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手負いの高松商、春夏連続甲子園へ黄色信号 県内高校野球ブームの中、大混戦の夏来る!【香川抽選会後 展望・前編】

2016.07.08

「第4シードとはいえ、センバツ準優勝高松商が圧倒的有利。春夏連続で20年ぶりの夏甲子園出場濃厚」。こんな1か月前の予想はいまや、雲散霧消となった。史上初の[stadium]四国コカ・コーラボトリングスタジアム丸亀[/stadium]との2会場開催。シード校に配慮させた日程構成。第3・第4シードの固定化。さらに7月1日(金)開催の組み合わせ抽選会場がサンポート高松に変更となるなど、近年にない改革を断行した夏。そこには風雲急を告げる風が吹いている。

 かくして近年にない県内高校野球ブームの中、7月9日(土)にいよいよ高松市・[stadium]レクザムスタジアム[/stadium]で開幕を迎える「第98回全国高等学校野球選手権香川大会」。その直前展望を、ブロック別に追っていきたい。

■組み合わせ表は以下から

【第98回香川大会組み合わせ表】

Aブロック:第1シード・大手前高松ゾーン

門内 快航(大手前高松)

 春の県大会では悲願の初タイトルを獲得し、順位決定戦では小豆島にも勝利し第1シードを獲得した大手前高松。2年前、最速139キロの門内 快航(3年・右投右打・171センチ72キロ・高松市立桜町中出身)、183センチ78キロの長身から角度のあるボールを投げる宇良 康太郎(2年・右投右打・高松市立古高松中出身)の2本柱と攻守の柱・木村 翔(3年・捕手・右投左打・172センチ72キロ・高松市立太田中出身)が組むバッテリーを軸に、坂出商の前に決勝で逃した「甲子園初出場」の大魚をつかみにいく。

 打線では橘 大輔(3年・中堅手・右投右打・167センチ66キロ・三木町立三木中出身)、寿賀 蒼音(2年・左翼手・左投左打・173センチ62キロ・高松市立勝賀中出身)、松岡 侑汰(3年主将・遊撃手・右投左打・164センチ63キロ・高松市立玉藻中出身)の「9・1・2番」がキーマンとなる。ここに「状態が上がってきた」(山下 裕監督)4番・成木 康隆(3年・一塁手・176センチ79キロ・右投右打・高松市立紫雲中出身)の長打が加われば一気に得点力も上がってくるはずだ。

 ただ、大手前高松の初戦は一筋縄ではいきそうはない。相手は春準々決勝0対2で敗れたリベンジに燃える昨年のチャンピオン・藤井学園寒川だからだ。

 春の時点ではけがでスコアラーだったエース・山内 健汰(3年・179センチ76キロ・右投右打・神戸須磨クラブ<兵庫・ヤングリーグ>出身)や、昨夏の甲子園経験者・黒田 真世(3年・中堅手・右投右打・181センチ75キロ・神戸須磨クラブ<兵庫・ヤングリーグ>出身)も戦列復帰し、万全の姿で臨めることも彼らのプラス材料になるはず。ここで第1シードを破って勢いを得られれば、2年連続3回目の甲子園出場への道は一気に開けてくるだろう。

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台風の目になるか?観音寺一の戦いに注目!

観音寺中央に圧勝し観音寺市内大会を制した観音寺一

 このブロックで台風の目的存在となりそうなのが観音寺第一であろう。この4月からは2013年に琴平を春季四国大会に導いた青野 靖監督が部長に就任。6月11日の観音寺市内定期戦では7番・藤田 央充(2年・捕手・右投右打・170センチ69キロ・三豊市立三豊中出身)、8番・松山 雄大(3年・二塁手・右投右打・166センチ60キロ・観音寺市立観音寺中出身)が連続アーチを放つなど打棒が振るい三豊工に8対1・観音寺中央に10対2で連勝。土井 由喜監督との「超熱血」タッグは早くも闘魂をチームに注入している。

 また、2013年夏に丸亀で甲子園を経験した山本 雄一郎監督が4月から就任した琴平やユニフォームを一新して戦う高松第一。1番に俊足捕手の法兼 圭佑(2年・175センチ65キロ・右投右打・善通寺市立西中出身)を据える坂出。さらに1985年夏には銚子商(千葉)部長として名将・斉藤 一之監督から薫陶を受けた多木 教雄監督の下、毎年好チームを作ってくる高松南なども上位進出への力を持つ。

