【沖縄大会総括】 波乱といわれた沖縄の夏を制したのは嘉手納!
第98回全国高校野球選手権沖縄大会は嘉手納高校の初優勝で幕を閉じた。私学2強の興南と沖縄尚学共に3回戦で敗れるなど、全国では波乱と言われた沖縄の夏を総評してみる。
嘉手納の選手たち
沖縄県高校野球一年生中央大会が誕生したのは1976年。それから10年余りもの間、優勝校となったナインたちが3年生になる最後の夏で優勝することは叶わず、いつしか一年生中央大会の優勝校は最後の夏に勝てなくなると言われるようになっていく。その呪縛を解き放ったのが大野 倫氏たち。そう、1991年の全国高校野球選手権大会で準優勝した沖縄水産だった。あの負けず嫌いな栽監督をして「勝たなくても良いからなと言ってたのになんで勝っちゃったんだよ」と思わずもらしてしまうほどだったといわれる。
それから後は、1997年の全国高校野球選手権大会でベスト4に入った浦添商や、大嶺 祐太らを擁し2006年春夏連続甲子園出場を果たした八重山商工など一年生中央大会を制したチームが、最後も制することが見られるようになってきたのだった。
一年生中央大会を制した嘉手納は、秋の県大会では準決勝で敗退し九州大会の切符を逃す。春の県大会でも準々決勝で敗れてしまい夏のシード権をも逃してしまった。それでも彼らの持つ能力を見てきた関係者の評価は高かった。1、2回戦は中盤やや苦しんだものの勝利を収める。そして3回戦。誰もが予想した興南との再戦。「ここだけの話、ボクは嘉手納が勝つと思うよ」と言う関係者もいたほどだった。結果、興南・比屋根 雅也から9回に2点を奪い見事逆転勝ちを収める。しかし、まだまだ難関は続いた。
「ここを突破したら甲子園が見えてくる」(仲地玖礼)八重山商工との準々決勝。秋の県大会でも延長10回で辛勝した相手。さらに今回は闘将伊志嶺 吉盛監督が勇退するということで、向こうに追い風が吹いていると思う節も見えていた。さらに平良 海馬の急成長。仲地はいつも以上に丁寧に試合を組み立てていった。
8回に嘉手納が1点を奪うもその裏同点とされ延長へ。最後は相手のミスが生じて得た一死三塁からの内野安打タイムリーで勝利。興南、八重山商工と薄氷の上を歩くような試合をモノにした嘉手納。「中々言うことを聞かないやんちゃな子たちだった」(大蔵監督)ナインは、最後の夏に集中力を持続させ続けることが出来る精神力を備えていたことを証明した。
準決勝の那覇西戦では好投手赤嶺 由生郎から序盤で3点を奪い、仲地が完封。決勝戦でも美里工との打撃戦を制し見事初優勝を果たしたのだった。
⇒次のページ:大会を盛り上げた美里工、那覇西、小禄の頑張り
赤嶺 由生郎 (那覇西)
中部地区高校野球選手権大会を制した美里工は自慢の打線が本大会に入っても健在。未来沖縄との乱打戦や、宜野座との9回大逆転劇など野球は最後まで分からないということを体現してくれた。那覇西はエース赤嶺 由生郎を中心に守り抜く野球を確立。ワンチャンスをものにする勝負強さで初のベスト4進出を果たした。
小禄も美里工に勝るとも劣らない打線の力で打ち勝ってきた。浦添商との雨の死闘が背中を押し、秋の4強那覇商をコールドで下したことも印象的だった。
ほぼ互角の勝負と見られたカードは、八重山商工ー八重山(試合レポート)、小禄ー与勝、中部商ー宜野座(試合レポート)、美里工ー沖縄石川、未来沖縄ー西原戦。例え秋の優勝校八重山であっても、負けることが不思議な対戦相手ではなかったと言える。しかしそれでも、初戦の難しさというものを改めて実感させられた。八重山や春の優勝糸満、春の8強沖縄水産らを始め、辛勝した興南や豊見城、沖縄尚学などにとってもそれは見られた。
沖縄県高校野球全体のレベルがほぼ均一になった時代に突入したことを示すとともに。頑張れば何処でも頂点を狙えるということを、今回の嘉手納や那覇西、小禄といったところの活躍がさらに輪をかけていくだろう。実力伯仲の沖縄はこれからも続いていく。
ベスト8の八重山商工を筆頭に、16強の沖縄宮古、2対9とコールド負け寸前から那覇を追い詰めた(試合レポート)八重山農林、沖縄尚学を相手に4対0とリードした久米島など、今年も離島のハンデをとのともしない逞しさを見せてくれた。また、昭和薬大附がベスト16入りしたことも周囲を驚かせた。大学の医学部へ進む子たちが見せた真の文武両道の道標は尊いものであろう。
その他少ない部員で健闘した名護商工や北部農林、さらに部員一人しかいなかった辺土名が4人の3年生と6人の1年生が入ってくれて出場したことなど、年々部員か少なくなっていく北部勢の健闘は明るいニュースでもあった。
(文・當山 雅通)
熱戦の沖縄大会を振り返る!
・第98回選手権沖縄大会 試合レポート一覧