2015年U-18代表の現在地 高いレベルでもがく投手陣 高いレベルでも活躍する野手陣
昨年のU-18代表はキャラクター性という点でも非常に濃かった。常識を超えるプレーを連発するオコエ瑠偉、華やかなプレーで魅了する平沢大河、1年生とは思えない打撃、存在感があった清宮幸太郎など現場レベルで見てきて魅力的な選手が多かった。1年経った今、投手、野手の現在の状況について振り返ってみた。
プロ入りした投手は苦しんでいる様子 乗り越えることができるか?
小笠原 慎之介(2015年 U-18W杯より)
まず投手だが、残念ながら苦戦を強いられていると言えるだろう。
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・成田 翔(秋田商-千葉ロッテ)
・高橋 樹也(花巻東-広島)
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・森下 暢仁(大分商-明治大)※関連記事
・勝俣 翔貴(東海大菅生-国際武道大)※関連記事
この代は高橋純、小笠原の2人がトップとして期待された。小笠原はすでに一軍で10試合登板。0勝5敗と勝ち星を挙げておらず、プロの壁を痛感している。それでも40イニングを投げているので、チームの若きエースとして期待されていることが伺えるが、ここから勝ち星を積み上げできるかは今後の取り組みにかかっている。
高橋純はシーズン前半、ケガもあり、しっかりとリハビリ、トレーニングを経てから実戦登板。最速も154キロまで伸ばし、現在、ファームでは6試合を投げて2勝1敗、防御率2.70。しかし3軍に帯同して先発した徳島インディゴソックス戦(8月7日)では5回8失点でノックアウトされ、球質の軽さが課題となった。ソフトバンクは12球団一、戦力層が厚い。一軍登板は多少あったとしても、定着は来年以降になりそうだ。ここまで土台固めはしっかりとできているので、高橋純の本格的な活躍は来年以降だろう。
佐藤世はファームで4勝をあげており、先発投手としてしっかりと実力を発揮しているが、防御率が高く、まだまだ課題が多い。成田は4試合を投げて、防御率5.68、高橋樹も5試合で1勝1敗、防御率4.43とプロの壁を味わっており、まず二軍で活躍できるまでに1、2年かかるかもしれない。プロ志望届を出せば指名間違いなしの逸材だった森下は春のリーグ戦で3試合登板。しかし新人戦で負傷し、治療に専念している。この大会で最優秀防御率を獲得した上野は東都二部の駒大に進み、5月24日の東農大戦で1.1回を投げて自責点5と悔しい投球となった。
ここまで投手はかなり苦しんでいるというのが現状だといえよう。また勝俣は野手に転向。国際武道大にとっては全国の舞台に出ることがまず第一。ともに進んだ豊田寛とともに活躍を見せることを期待したい。
野手は平沢、オコエを筆頭に活躍中
郡司 裕也(2015年 U-18W杯より)
では捕手はどうだろうか。
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・堀内謙伍(静岡-東北楽天)
佐藤世の持ち味を引き出した郡司は六大学リーグ2試合に出場。高校時代から頭脳的なリードが光っていた選手で、あとは打撃を磨いてしっかりとアピールしていけば、正捕手として出場する機会も増えるかもしれない。また伊藤は、どれだけ攻守でアピールできるかがリーグ戦出場のカギになりそうだ。堀内はケガもあったが公式戦に復帰しており、来年へ向けてしっかりと実力を身に付けていきたい。
平沢 大河(2015年 U-18W杯より)
続いて内野手を見ていく。
・平沢大河(仙台育英-千葉ロッテ)※関連記事
・津田翔希(浦和学院-東洋大)※関連記事
・清宮幸太郎(早稲田実業)※関連記事
・宇草孔基(常総学院-法政大)
・杉崎成輝(東海大相模-東海大)※関連記事
・篠原涼(敦賀気比-筑波大)※関連記事
内野手では平沢がダントツ。ファームでは6本塁打を放ち、一軍では38打数7安打だが、8月に入って調子を上げてきており、やはり期待大の選手だ。そして大学に進んで活躍を見せているのは津田。1年生ながらリーグ戦に11試合に出場。打率.233でも試合に出場できているのは高い守備力があるからだろう。また本塁打も打っており、大学レベルに順応している。宇草、杉崎、篠原はこれからの活躍になるだろう。
そして当時1年生だった清宮は現在、高校通算53本塁打まで伸ばし、高校球界を代表するスラッガーへ成長。来年のU-18ワールドカップ出場が決まれば、間違いなく主力打者として期待される選手になるはずだ。
オコエ 瑠偉(2015年 U-18W杯より)
最後に外野手。
・豊田寛(東海大相模-国際武道大)
・オコエ瑠偉(関東一-東北楽天)※関連記事
・舩曳海(天理-法政大)※関連記事
オコエは春季キャンプから一軍に帯同。驚異的な吸収力を見せ、プロのレベルに順応し開幕一軍を獲得。51試合に出場し、1本塁打、6打点、打率.185と高卒1年目としてはかなり健闘している。そもそも高卒1年目はファームで育成する段階。現在、オコエは二軍落ちしているが、来年、一軍で活躍するためには何が必要なのか?というステップに達している選手であり、かなりレベルが高い選手だった。
舩曳は六大学のリーグ戦6試合に出場して、7打数3安打、打率.429と高打率を記録していることからかなり期待ができる選手だろう。また豊田は勝俣と共に国際武道大で主力野手としての期待がかかっている。強肩強打、俊足の外野手なので、今後注目を浴びそうだ。
まとめると、投手は高いプロの壁に苦しんでいる様子。その壁を乗り越えた先、何ができるのかに注目してみたい。逆に野手は大学、プロを問わず活躍を見せている選手が多い。昨年野手の人材のレベルの高さは、近年でもハイレベルだったといえる。ぜひこれからも実力を伸ばし、あの世代は凄かったと思わせる活躍を今後も見せてもらいたい。
(文・河嶋 宗一)