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早稲田実業、日大三が敗れ、八王子から新しい風が吹いた西東京大会 【西東京大会総括】

2016.08.01

 例年になく混戦で、どこが優勝するか分からないと言われた西東京大会であるが、決勝戦に残ったのは、第1シードの東海大菅生と第2シードの八王子で、日大三創価を含めた4強は、いずれもシード校。その他8強も国学院久我山、早稲田実早大学院聖パウロ学園と、強豪の私立であった。

 その一方で、8強に都立勢はゼロ。シード校の都立日野は、初戦国士舘に、同じくシード校の都立東大和は、2戦目早大学院に敗れた。ノーシードながら春季都大会早稲田実を破った都立昭和3回戦日大鶴ヶ丘に敗れるといったように、都立の強豪が混戦の煽りをもろに受けた形だ。

清宮3本塁打の活躍も投手力に泣く

清宮幸太郎(早稲田実業)

 今大会を最も盛り上げたのは、早稲田実清宮 幸太郎であることは間違いない。早稲田実はノーシードで、2回戦からの登場であったが、初戦啓明学園戦から大勢の観客が詰めかけた。5試合で12打数7安打3本塁打の成績は文句なし。

 ただ課題であった投手力問題が、準々決勝八王子戦での敗戦につながった。5回裏の5失点が、最後まで響いた。

 9回表、清宮は一発出れば同点の場面で、ライトに大飛球を上げた。もしや、と思わせたが、こすった打球は、最後は失速した。八王子の2年生投手・米原 大地の球威が勝った形だ。2人の秋以降の対決も楽しみにしたい。

故障に泣いたエースたち

 西東京では常に、早稲田実とともに、日大三が特別な存在である。その日大三も苦しい大会であった。初戦佼成学園戦では、9回裏に4点を入れて逆転サヨナラ勝ちする底力をみせたものの、守備の乱れが失点につながる、日大三らしくない戦いぶりであった。

 春以降、下手投げの洞口 敬太郎らが台頭し、投手陣を支えたが、昨春の都大会の優勝に貢献したエースの小谷 野楽夕が6月ごろに肘を痛め、投げられなかったのが、痛かった。

 西東京ナンバー1右腕の評価もあった早大学院柴田 迅も、春先から故障が多かった。準々決勝創価戦での延長戦の力投は印象に残ったが、力尽きた。

 早大学院に勝った創価も、本来であれば、1年生から主戦で、打撃や守備でも光るものがある谷井 怜央が大車輪の活躍をするところであったが、年の初めに膝を痛め、限定的にしか出場できなかった。

 昨夏、国士舘戦で好投した山口 翼世田谷学園)も、オフに肘の手術をし、春先よりは良くなったが、球威が昨夏には及ばなかった。聖パウロ学園戦では序盤好投したが、後半は握力も落ち、降板した。

 鍛えつつ、最後の夏にいかに照準を合わせるかは、ベテラン監督にも難しい。

[page_break:バランスの良さが際立った八王子]
バランスの良さが際立った八王子

早乙女大輝(八王子)

 東海大菅生伊藤 壮汰も、冬場に膝を痛め、春季都大会は背番号20であったが、夏は準決勝そして、延長11回の決勝戦を完投し、敗れはしたが、エースとしての責任は果たした。

 ただ、昨年のセンバツでは4番、三塁手で出場するなど、打撃もいい伊藤だが、登板しない時に野手としては原則的に出場しなかった。二刀流が流行の昨今だが、エースの負担を軽くすることに努めるチームも多かった。

 悲願の初優勝を果たした八王子は、昨年の秋に肘を痛めた米原が復調し、抑えとして活躍したのが大きかった。春先は同じ2年生の早乙女 大輝が成長し、投手力が安定した。

 これまで、いいところまで行きながら、最後の詰めが足りなかった八王子であるが、4番保條 友義を中心に、どこからでも得点ができるバランスの良さが際立っていた。甲子園でも、西東京大会のような、ノビノビとしたプレーをしてほしい。

 西東京のメイン球場である[stadium]ダイワハウススタジアム八王子[/stadium]のある八王子市から初の甲子園。同校出身の勝俣秀仁監督率いる聖パウロ学園の2年連続8強入りも含め、西東京に新たな風が吹こうとしている。

期待の1年生

 昨年の清宮に続き、今年も1年生の活躍が目立った。早稲田実の4番を担った野村 大樹は既に大物の風格。清宮とのKN砲は次のシーズンも、東京のみならず、日本の高校野球を盛り上げるだろう。

 東海大菅生の遊撃手・田中 幹也の守備も素晴らしかった。同校の戸田 懐生中尾 剛という投手にも、将来性を感じさせた。

 創価浪川 広之菊地 郁也門脇 誠藤井 隼も、1年生であることを忘れさせる活躍であった。中でも早大学院戦の延長10回に浪川が放った決勝弾は圧巻だった。

都立の活躍が目立たなかった今年の大会ではあるが、4回戦で専大付と延長15回引き分け再試合の死闘を演じた都立片倉、エースの櫻田 修平は身長163センチと小柄ながら、4回戦駒場学園と延長10回の熱戦を繰り広げた都立東村山西などは、高校生らしいいい好チームだった

 昨年の秋季都大会では8強に残ったのは佼成学園のみで、春は、東海大菅生八王子だけだった。組み合わせの影響もあり、力関係をそのまま反映したものではないが、秋と春の結果は、夏の戦い方にも影響してくる。新チームでは、秋季大会の段階から、西東京勢の健闘を期待したい。

(文・大島裕史

熱戦の西東京大会を振り返る!
第98回選手権西東京大会 試合レポート一覧

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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