Column

今大会で活躍を見せた投手たちは?注目投手たちの投球を総括!

2016.04.01

 智弁学園の優勝で幕を閉じた今年の選抜大会。投手でいえば、左投手の方が前評判が高かったのだが、右投手が目立つ大会となった。

優勝投手・村上頌樹から学べるもの

村上 頌樹(智辯学園)

 大会2完封を記録し、47イニングで自責点は僅かに2と抜群の安定感を示し、さらに甲子園優勝を決めるサヨナラ打を放ち、見事に優勝投手となった村上 頌樹智辯学園)はまさに投手のお手本と呼べる投球だった。ストレートの球速は常時130キロ中盤だが、要所で、141、2キロのストレートを投げ込んでいる。これほど安定感ある投球ができたのは、非常、投球フォームの完成度が高かったから。体への負担も少なく、大会通して投げ切ることができたのではないだろうか。

 また村上は、カーブ、チェンジアップ、ツーシームを駆使して、タイミングを外す投球が上手いだけではなく、高めのつり球も有効的に使える投手だった。村上の投球から学べることは多い。大会終盤になると拮抗した試合が多かった。それでも持ちこたえることができたのは村上の投球があったから。見事にゲームをコントロールし、持ちこたえることができた。まさに今大会のMVPに挙げていい。

 今年のドラフト上位候補と期待される高田萌生創志学園)は初戦東海大甲府戦で最速146キロのストレート、縦横のスライダー、カーブ、ツーシームを駆使して、1失点完投。2回戦高松商戦ではストレートが最速149キロを計測。力のある投球を見せたが、ストレート中心の投球が狙い撃ちされていた。相手打線の意図をしっかりと汲み取った投球ができるかが、夏のテーマとなるだろう。球速については、これから気温がどんどん上がるので、自然とアベレージのスピードが上がっているはず。夏でドラフト上位確定と思わせるピッチングを見せていきたい。

 山﨑颯一郎敦賀気比)も140キロ前半のストレートは昨年よりも角度が出てきて、ストレートで押せるようになった。落差あるカーブのコンビネーションがはまり、青森山田打線を完封勝利と、一定の成長を見せた。あとは自慢のストレートがどれだけスケールアップするかだろう。
この2人は、夏へ向けてスケールアップすれば、ドラフト上位候補で指名される可能性を持った逸材。ラストサマーで、ぜひ我々を驚かせる成長を見せてほしい。

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[page_break:注目投手たちの投球を振り返る]

注目投手たちの投球を振り返る

藤嶋 健人(東邦)

 藤嶋健人東邦インタビュー)は、140キロ前半のストレート、カットボール、カーブなどを駆使して淡々と組み立てる投球は、さすがのものがあった。今大会は最速146キロを計測するなど、昨秋よりも速くなっていたが、夏までにさらにパワーアップした投球を期待したい。打者としての評価が高い選手だが、投手としても非凡なものを持っている選手だ。

 またベスト8に導いた吉高 壯明石商インタビュー)も、今大会では145キロ前後の速球を計測するなど、昨秋よりも格段にパワーアップ。スライダー、カーブ、130キロ台のスプリットを自在に投げ分けるピッチングは、今大会トップクラスの投手と推していいものであった。堀岡隼人青森山田)も、最速141キロのストレートとキレのあるスライダーをコンビネーションに、敦賀気比打線を相手に1失点にとどめる投球で、昨秋よりも成長した姿を見せていた。

 135キロ前後ながらも変化球を巧みに使い分け、テンポの良い投球を見せ、勝ち進むごとに投球の円熟味が増した浦 大輝高松商)は見事に甲子園準優勝投手となった。135キロ前後の速球とカーブを巧みに使い分けた櫻井一樹八戸学院光星)、最速140キロを計測し、スライダーを交え、しっかりとゲームを作った園田涼輔長田)、最速140キロの速球で勝負した重冨将希南陽工)は変化球の制球力に課題を残したが、まだまだ伸びる可能性を持った大型右腕。赤羽陸市立和歌山)は最速143キロを計測。フォームの土台も良く、バランスが取れた好投手で、夏にかけてしっかりとチェックを入れたい選手だ。

