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2016年の高校野球を占う【愛媛編】「混戦模様に断を打つ存在は?2017年『えひめ国体』への胎動にも期待」

2016.03.21

 毎年、県民の大きな話題となる夏の愛媛大会。覇権の行方は現在、全く読めない。今治西の連覇か、昨秋四国大会4強の済美の復活か、それとも愛媛小松の覇権奪回か?さらに悲願の夏初優勝を狙う新田も有力。松山商などの動きも侮れず、4月から新たな動きも各所で・・・・・・。そこで今回は2017年「愛顔つなぐえひめ国体」への胎動や、注目選手も紹介しながら2016年・愛媛高校野球を占ってみたい。

昨秋県大会4強が中心も夏は混戦模様か

山内 敦也(今治西)

 2011年から甲子園に出場したのは、今治西(11年、12年、15年)、済美(13年)、愛媛小松(14年)の3校。近年の戦いぶりを見ると、より混戦模様に入りつつあることが分かる愛媛県高校野球。4年ぶりに県勢がセンバツ出場を逃したこともあり、その傾向は2016年にも引き継がれることになりそうだ。

 とはいえ、中心は昨秋県大会の4強になるだろう。優勝した今治西山内 敦也(3年主将・中堅手・右投左打・177センチ69キロ・えひめ西リトルシニア出身)、杉野 彰彦(3年・右翼手・右投右打・173センチ67キロ・今治市立西中出身)など甲子園での経験豊富な中心選手が軸。四国大会初戦で高松商(香川)に逆転負けを喫する一因となった精神面と「甲子園で勝つために必要だと思っている」(大野 康哉監督)投手力を整備して、2年連続の夏甲子園行きを目指す。

 準優勝の新田四国大会英明(香川)戦での20安打16得点、明徳義塾(高知)との打撃戦(試合レポート)が評価を受け、今治西をしのぎセンバツ四国地区補欠2位校に選出。四国地区屈指の遊撃守備を誇る三上 幹太(3年・右投両打・164センチ63キロ・愛媛ボーイズ出身)によるキャプテンシーの下、眞田 康弘(3年・中堅手・右投左打・174センチ68キロ・松山ボーイズ出身)、泉 政斗(3年・一塁手・右投左打・178センチ75キロ・松山中央ボーイズ出身)といった中距離打者たちがさらに確実性を増し、投手陣の整備がなされれば悲願の夏甲子園初出場も視野に入ってくる。

 昨秋、和田 蓮次郎(3年・遊撃手・右投右打・172センチ67キロ・高槻リトルシニア<大阪府>出身)を主将に強い気持ちで1年2ヶ月ぶり公式戦に臨んだ県大会3位済美四国大会高知商(高知)、鳴門(徳島)の左腕投手陣を攻略。惜しくもセンバツには届かなかったものの、同大会では4番・小山 一樹(3年・捕手・右投右打・180センチ90キロ・三田ボーイズ<兵庫県>出身)、2番・上田 貴宏(3年・三塁手・右投右打・168センチ67キロ・松永ヤンキース<軟式・広島県>出身)が本塁打を放ち、秋の公式戦通算打率も3割5分8厘と満天下に強打健在を示した。

 今後のかぎは四国大会で奮闘した左腕・菊池 怜雄(3年・左投左打・172センチ73キロ・宇和ボーイズ出身)に継ぐ2番手投手の育成。乗松 征記監督は、春には完全復活が見込まれる最速143キロ右腕・和合 寛征(3年・178センチ85キロ・佐伯ボーイズ<大分県>出身)に加え、高知中時代は外野手兼投手として2013年・文部科学大臣杯全日本少年春季軟式野球大会優勝に貢献した冨岡 優大(3年・右翼手・右投左打・178センチ81キロ)らの投手起用も示唆。夏までの完成度次第では3年ぶりの夏甲子園出場が見えてくる。

