【千葉展望】やはり今年も戦国!甲子園を狙える強豪校と怖いノーシード校は?
各校の拮抗した戦いに「戦国千葉」というフレーズが定着した千葉県。今年も力のあるチームが多く、全国でも戦えるチームが揃った。それだけではなく、シードを獲得した強豪を破る可能性を持ったノーシードの学校も多く、今年も大会が始まれば、多くのファンから「あそこが負けた。今年も戦国千葉だな」という声が聞こえそうだ。そんな今年の有力校を紹介していきたい。
優勝を目指す東海大市原望洋、千葉黎明の課題とは?
島 孝明(東海大市原望洋)
まず県大会優勝した東海大市原望洋。選手のポテンシャルは全国的に見てもトップクラスと言っていい。エース・島孝明(関連記事)は最速153キロのストレートと曲りが大きいスライダーを武器に三振を量産する豪速球右腕。県大会ではリリーフで8回16奪三振と驚異的な奪三振率を誇った。しかし秋よりもコントロールを乱し、球数が多い投球なのが気になる。
この春は桁外れの球速、抜群のスライダーの切れで打ち取ることはできているものの、今のままでは息切れをしてしまうので、球数を少なくして打ち取る投球を見せていきたい。2番手の140キロ台の速球を投げる金久保優斗(2年)は、しっかりと試合を作れる投手だが、この2人以外の台頭が、夏を勝ち上がるための課題といえるだろう。
野手では準々決勝、準決勝で合計3本の本塁打を放った倉石 匠己、長打力のある荒川 太一(2年)、正捕手であり、攻守の要である峯尾 京吾、巧打堅守の遊撃手・藤本 誠啓(2年)が揃っており、野手のレベルも高い。あとは、勝負所の守備、犠打、走塁などをしっかりとこなすことができるか。今年の望洋は打撃以外もしっかりしていると思わせる内容を残してほしい。
準優勝の千葉黎明は、昨秋から攻撃面が大幅に強化された。県大会でも、好投手を打ち崩し、関東大会でも常総学院にコールド勝ちと、手応えを掴む春となった。打撃面では、県外の強豪校から転校し、今年から公式戦出場となった4番島村 篤史が加わったことで打線に厚みが増した。長打力のある大堀 智哉、俊足巧打の藤江 康太の主力選手が伸びただけではなく、下位を打つ選手も伸びたことで、切れ目のない打線となった。
またエース川口廉が昨秋から急成長。投球術、変化球の精度が伸びたのはもちろんだが、何よりもピンチになっても動じなくなった。千葉県大会準決勝の成田戦では一死満塁のピンチを切り抜け、一皮むけた姿を見せた。夏勝ち上がるための課題は川口以外の投手陣の底上げだ。県大会では島、そして関東大会では藤平尚真(横浜<関連記事>)と全国クラスの剛速球右腕2人と公式戦で対戦した経験を生かすことができるか。
ベスト4の成田は、投打ともに総合力のあるチームだ。140キロのストレートとキレのあるスライダーで勝負する鈴木 凌賀、130キロ後半のストレートで勝負する尾身 健太朗の2枚看板。打線は、バットコントロールの良さが光る中橋 奎太、巧打力、守備力の高さが光る好ショート・花嶋 悠吏、長打力のある酒巻 翔、パンチ力ある打撃と守備範囲の広い外野守備が光る岡本 佳大とタレント揃い。千葉黎明にギリギリの勝負を演じたチームだけに、夏も上位候補に入りそうだ。
千葉経大附は、エース・千葉経大附中村亮太が130キロ後半の速球とキレのあるスライダーを投げるまでの投手へ成長。打線も強肩強打の捕手・坂巻 尚哉など全体的に振れる打者が多く、一気に畳みかける怖さがある。さらに守備力も安定している。あとは中村以外の投手をどれだけ底上げできるかにかかっている。
やはり怖い木更津総合
早川 隆久(木更津総合)
ベスト8で最も怖いのは木更津総合だろう。しかし春の県大会は調子が底であった。エース早川隆久(関連記事)には春の大会ではあまり投げさせておらず、夏にピークにもっていくための調整をしている。選抜で全国クラスの投球を見せた早川は夏でどれだけベストコンディションで臨めるかに注目したい。あとは武田 大慶、大熊 啓夢といった投手陣が、強豪校にも通用する実力を身に付けていきたいところ。
