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【埼玉展望・前編】今年を代表する花咲徳栄、浦和学院の二強の戦力を徹底紹介!

2016.06.08

 何が起こるか分からないのが埼玉県。昨年は、秋、春とともに県大会出場していない白岡決勝進出を果たすなど、激戦区である。今回は2回に分けて埼玉県の有力校を紹介していきたい。

花咲徳栄は戦力充実も エース・高橋の復活が第一!

高橋 昂也(花咲徳栄)

 浦和学院が春4連覇を達成し幕を閉じた春季埼玉県大会。この大会と秋季大会等の結果を踏まえ、あくまで組み合わせが決まる前ではあるが、現状での今夏の選手権埼玉大会の展望について語りたい。今年の代は昨秋今春共に決勝まで勝ち上がった浦和学院花咲徳栄の二強といっても過言ではない。

 共に準優勝に終わったが、今夏の本命と言えば三期連続甲子園を目指す花咲徳栄であろう。だが、春季大会序盤は打線が湿り苦戦の連続であった。特にふじみ野戦(試合レポート)は遠藤 稔投手の好投もありロースコアに持ち込まれ同点のままゲーム終盤までもつれた。それでも、今大会を任された2年生綱脇 慧は大会を通じて安定したピッチングを見せ、決勝まで勝ち残った。

 綱脇はMAX130km中盤ながら、体を大きく使ったフォームからテイクバックをコンパクトにとり、球質の良い直球を投げ込む。春季大会をメインで投げ切った事と、関東大会で強打の東海大甲府を完封したことで、自信を深めて夏を迎えられるであろう。投手陣では、もはや説明不要、埼玉No.1左腕エース高橋昴也に、清水 達也本多 和樹瀧口 蓮など頭数は揃っている。

 打線は、野本 真康千丸 剛高橋 哉貴の9,1,2番がチャンスメイクし、勝負強い岡崎 大輔西川 愛也楠本 晃希のクリーンナップが走者を返す。ここに関東大会でスタメンに戻った長距離砲、昨秋4番の隈本 達也が絡んでくると、埼玉随一となる打線の破壊力が完成する。さらに、相変わらず隙の無いバリエーションのある攻撃は健在で、足のある選手が多く、例え相手投手に抑え込まれても、ゴロゴーやセーフティースクイズなどで1点をもぎ取ることができる。チームとしてケースバッティングができるのがこのチームの強みだ。

 気になるのは主力の状態であろう。エース高橋昴はセンバツ後の練習試合で既に140km越えするまでには戻っていたが背中の張りの影響もあり(体調が万全であっても、おそらく県大会は登板しなかったと思われるが)今春は一切登板せずに終わった。何よりも気になるのはフォームだ。春のセンバツで見せたような制球重視のようなフォームを選ぶのか、それとも元のフォームに戻すのか。経験は豊富だが、その点に一抹の不安が残る。

 また、今春センバツから4番を打っている2年生西川は肩・肘を痛め関東大会はベンチから外れ、岡崎は関東大会で自打球を脇腹に当て負傷交代している。これらの主力選手達が残り一か月半でどこまで復調するかが鍵だ。

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[page_break:浦和学院は野球の完成度をどこまで高められるか?]

浦和学院は野球の完成度をどこまで高められるか?

榊原翼(浦和学院)

 そして、共に埼玉大会を制した浦和学院だが、あえて対抗の予想とさせていただく。今年の投打の柱は榊原と主将の諏訪だ。エース榊原 翼は、MAX140km越えの直球をオーソドックスなフォームから投げ下ろす右腕であり、その伸びや球質の良い直球を中心に変化球も制球良くコーナーに投げ分け相手を抑え込む。他の投手陣としては辻 二郎黒川 勝輝、左腕の大澤 魁生、そして、一年生左腕の佐野 涼弥が絡んでくるであろう。

 一方、打の柱、諏訪 賢吉は、シャープなバットスイングからの勝負強い打撃が特徴の中距離打者であるが、ツボに入れば一発もある。昨春のセンバツベスト4のメンバーであり経験も豊富だ。課題は守備であったが、現在の浦和学院の看板である3番ショートを今春から任され、そつなくこなしているところを見てもベンチ内での守備の評価が上がっているとみていいだろう。

 打線としては諏訪よりも長打力がある幸喜 勇諮、2年生の家盛 陽介杉山 翔春季大会決勝で4番に座った1年生の蛭間 拓哉が続く。他にも右の前田 陽太、キャッチャーの梶山 直暉など打線に切れ目がない。本来であればもっと爆発しても良いはずだが、春季大会は打線がやや低調で、結局1試合もコールドで試合を終わらせることができなかった。

 問題は現時点では旧チームと比べると完成度の面で劣っていること。まずは、エース榊原に続く投手の確立だ。現状では辻、左腕の大澤、そして、一年生左腕の佐野が絡んでくる。旧チームはエース級の投手を江口 奨理小倉 匡祐と二枚擁し、彼らが交互に先発させるなど酷暑の大会での投手陣の消耗を軽減していた。その二番手投手の発掘も兼ねての春季大会だったのだが、蓋を開けてみれば、消化試合である決勝を除いた4試合中3試合に榊原が先発した。

 ベスト8決勝で大澤が先発したが、特に決勝の投球内容を見ても結論として、今夏でその試合すべてを託せるほどの説得力のある投球はできなかった。むしろ二番手候補としては佐野の名前が挙がるのだが、一年生にすべてを託すのは酷だ。今年は主に榊原をメインに投げさせざるを得ない状況であろう。

 もう一つの問題は守備面だ。一冬を越え昨秋サードを守っていた諏訪をショートに、ショートを守っていた家盛をセカンドへ、セカンドを守っていた杉山をサードへ内野陣をシャッフルした。その内野陣が、春季大会やや綻びを見せた。ここ数年浦和学院といえば、堅守を誇っていただけにこの点は不安が残るだろう。
 

 後編ではベスト4~8や、ベスト8以外でも見逃せないチームを紹介していきます。

(文・南 英博


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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