 昨秋は打線が振るわず、あと一歩で四国大会出場を逃した愛媛小松も、宇佐美 秀文監督の卓越した打撃指導が夏に向けて必ず効果を発揮するはず。投打の大黒柱・最速139キロの馬越 康輔(3年・投手・右投左打・165センチ68キロ・今治市立伯方中出身)と播田 大弥(左翼手・右投左打・164センチ60キロ・えひめ港南リトルシニア出身)の傍らに支柱やはりを建設できれば、再び愛媛小松の名が聖地に響く時がやってくるだろう。

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混戦に断を打つ注目選手たち

 3月11日(土)、香川中央高校グラウンドに衝撃が走った。冬は「ストレートの質を上げたい」と語っていた松山聖陵アドゥワ 誠(3年・投手・右投右打・196センチ83キロ・熊本中央リトルシニア<熊本県>出身)が英明相手に最速143キロ・13奪三振・2与四球のみでのノーヒットノーラン達成。「高めのストレートが伸びて、チェンジアップもよく、まったく手も足も出なかった」。英明の選手たちは口をそろえる。

 昨秋は中予地区予選初戦新田と激突し6回4失点で涙を呑んだが、この快挙により今後10月のドラフトまで「松山聖陵」の名が何度も踊ることは必至の情勢に。夏に松山聖陵と対戦する学校は戦々恐々としてアドゥワの投球を見ることになる。

 また、同日には西条森實 麟太郎(3年・投手・右投両打・180センチ78キロ・西条市立中出身)も自己最速にあと4キロと迫る136キロのストレートとスライダーが冴え、高松商(香川)を先発5回2安打無失点に封じる好投。全体にシュアなスイングで高松商浦 大輝(3年)から6回で6得点を奪った打線と共に侮れない存在になりそうだ。

糸川 亮太(川之江)

 混戦模様に断を立てる選手は愛媛県最東端の高校・四国中央市にもいる。最速137キロのストレートを見せ球に使い、ツーシーム、スライダー、チェンジアップなど七色の変化球で討ち取るのが糸川 亮太(3年・右投右打・169センチ63キロ・川之江ボーイズ出身)。懐の深さで安打を量産する日野 智也(3年主将・中堅手・右投左打・172センチ70キロ・新居浜ボーイズ出身)との愛媛県選抜台湾遠征コンビを軸に14年ぶりの甲子園を目指す川之江にも要注目である。

 台湾遠征での試合出場こそなかったが、国際経験を積んだ部分では松山工の体いっぱいを使って投げる左腕・田内 龍成(3年・投手・左投左打・163センチ59キロ・松山坊っちゃんボーイズ出身)、昨夏愛媛大会、中堅手のレーザービームを今度は遊撃手でも活かす石﨑 真継(3年・右投右打・167センチ62キロ・松山リトルシニア出身)両名も同様。また、松山商も愛媛県選抜主将の大役を担った門田 昂也(3年主将・三塁手・172センチ73キロ・右投右打・松山リトルシニア出身)がいる。スケールアップを果たした冬を経て、昨秋に一端を見せた強打がどのように進化しているかが楽しみだ。

 その他、聖地で2安打を放った有田 虎之介(3年・遊撃手・右投右打・163センチ60キロ・松山リトルシニア出身)をはじめ9名が昨年センバツをベンチで味わった松山東昨夏愛媛大会では粘り強い試合運びで61年ぶりにベスト4に進んだ松山北や曲者・今治北といった面々も虎視眈々と上位を狙う。

 愛媛北条の注目は左腕・渡邉 潤(3年・179センチ66キロ・左投左打・えひめ西リトルシニア出身)「腕を叩く意識とボールを隠す意識をこの冬取り組んだことで、クロスファイヤーがよくなってきた」。名将・澤田 勝彦監督も手ごたえありの表情である。

 右の大砲2門にも着目しよう。投手・一塁手・左翼手を兼ねる伯方の主砲・山岡 昂平(3年・右投右打・178センチ73キロ・今治市立伯方中)は、昨秋時点で高校通算21号をマーク。現役高校生四国No.1の本塁打数を、今度は公式戦で積み上げたいところ。東温の主将・エース・4番を張る丹 翔也(3年・右投右打・181センチ88キロ・松山ボーイズ出身)も昨秋県大会中予地区予選で[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]左翼席に突き刺した豪快な一発を再度見せてほしい。