 有村大誠秀岳館)は、リリーフ登板時では最速144キロを計測したものの、先発としては、130キロ中盤とやや物足りない。夏では先発としても140キロ台を連発できるようにさらに体を鍛え込んで、逞しい投球を期待したい。

 そして今大会最速147キロを計測した吉川貴大開星)は、指にかかったときの速球は今大会の投手でもトップレベルの勢いがあった。しかしコーナーへ投げ分ける制球力、投球術などまだ課題は多い。スピードで押すことよりも、140キロ前半でも、内外角へ投げ分けがしっかりと出来て、決め球と呼べる変化球を習得して投球術がしっかりと確立した時、ドラフト候補として注目されるのではないだろうか。菊地大輝東海大甲府インタビュー)は140キロ台の速球を投げ込んでいたが、まだ復調とは呼べない投球で、春季大会、夏の大会で昨年より成長した姿を見せていきたい。

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[page_break:夏に巻き返しを期待したい左腕投手たち]

夏に巻き返しを期待したい左腕投手たち

早川 隆久(木更津総合)

 多くの左腕投手が注目される今大会だったが、明暗がはっきりと分かれた大会となった。まずは大阪桐蔭に1失点完投、秀岳館にも9回二死まで無失点の投球を続けていた早川隆久木更津総合インタビュー)は、昨秋よりもボールの勢いが増し、スライダー、チェンジアップのコントロールが良くなり、投球において隙が少なくないっていた。今大会の活躍で、全国区の左腕へランクアップ。課題はストレートをもっとアップレベルアップできるか。それを果たしたとき、夏も快投が期待されそうだ。

 また市岡奏馬龍谷大平安)は球速自体、135キロ前後と突出したものではないものの、その球速表示以上に感じるストレートのキレは絶品。変化球の精度、コントロールの精度が格段に向上し、昨秋のように不用意な四球を出すこともなくなり、市岡に抱いていたイメージが完全に一変した。気持ちもみなぎった投球で、簡単には打たれない凄味があった。さらに夏へ向けてスピードアップすると楽しみだ。

 最速150キロ左腕・高山優希大阪桐蔭インタビュー)は本来の力を出すことなく終わった。140キロ台はたびたび記録していたが、目に見えて変わったと思わせるストレートはなく、調整が思うようにいかなかったことが考えられる。ただこれほどのスケールを持った高校生左腕はいないため、引き続きドラフト候補として注目される投手であり、春季大会、夏の大会では選抜よりも良い状態で投げてくれることを期待したいところ。

 鈴木昭汰常総学院)は最速140キロのストレート、縦割れのスライダー、チェンジアップの精度は良かったが、細かいコントロールを欠いた。ただボール自体は悪くはなかったので、春季大会でも引き続きマークされる投手であり、今後格段に成長した姿を見せていきたい。

 今大会屈指の大型左腕として期待された高橋昂也花咲徳栄)も140キロ台の速球が影を潜め、130キロ台が殆どだった。彼も昨秋よりも、開きが小さくテイクバックもやや小さくしたフォームに改造をしたが、完成度が100パーセントにならないまま大会を迎えた形だ。とはいえ、スカウトたちも彼のポテンシャルの高さは十二分に把握しているはずなので、春の県大会では復調した姿を見るために駆けつけることだろう。

 名前を挙げた左腕投手の実力はまだまだこんなものではないはず。ぜひ夏では「自分が主役になる!」というつもりで取り組んでほしい。

 下級生は130キロ後半の速球、キレのある変化球でベスト8に導いた神村月光滋賀学園インタビュー)、130キロ後半の速球を計測した左腕田浦 文丸秀岳館)も楽しみな投手だ。

 今大会、村上のような物凄い才能を秘めた投手ではなくても、投手としての技術をしっかりと押さえ、完成度あるピッチングを見せて、大会を制したのは、大きな意味がある。村上の投球は全国の投手たちへ勝つための投球はこうするべきと大きなメッセージとなった。大会を振り返ると、村上のように持ち味を発揮できた投手、出来なかった投手とそれぞれいるが、高校球児にとって一番の大会はやはり夏。夏でどれだけアピールできるか。今大会は気温が低い中での調整で大変だったはず。彼らはしっかりと100パーセントの状態に持っていけるように調整を行い、春季大会、夏の大会では選抜とは良い意味で別人だ!と思わせる投球を見せてくれることに期待したい。

(文・河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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