監督にしても、そこが苦労した部分であった。

 その典型が、エースの市川であった。市川は、昨年の春季都大会では、都立日野八王子との試合に好投し、可能性はみせた。けれども決勝戦の関東一戦では、逃げの投球で早々に降板した。市原監督は試合後、市川をチームのバスには乗せず、電車で帰らせた。今年の春季都大会日大三戦では、市川が降板した後、市原監督は試合中にもかかわらず市川に説教を続けた。

 日大三戦の大敗が、市川を変えた。この夏マウンドに立った市川は、今までは別人であった。体格もたくましくなり、球威が増した。何よりも、おどおどしたところがなくなり、気持ちの入ったエースらしい顔になっていた。それは甲子園に行っても変わらなかった。

 初戦となった2回戦の明桜戦、市川は打球を足で止め、三塁走者を本塁で刺したが、これは向かっていく姿勢があればこそのプレーであった。
たくましくなったのは、市川だけでない。二塁手として期待されていた鳥羽は、失策が続き、一時ポジションを失っていたが、俊足の中堅手として攻撃の核になった。

 東東京大会で調子が今一つであった4番の永井は、明桜戦では俊足を生かした内野安打を含め、5打数5安打の大当たりであった。ただし永井の持ち味は、俊足であるのと同時にパワーがあることである。3回戦の三本松戦も含め、長打が出なかったのは、彼としては物足りなかった。

 春から夏にかけて市川をはじめとしてチームは生まれ変わり、甲子園で3回戦に進出した。もっとも、打線があまりに強力であったがゆえに、東東京大会では投手の制球力が良く、守りがしっかりしたチームとの接戦を経験することがなかった。

 三本松戦では、制球のいい相手投手の球を早打ちし、併殺を重ねてチャンスを潰したのが惜しまれる。この経験を1、2年生が受け継ぎ、甲子園でさらに上を狙えるチームに成長していくことを期待したい。

(文・構成:大島 裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.18

【神奈川】保土ヶ谷球場では慶應義塾、横浜が登場!東海大相模は桐蔭学園と対戦!<春季県大会4回戦組み合わせ>

2024.04.19

【島根】石見智翠館、三刀屋がコールド発進<春季県大会>

2024.04.19

【山口】下関国際、高川学園、宇部鴻城がコールド発進<春季大会>

2024.04.19

【春季千葉大会展望】近年の千葉をリードする専大松戸、木更津総合が同ブロックに! 注目ブロック、キーマンを徹底紹介

2024.04.19

【福岡】福岡大大濠-福岡、西日本短大附-祐誠、東筑-折尾愛真など好カード<春季地区大会>

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.15

四国IL・愛媛の羽野紀希が157キロを記録! 昨年は指名漏れを味わった右腕が急成長!

2024.04.17

仙台育英に”強気の”完投勝利したサウスポーに強力ライバル現る! 「心の緩みがあった」秋の悔しさでチーム内競争激化!【野球部訪問・東陵編②】

2024.04.16

【春季埼玉県大会】2回に一挙8得点!川口が浦和麗明をコールドで退けて県大会へ!

2024.04.15

【春季和歌山大会】日高が桐蔭に7回コールド勝ち!敗れた桐蔭にも期待の2年生右腕が現る

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード