Column

清宮主将の改革が結実! 心が強くなった早稲田実業ナインは本物になった

2016.11.07

 11月3日、秋季東京都大会決勝早稲田実業が劇的なサヨナラ勝ちで神宮大会出場を決め、選抜へ向けて大きく前進した。スラッガー・清宮幸太郎関連記事が無安打でも勝利できるのは、チームとしての成長があったから。その成長の要因、また成長を見せた各選手たちを振り返っていきたい。

成長著しい早稲田実業ナインの中で、特に成長を見せた選手は?

橘内 俊治(早稲田実業)

 今年の2月、早稲田実業和泉 実監督に、どういう選手がレギュラーを勝ち取り、また公式戦で活躍するのかをテーマにお話を伺ったことがある。その際和泉監督は、「やっぱり心の強さのある選手がレギュラーを勝ち取っていくと思いますよ」と答えてくれた。その理由として、「良い時は良い、悪い時は悪いと一喜一憂する選手はトーナメントでは使いづらいです。なぜかといえば、東京ならば甲子園に行くまでに8回勝利、そして甲子園では6回勝たないといけません。そういう中で良い時は良くても悪い時は悪いなら、使いづらいと思うでしょう。だからどんなことでも一喜一憂せずに自分のやるべきことを淡々とやれる選手が強いですし、頼りにできるんです」 

 3日の決勝戦を見て、「心」が強くなったと感じる選手が多かったが、その中で顕著に成長を見せた選手を2人紹介したい。1人はセカンドの橘内 俊治だ。橘内の存在を知ったのは今春の練習試合のこと。全国クラスの強豪校相手に快打を連発。さらに軽快な二塁守備も光り、こんな良い選手がいるのかと驚きを隠せなかった。活躍を心待ちにしながら、春季東京都大会を見ていたが、都立昭和戦(試合レポート)では相手投手の緩急に惑わされ不発。良いものがありながらも、印象的な活躍が少なかった選手だった。

 しかし秋季大会に入り、快打を連発。日大一戦(試合レポート)から関東一戦(試合レポート)まで3試合連続で二塁打を記録。そして決勝戦では、日大三櫻井周斗から甘く入ったスライダーを捉え右中間を破る長打。一時は勝ち越しとなる2点適時二塁打を放ち、橘内は二塁ベース上で大きくガッツポーズを見せた。あの瞬間、橘内は1つの殻を破り、大きく成長したと実感させられた。

 そしてもう1人紹介したいのは赤嶺 大哉だ。沖縄出身の選手で、この夏啓明学園戦(試合レポート)に先発。夏のときは120キロ前後ぐらいで、スライダー、カーブを器用に投げ分ける投手だった。

 まだこのときは強豪校相手には厳しく、とても都大会決勝で投げる投手になるとは想像できなかった。決勝で登板した赤嶺は常時120キロ後半の速球を投げられるまでに成長。夏のときと比べると明らかにボールの勢いが変わっていた。そして、ピンチを切り抜けたときに大きくガッツポーズを見せてベンチに戻る姿は、この夏で見た赤嶺とはまるで別人だった。今年の早稲田実業ナインは1試合戦うごとに成長していった選手が多いのだ。

 赤嶺以外の投手陣の成長も著しい。エース・服部 雅生が不調の中、試合を作った最速137キロ右腕・中川 広渡。130キロ中盤の速球を投げ込む1年生左腕・石井 豪と1年生投手の力量が高かった。もともとの能力が高かったが、石井は赤嶺と同じく、入学時から明らかに速球の勢いが変わってきている。1年生投手陣の粘り強さが優勝の一因にもなった。

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[page_break:清宮幸太郎主将の改革、強烈なキャプテンシーがチームを大きく成長させた]

清宮幸太郎主将の改革、強烈なキャプテンシーがチームを大きく成長させた

優勝旗を持つ清宮 幸太郎(早稲田実業)

 そして野手陣の成長も著しく、打線に隙がなくなった。橘内と同じく2年生の春から練習試合で豪快な当たりを見せていた小西 優喜都大会の後半から打ち続けてきた選手だ。今年は清宮、野村 大樹が注目されるが、上位、下位まで切れ目のない打線と呼ばれるようになったのは2人の心の成長が大きいといえるだろう。

 決勝戦では日大三の櫻井の前に三振続きだったが、7回表の第4打席で安打を放ち、盗塁を決めた福本 翔も意地を見せた。そして抜群のポジショニング、素早い一歩目の動きで、次々と鋭い打球をアウトにしたセンターの横山 優斗。また遊撃手・野田 優人日大三の打者が放つ鋭い打球にひるまず、軽快に打球をさばいた華麗なグラブ捌き、一歩目の反応の良さ、スローイングの良さを披露。そして9回裏に、逆転サヨナラのきっかけとなる左前安打を放ち、9番打者ではあるが、厄介な印象を与えた。

 正捕手の雪山 幹太はパンチ力ある打撃、確実性のあるスローイング、投手の持ち味を引き出す好リードを見せるなど、それぞれの選手が個性を発揮した。

 これほど多くの選手が力を発揮したのは、清宮主将の手腕が大きい。新チーム発足後に掲げた「GO!GO!GO!」により、多くの選手のパワー、スピードがアップ。また日ごろの練習から必ず練習の目的を話して臨ませるなど、目的を明確にさせて取り組んだことが選手たちの実力をアップさせたといっていいだろう。そして一戦一戦勝ち上がることに選手たちの結束力が出てきた背景には、清宮主将がいつも試合後に声が枯れるほど大声を出して周りを鼓舞するなど、キャプテンシーを発揮したことも見逃せない。

 今年の早稲田実業は、チームとしての成長度は全国的に見ても一番ではないだろうか。秋の大会前までは、「清宮はすごいけれど、他の打者が…、投手陣が…」と言われるチームだった。ここまでの戦いを見れば、早稲田実業が総合力の高いチームであることが分かるだろう。

 明治神宮大会の初戦は静岡。同ブロックには夏優勝の作新学院や、明徳義塾といった強豪校が多い。簡単に勝てる相手ではない。これまでも一戦ごとに成長する姿を見せてきただけに、明治神宮大会では、都大会以上の戦いを見せてもおかしくない。

(文=河嶋 宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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