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[page_break:4月から各所に新たな動き、そして2017年「えひめ国体」へ]

4月から各所に新たな動き、そして2017年「えひめ国体」へ

 このように、混戦に断を打てる注目選手目白押しの2016年。とはいえ愛媛県の高校野球は4月以降、大きく勢力図が変わる可能性も秘めている。というのも各所に新たな動きが生じるからだ。

 東予地区では新居浜東が普通科スポーツコースを新設。古くから個の能力が高い選手を輩出する新居浜地区選手の受け皿になれば、一気の躍進も考えられる。中予地区では男女共学化をスタートさせる聖カタリナが、昨秋北信越大会に65年ぶり出場を果たした小松(石川)の越智 良平監督を迎えて野球部をスタートさせる。すでに県内強豪との練習試合も多数組まれており、新入生たちにとっては格好の腕試しができそうだ。

 さらに南予地区の強豪・帝京第五では元千葉ロッテマリーンズ投手、帝京(東京)コーチ時代は横浜DeNAベイスターズの守護神・山﨑 康晃をはじめ、数々の個性的投手を育て上げた小林 昭則氏の新監督就任が決定的な状況となっている。大型右翼手の大本 将吾(3年・右投左打・185センチ87キロ・西条リトルシニア出身)をはじめ、打撃には一定の力がある一方で、投手力にやや不安を抱える現在の帝京第五。確かな人材と確かな指導による彼らの化学変化を長い目で見たい。

 来年の話も最後に。2017年はいよいよ[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]で「愛顔つなぐえひめ国体」高等学校野球(特別競技・10月6日~9日)が開催。本来、順番で言えば高知県開催となる秋季四国大会が愛媛県開催となるのも、同国体のリハーサル競技を兼ねているからだ。

「野球王国」を名乗るホスト県として、来年夏の選手権愛媛大会優勝校が出場する大会における上位進出は至上命題。そのためには今年から2年生以下の選手が奮起し、全国で伍してもひけを取らない実力を身に付けることが必定となる。

工藤 耀介(新田)

  県大会4強勢では今治西金本 遼(2年・投手・右投右打・176センチ67キロ・今治市立北郷中出身)、藤原 拓実(2年・投手・右投右打・183センチ82キロ・今治市立大三島中出身)、村上 幹英(2年・三塁手・右投左打・175センチ60キロ・西条リトルシニア出身)。新田藤 友暉(2年・投手・右投右打・177センチ61キロ・松山市立余土中出身)、黒川 貴章(2年・三塁手・右投右打・178センチ69キロ・愛媛ボーイズ出身)、工藤 耀介(2年・右翼手・左投左打・172センチ70キロ・松山ボーイズ出身)。済美宇都宮 佑弥(2年・一塁手・右投右打・175センチ90キロ・愛媛松山ボーイズ出身)に八塚 凌二(2年・左翼手・右投右打・175センチ71キロ・新居浜リトルシニア出身)、愛媛小松の大谷 一太(2年・三塁手・右投左打・175センチ64キロ・佐用スターズ<ヤングリーグ・兵庫県>出身)。

 さらに愛媛北条の西本 祥大(2年・一塁手・右投右打・187センチ97キロ・えひめ港南リトルシニア出身)、松山工貞廣 竜宇(2年・投手・左投左打・172センチ67キロ・松山リトルシニア出身)、松山商山本 寛大(2年・投手・右投右打・172センチ64キロ・伊予市立伊予中出身)、宇和島東加藤 大輝(2年・中堅手・右投右打・177センチ71キロ・宇和島市立広見中出身)らに続く「えひめ国体世代」の台頭も2016年、注目していきたいところ。

 このような切磋琢磨の中で各校が成長し、「愛媛県」の名を背負った学校が愛媛選抜チームに続く快挙を聖地で成し遂げることができるように、えひめ球児とそこにかかわる皆さんにはぜひ志高く、自己を研鑽する作業に邁進してもらいたい。

(文・寺下 友徳


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2016年度 春季高校野球大会特集

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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