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【三重展望・前編】北部は選抜出場のいなべ総合、津田学園など強豪がひしめく

2016.06.25

 昨年、津商智辯和歌山を破り(試合レポート)、話題となった三重県。昨秋の東海大会では三重県勢が3校ベスト4入りを果たし、東海地区では最も実力ある県だといっていい。そんな今年の三重県は、センバツ出場校のいなべ総合と厚い選手層の三重高がツートップ。その後を僅差で追う津田学園海星津商宇治山田商といったところが三重県の勢力図だ。以下北から有力校を紹介していく。

桑員地区はいなべ総合、津田学園がツートップ!

渡辺 啓五(いなべ総合)

 センバツ出場校であり春季三重県大会優勝校であるいなべ総合が夏の大会第一シードだ。センバツでは脇腹を痛め本調子では無かった2年生エースの渡邉 啓五が完全復調、同じ2年生の左腕・赤木 聡介も渡邉に負けじと急成長し、1試合を任せられる投手となった。

 他にも水谷 優渡辺 祐希、打撃を活かし野手兼任の山内 智貴と投手陣は質量ともに豊富だ。投手陣をリードする捕手の渡邉 雄太は強肩で盗塁を奪うのは容易ではなく、内外野の守備もよく鍛え上げられておりこれと言った穴は見当たらない。

 俊足巧打の宮崎 悠斗、主砲藤井 亮磨、どのコースにも逆らわずに打ち返せるミートの上手い神田 将嗣らを中心とした打線は、繋がりという点では三重県ナンバー1だ。以上の様に今年のいなべ総合は投攻守の三拍子が揃い、県外強豪校との練習試合の結果からも全国トップクラスのチーム力と見ていいだろう。

 春季県大会準優勝で一躍夏の第二シードに踊り出た津田学園。現在最も勢いがあるチームだ。俊足強打の大型外野手・濱田 大輔を1番に置き、小柄ながらパンチ力がある3番・押川魁人、押川と春2度のアベックホームランを放った4番広 翔悟らを中心とした打線は、同地区のライバルいなべ総合と比較しても勝るとも劣らない程だ。2年生ながら堅実な守備の捕手久保田 拓真、広い守備範囲と判断の良さが光る押川 魁人二塁手、俊足を活かした守備の濱田 大輔のセンターラインを中心とした守備は堅い。

 春は出遅れ登板機会の無かった大型左腕・後藤 魁の穴を埋めるべく北川 和真を軸とした投手陣が踏ん張り勝ちを呼びこんだが、やはり夏本番にはエース後藤 魁投手の復調が待ち望まれる。

 県下一の激戦区と言って過言でない桑員地区から、3季連続県大会に勝ち進んでいる実力校である桑名工。この春は地区予選では津田学園に勝ちながら県大会では敗退、津田学園の東海大会出場を悔し思いで見ていた事だろう。投手陣はともに3年生右腕で制球と変化球のキレで勝負の赤塚 和也大西 一輝が軸になる。桑名工の魅力は2年生ながら4番を打つ大柄な岡村 光一塁手を中心とした破壊力充分な打線だ。

 序盤で同地区のいなべ総合と対戦すれば、2011年夏の三重大会で前年度甲子園出場校のいなべ総合に苦汁を舐めさせた再現もありうる。他にも主将でエースの宮田 紘輔が引っ張る桑名北は打線も強力で、シード校は序盤では対戦したくない相手だ。

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[page_break:四日市地区:秋優勝の海星は投手陣の出来がカギ]

四日市地区:秋優勝の海星は投手陣の出来がカギ

犬飼 康太郎 (海星)

 秋季県大会優勝校で第四シード校の三重海星は、不調だったエースの長田 悠吾が復調。控え投手陣・白石 一将下田 樹慧末松 希一大須賀 健祐らが、エース長田 悠吾不調の間を支え急成長したのは、夏の連戦を勝ち進む上で大きな収穫だ。特に海星中学時代にエースとして全中3位に輝いた末松 希一と、1年生ながらU15日本代表選手の経験を持つ大器・大須賀 健祐の海星中出身の2人に期待がかかる。