 そして、この学校を忘れてはいけない。統合相手の小豆島三豊工と共に学校最後の夏を迎える土庄だ。昭和40(1965)年夏にはのちに阪神タイガースドラフト1位指名を受ける石床 幹雄氏(故人)をエースに愛媛県代表との雌雄を決する北四国大会に進出。同大会では準決勝で敗れ甲子園出場はならなかったものの、この出来事が51年後、小豆島の快挙への先鞭をつけたことは間違いない。

 初戦の相手は難敵・高松桜井。だが、ここで怯んでいる暇はない。大西 翔吾(3年・投手・右投右打・182センチ82キロ・土庄町立土庄中出身)、三木 良太郎(3年主将・捕手・167センチ65キロ・小豆島町立池田中出身)を柱に3年生7人(うちマネジャー2人)、2年生4人(うちマネジャー1人)、1年生15人(うちマネジャー3人)の部員たちは万感の思いを込めて「ばら色匂ふ 朝の陽を」で始まる校歌を歌いにいく。

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Bブロック:第4シード・高松商ゾーン

夏は高松商のエースとしてマウンドに上がる大熊 達也(3年)

 7月3日(日)、大会前最後となる練習試合ダブルヘッダーを戦うため鳴門(徳島)に乗り込んだ高松商。2対3、8対8と1分1敗の結果以上に、その陣容は夏への不安を抱かせるものとなった。

 センバツ準優勝の立役者、エースの浦 大輝(3年・右投右打・180センチ80キロ・香川県立高松北中出身)はこの日の登板を回避。本来3番遊撃手の米麦 圭造(3年・178センチ76キロ・右投右打・東かがわ市立白鳥中出身)も状態は万全とは言えず。香川大会中に完調へ戻ることは難しい情勢に「登録を変更して投手を加えると思う」と長尾 健司監督も苦しい台所事情を認めざるをえない。

 ただ、その先の光もさしつつある。センバツでは外野手専任だった大熊 達也(3年・右投右打・174センチ74キロ・高松市立太田中出身)は、130キロ中盤のストレートを安定して低めに投げ、さらに強豪との練習試合を通じ完全にエースとして独り立ち。中軸としてもアーチを連発する頼もしさに「夏は大熊で行きます」と指揮官も軸を明言している。

 また、米麦圭の不在時に2番・遊撃手で起用された実弟・米麦 波留(1年・167センチ64キロ・右投左打・香川県立高松北中出身)も卓越したバットコントロールで快打を連発。守備時のステップ、送球も1年生とは思えない落ち着きがある。

 1番の安西 翼(3年・中堅手・170センチ63キロ・右投左打・高松ボーイズ出身)にはじまり、中軸を担う美濃 晃成(3年・二塁手・171センチ68キロ・右投左打・高松市立古高松中出身)、4番の植田 響介(3年・捕手・181センチ85キロ・右投右打・東かがわ市立白鳥中出身)、6番・植田 理久都(2年・一塁手・178センチ81キロ・右投右打・東かがわリトルシニア出身)、さらに7番前後を打つ高松商竹内 啓人(3年・左翼手・左投左打)に至るまでさく越えを放てる強打をいかに「線」とできるか。危機感を飢餓感に変え、彼らは20年ぶりの夏甲子園=春夏連続甲子園出場を狙う。

 高松商包囲網を敷く注目選手も見ていきたい。高松商が初戦で激突する高松北には最速139キロのストレートとカット気味のスライダーを堅実なトレーニングで積み上げてきた右腕・橋本 大輝(3年・177センチ64キロ・香川県立高松北中出身)が立ちはだかる。毎年大会を彩る大応援団からもパワーを受け、[stadium]レクザムスタジアム[/stadium]に歓喜を巻き起こしたいところだ。

 春4強・丸亀の2本柱にも注目。重いストレートで押し込む右腕・戸城 凌(3年・180センチ75キロ・右投右打・善通寺市立西中出身)、クロスファイヤーで三振奪取を狙う左腕・東条 拓哉(3年・173センチ72キロ・左投左打・香川大学教育学部付属坂出中出身)はいずれも完投能力あり。元四国アイランドリーグplus・香川オリーブガイナーズ主将の井吉 信也監督が描く「ダブルクリーンナップ構想」がどのように打順に反映されるかも勝敗のかぎをにぎりそうだ。

 後編ではさらに小豆島ブロックや、志度ブロックの見所について迫っていきます。

(文・寺下 友徳


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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