打線は峯村貴希(関連記事)、山下輝(関連記事)といった2年生打者がどれだけ爆発できるか。全体的にミート力が高い選手が揃うが、1年生の野尻 幸輝の活躍も鍵になりそうだ。野尻は木更津総合に久しぶりに現れた大型スラッガー。選抜で活躍した上級生と野尻のような新戦力が上手く絡んでいくと、非常に楽しみだ。木更津総合は夏に調子をピークにもっていく調整法が分かっている。夏の木更津総合は春とは全く別チームだと思った方がいいだろう。
そして河野 聖二など好野手が揃った西武台千葉、投手陣の駒数が豊富な東京学館浦安、好投手・今吉 翼を擁し、さらに打線もつながった時が怖い松戸国際も見逃せない。千葉明徳はバットコントロールが良く、走塁技術、守備力も高い好二塁手・谷 駿汰、強肩捕手・菅井 紀美靖など攻守でバランスが取れた選手が揃う。投手陣は千葉明徳鈴木 翔、持永 真之介の2人が軸。県大会では継投策が多かったが、夏でも継投となるだろう。
ベスト16で最も怖いのは、昨夏甲子園出場の専大松戸だろう。打線はスラッガー・丸茂 弘汰(関連記事)、長打力のある永井 雅哉、思い切りの良い打撃を見せる寺元 啓介、しぶとい打撃を見せる伊藤 彰伸と野手陣のレベルの高さは県内屈指。あとは最速142キロ右腕・川上 鳳之(2年)など各投手陣がどれだけ伸びるか。この夏へ継投策で勝ち上がることになりそうで、打線と守備でカバーをしていきたい。
昨夏ベスト4の中央学院では浅野 辰樹に注目したい。135キロ前後の速球とスライダーを武器にする好右腕だ。打線もパンチ力のある鈴木 修我、1年生ながらクリーンナップを打つ大谷 拓海は、長打力があり、今後が楽しみな1年生打者だ。中央学院は夏へ向けてしっかりと戦力を整理していくチームなので、怖いチームであることは間違いない。
拓大紅陵、習志野、日体大柏などノーシードの強豪校が多数!
松尾 康平(拓大紅陵)
昨秋ベスト8の市立船橋は長打力のある柄澤 侑也、俊足巧打の草野 里葵と野手陣のレベルは高いが、夏へ向けてどれだけ投手陣を整理できるか。また強力打線がウリの八千代松陰、春2回戦で専大松戸に5対6と接戦を演じた我孫子は、石川 竜馬、堀田 成剛を中心とした打線が強力だ。さらにブロック予選で習志野を破り、県大会でも千葉黎明に4対6の接戦を演じた県立船橋、堅実な守備、投手陣の層が厚い千葉商大付は、強打者・吉山 栄太がポイントゲッターとしてどれだけ打てるかにかかっているだろう。
千葉英和は左腕・道地 佑、右腕・坂上 聖の2枚看板がどれだけ奮起できるか。また昨秋のベスト8の稲毛も何かを起こす気配を感じさせるチームだ。そして横芝敬愛も140キロ右腕・横芝敬愛伊藤翔、強打の二塁手・高上 幸大とタレント揃いだけに、夏へ向けて、劣勢でもそれを跳ね除ける精神的な強さが欲しい。そして日体大柏は投手陣の層は厚く、さらに打撃も強いスイングができる選手が多い。粘り試合運びに、勝負強さが加われば、上位進出する学校となるだろう。
またブロック予選で拓大紅陵を破った木更津、県大会2回戦で稲毛を破った東金、強打がウリの千葉市川、抜群のスライダーのキレ味を誇る左腕・鈴木 唯大擁する国府台、思い切りの良いスイングができる打者が多い千葉沼南といった公立勢の戦いぶりも見逃せない。ブロック予選敗退したチームでは、夏に必ず浮上するであろう習志野、名門・銚子商、強打の拓大紅陵、流通経済大柏、東海大浦安などの私学の強豪校もシード校からすれば序盤から当たりたくない相手だろう。
実力校は多く、夏へ向けて急浮上する学校があるだけに、何が起こるか分からないのが千葉県の怖さ。6月17日の抽選会は一大イベント。優勝した東海大市原望洋のブロックにどの強豪校が入るのか?など興味は尽きない。再び抽選会後に、各ブロックの展望をお伝えしていきたい。
(文・河嶋 宗一)
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