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手負いの高松商、春夏連続甲子園へ黄色信号 県内高校野球ブームの中、大混戦の夏来る!【香川抽選会後 展望・後編】

2016.07.09

 後編では志度ゾーン、小豆島ゾーンについて迫っていきたい。

■組み合わせ表は以下から

【第98回香川大会組み合わせ表】

Cブロック:第3シード・志度ゾーン

井原 壮一郎(志度)

 このブロックをけん引するのはやはり第3シードの志度大阪桐蔭(大阪)との対戦が予定されていた香川県高野連招待試合は残念ながら雨で流したものの、投手陣の層は四国内でも屈指。遊撃手もソツなくこなすアスリート系右腕・井原 壮一郎(3年・170センチ66キロ・右投右打・さぬき市立津田中出身)を筆頭に、右翼手兼任の長身右腕・鎌田 大輝(2年・182センチ70キロ・右投右打・東かがわ市立白鳥中出身)など複数投手が控え、継投の使い分けで失点を最小限に抑える。

 春からの成長著しい中距離砲、4番の西尾 直輝(3年主将・三塁手・右投右打・185センチ99キロ・さぬき市立南中出身)の前後を打つ打者が西尾の特徴を際立たせる働きができれば、31年ぶり甲子園出場への可能性は一気に高まるだろう。

 志度に対抗するのは英明か。最近の練習試合で香川 智彦監督は多田 智哉(3年・178センチ66キロ・右投右打・高松市立紫雲中出身)、藤井 拓海(2年・180センチ86キロ・右投右打・高松市立太田中出身)、遠藤 夢也(2年・170センチ65キロ・左投左打・綾川町立綾南中出身)の3投手を組み合わせる継投策をテスト。藤井、西岡 昂平(3年・一塁手・175センチ73キロ・右投右打・高松市立桜町中出身)らが組む中軸の得点力にはある程度計算が立つだけに、確実に勝ち切るパターンがはまれば5年ぶり甲子園出場も十二分に考えられる。

 この2チームに加え、チームの一体感で志度に立ち向かう津田、2年生エース・佐藤 圭悟(右投左打・173センチ68キロ・東かがわリトルシニア出身)に大きな期待がかかる三本松観音寺中央も2年生を中心に地力を持つ。

Dブロック:第2シード・小豆島ゾーン

 センバツでは無念の初戦敗退に終わった小豆島。が、大舞台でリアルに味わった経験は彼らの意識をワンランク高いところに押し上げた。
「選手個々の差はものすごくあっても、野球にすればそれほどの大差にならない。あとは勝ち切るために足らないことをどれだけ詰められるか」(杉吉 勇輝監督)。春以降はテーチングとコーチングのバランスを整えて臨んだ香川県高野連招待試合・大阪桐蔭戦での4対6惜敗が最も象徴的であろう。

⇒次のページ:Dブロック:第2シード・小豆島ゾーン

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[page_break:Dブロック:第2シード・小豆島ゾーン]

樋本 尚也 (小豆島)

 この大阪桐蔭戦では「打者の傾向を見ながら大胆に守備位置をとっていく」。樋本 尚也(3年主将・遊撃手・172センチ71キロ・右投右打・土庄町立土庄中出身)を中心に組んだ守備シフトは十分に機能し、打線も12安打。中でも5番の石川 生強(3年・一塁手・右投左打・172センチ72キロ・土庄町立土庄中出身)は5打数4安打。強肩の4番・植松 裕貴(3年・捕手・右投左打・170センチ66キロ・小豆島町立内海中出身)だけでない二枚腰がチーム全体に生まれてきた。

 となると、かぎはやはりエース・長谷川 大矩(3年・173センチ75キロ・左投左打・小豆島町立内海中出身)のコンディション。球速にこだわらず新球の導入も視野に入れる彼の「制球」が最初で最後の小豆島春夏連続甲子園出場。そして27人に増えた部員全員が誓う「甲子園で勝利の校歌を歌う」へのかぎとなる。

 ただ、しかし。このブロックもシード校にとっては厳しい戦いが続く。小豆島初戦の相手は冬には合同練習を行うなどお互い手の内を知り尽くしている藤井。「ステップを直して制球力と球速が出てきた」(青山 剛監督)山田 涼太(3年・181センチ70キロ・右投右打・坂出市立東部中出身)の最速142キロストレートに打線が差し込まれるようなことがあれば、試合の流れは一気に混とんとしたものとなりそう。

 さらに、春季県大会の不振から完全に立ち直り、練習試合では好投を続ける渡邊 悠(3年主将・左投左打・181センチ82キロ・三木町立三木中出身)が大黒柱の尽誠学園。直近の練習試合で鳴門を下した2年前の覇者・坂出商。そして高いキャプテンシーを見せる強肩捕手・桑田 一馬(3年主将・173センチ70キロ・右投右打)を中心に粘り強く戦う丸亀城西。この辺りも小豆島の野望を阻止すべく、爪を磨いている。

「誰のための高校野球なのか?」センバツ前後から香川の地に足を踏み入れ、各チームを取材するたびに浮かんだ大きな命題である。もちろん、高校野球は選手たちのためだけのものでは決してない。指導者・学校・保護者・地域・さらに言えば香川県。センバツで小豆島高松商が様々な形で感動を与えたことにより、改めてその重要性がクローズアップされたことも間違いない。ただ、基盤をおくべきところはいったい、どこなのか……。最も注目されるチームが万全の状態で迎えられないことが明らかになった今、私たちは改めてそのことを考える必要がある。自省と後悔も込めて。近年にない盛り上がりを見せることが必定な香川大会の中で、そのことだけが常に頭に留めておきたい。

(文・寺下 友徳


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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