 あとは1年秋に大活躍し最上級生となった川﨑 達矢が復調すれば、バラエティに富んだ投手陣は盤石だ。豊富な投手陣を好リードで引っ張る捕手の竹内 友哉、俊足で守備範囲の広いセンター犬飼 康太郎を中心とした外野守備は安心して見ていられる。打線はトップバッターの犬飼 康太郎をはじめとし左打者が多いが、左投手を苦にもせずミート出来るシュアなバッティングが持ち味で、足を絡めどこからでも得点が出来るのが強みだ。春の県大会は序盤に敗退したせいもあり秋に比べやや影が薄くなった感は否めないが、投手陣の整備次第では16年ぶりの甲子園に手が届きそうだ。

 菰野は、四日市地区予選では海星に勝つのに県大会で上位進出するのは海星といった状況が続き、選手関係者は悔しい思いをしている事だろう。
過去に何人ものプロ野球投手を輩出したが、今年も3年生では打っても主砲の永田 一真、最近絶好調の駒田 裕大、2年生では左腕・村上 健真、大型右腕・岡林 飛翔など層は厚い。

 攻守の中心は下級生の時から出場しているサードで3番打者の藤澤 昴楽、センターで1番打者の岩下 裕次郎らだが、春は中心選手に故障者が多く実力を出し切ったとは言いがたかった。故障者が復帰してきた現在は春とは別チームと言っていい程充実してきている。

 四日市西は春先はエース外岡 勇磨が不調で県大会出場はならなかったが、夏に近づくにつれ復調。今月12日の試合では自身初となるホームランを放つなど投打に渡り大活躍。多彩な変化球がコーナーに決まると強豪校相手に一泡食わせそうな勢いだ。四日市工昨年夏のベスト4で、メンバーは大幅に入れ替わったがエースの変則なフォームでタイミングが合わせ辛い左腕・伊藤 良を中心とした豊富な投手陣と、2番打者で小柄ながらホームランも放つ俊足巧打のキャプテン・林 祐弥を核とした、伝統の足を活かした機動力野球は健在だ。

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津地区:津商が怖い理由

栗谷 太智(津商)

 昨夏の代表で秋の4位の津商は序盤で敗退しシード漏れしたが、昨夏から江川 雄人松葉 叶栗谷 太智らが残り充分連覇を狙える実力校である。津商の強みは大人数の中から選りすぐられベンチ入りしている20名のスキルの高さもさることながら、絆の強さとハートの強さだと感じる。

 昨夏いなべ総合との決勝、8回裏決定的と思える3点差となる打球をライト前ゴロにしようと一塁へ投げた選手を覚えているだろうか?当時2年生ながら背番号9を背負い、現在は副キャプテンとなりチームを引っ張っていく立場になった栗谷 太智がそのライトだった。

 一塁へ送球した際の心境を知りたく後日、筆者は本人に聞いた。
「大会前から肩を痛めており本調子では無く、試合に出たり出なかったりでしたが、決勝の朝に宮本先生からスタメンで行くと言われ、出して貰えるからには最後まで全力でやり切ろう思いました」

 ただ全力でやると言うのは容易いが、それだけではなかなかあのプレーは出来ないはず。
「全力でやり切る勝ちたいだけの気持ちでは出来なかったかも知れない。宮本先生が勝利監督インタビューでもお話されてみえた様に、スタンドで応援してくれている3年生の方達は日頃から私達下級生がやりやすい環境・雰囲気作りに努めてくださっていました。そうしたベンチに入れない3年生の事を思うと絶対に諦められませんでした」

 あの一塁への送球の影響で肩に力が入らなくなり、9回表の攻撃の際には自ら代打を送って下さいと宮本 健太朗監督に申し出て、代打陣による劇的な逆転劇が生まれたが、それを見て筆者は諦めずにライト前ゴロにしてやろうと必死に投げた一球により、勝利の女神が津商に舞い降りたと思っている。

 今年も野球に真摯な上級生を見た下級生が1年前と同じ様に最後まで諦めないプレーをするであろうし、それが津商の良き伝統として継承されて行くであろう。それが強さとなる。今年の津商の戦いぶりが見逃せない。

 後編では松坂地区など南部の有力校を紹介していきます。


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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