【選抜大会】ドットコム編集部が選ぶ記憶に残る試合ベスト3!
智辯学園の初優勝で幕を閉じた第88回選抜大会。熱戦続きでベスト3を上げるだけでもかなり悩んだが、中でも特に記憶に残った3試合をピックアップ。これからその3試合を紹介していきたい。
3位 準々決勝 秀岳館対木更津総合
早川 隆久(木更津総合)
秀岳館はここまでの2試合、自慢の強力打線を発揮し勝ち上がってきた。対する木更津総合は大阪桐蔭を破った(試合レポート)ことで勢いにのっている。その大阪桐蔭を破る原動力となった早川隆久(インタビュー)は安定感抜群で、この試合も秀岳館打線に封じこんでいく。そして木更津総合が鳥海 嵐万の適時打で1点を先制。しかし1点を先制した後、秀岳館の捕手・九鬼隆平(インタビュー)が二塁へ向かう鳥海を刺したプレーがあった。九鬼は1点を諦め、2点目を取らせないために、すぐに二塁に向かう鳥海をアウトにすることに切り替えたのだ。この好判断により、木更津総合は2点目を挙げることができなかった。
木更津総合の早川は快投を続け、8回まで0点。そして完封目前の9回裏、二死三塁でフルカウントから投げこんだのは早川が自信としているクロスファイヤーだったが、四球。その後、二死一、三塁から廣部 就平の同点適時打、そして堀江航平のサヨナラ安打で秀岳館がサヨナラ勝ちを収めた。
早川の投球は見事だったが、1点しか与えなかった秀岳館のディフェンス力の高さを感じた試合だった。1対0で早川が完封しなければ勝てないと木更津総合に思わせた時点で、後攻の秀岳館は逆転の芽が出たといえる。2点目をしっかりと阻止した秀岳館の試合運びは見事だったと評していい。(試合レポート)
2位 準決勝 智辯学園対龍谷大平安
中村 晃(智辯学園)
龍谷大平安のペースで突き進んでもおかしくない試合だったが、智辯学園の粘りが想像以上で、野球を知る方からすれば、智辯学園の戦いは予測を超えるものだったと言えよう。まず先制したのは龍谷大平安。しかもエラー絡みの失点だった。失点後の次のイニングはじっくりいけ、と球児の方は耳にタコができるぐらい言われていることだろう。
その智辯学園 だが、バントミス、牽制死とミスが相次いだ。まずい流れになったが、それでも失点を与えなかったところがさすがであった。その後は試合が動きそうで動かない展開となった。また両チームのベンチを見ていると駆け引きの様子が伝わってきて、それもまた惹きこまれる要素となった。
そして9回裏の攻撃、一死一塁の場面で打席に立ったのは智辯学園 ・智辯学園中村晃。過去の打席を振り返ると、犠打が良く、二死二塁で安打を放っている青木雄大にかける戦略を取るのかと思った。だが中村は強攻。振り抜いた打球は中前安打に。この場面で強攻をして安打という、予想を超える結果となった。
これがきっかけとなりサヨナラ勝ちにつながったが、サヨナラになったことよりも、中村選手が連打をして、チャンスにつなげたことの方が衝撃だった。中村選手はこの試合、失点につながる失策をしていて、まさに地獄を味わっている。そんな選手が同点につながる安打を放ち、さらにサヨナラのホームを踏むのだから、まさにドラマチックな試合展開だったといえよう。(試合レポート)
1位 決勝 智辯学園vs高松商
優勝した智辯学園
接戦続きの今大会。決勝戦も延長戦となり、まさにファイナルに相応しい一戦となった。高松商は1回表、安西翼が二塁打を放ち、いきなりチャンスを作ったが、智辯学園のエース・村上頌樹がしっかりと抑えて無失点に切り抜ける。この村上の粘り強さは圧巻だった。そして2回裏に智辯学園が1点を先制したが、8回表に高松商が同点に追いつく。
智辯学園の村上、そして高松商の浦大輝は連投で疲れがたまる中で、精度の高いピッチングができていた。その中でも好プレーが飛び出し、決勝戦も手に汗握る戦いだった。延長11回裏、二死一塁から智辯学園は村上が打席に立った。村上が振り抜いた打球はセンターオーバー。二死だったこともあり、すでにスタートを切っていた一塁走者が一気に生還し、サヨナラ勝ちで優勝を決めたのであった。(試合レポート)
エースが投げて、エースが試合を決めるという劇的な試合展開。こうして智辯学園が初優勝を決めたが、準々決勝、準決勝、決勝と延長戦が続出したケースもそうそうないといえる。試合が大差になることなく、このような接戦が続いたのは見ている高校野球ファンにとっても幸せだったのではないだろうか。
また今年は軟式野球チームの小中学生、高校生を無料招待するドリームシートがバックネット裏に新設された。小中学生にとっては絶対に甲子園でやりたいなと憧れを抱く試合になったと思うし、高校生にとっては、彼らがどういう表情、どういう考えで野球をやっているか、参考になったはずだ。
こういう活動というのは、すぐには結び付かない。続けていくうちに、小中学生は、あのドリームシートがきっかけになって野球を続けるようになった、レベルの高い環境でやりたいと思うようになったと、また高校生ならば甲子園の観戦が自分たちの上達に役立ったと思うはずだ。そういうきっかけ作りになっただけでも、今回のドリームシートは成功だったともいえる。
高校野球は夏に近づくにつれて、いろいろなドラマが巻き起こるが、選抜でこれほどの接戦が起きたので、夏はどんなドラマが起きるのだろうかと期待せずにはいられない。2016年夏は、伝説の1年と呼ばれる熱戦が繰り広げられるかもしれない。それを楽しみにしたい。
(文・河嶋 宗一)
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