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2016年の高校野球を占う【徳島編】「全国で勝ちにいく」鳴門、「阻みに行く」逸材たち

2016.03.19

 徳島大会5連覇ばかりでなく、春1勝夏ベスト8国体ベスト4を全国で刻んだ2013年以来の「黄金期復活」へ燃える鳴門に対し、全国でも戦える逸材が散らばる他校が鳴門を阻止しに行く構図。そんな2016年の徳島県高校野球について、注目選手も紹介しながら占ってみたい。

前人未到の徳島大会5連覇と3年ぶり聖地勝利目指す鳴門

河野 竜生(鳴門)

鳴門の5年連続甲子園出場なるか」
2016年夏・全国高等学校野球選手権徳島大会のテーマは間違いなくこの1点に絞られるだろう。あの名将・蔦 文也監督時代の徳島池田ですら徳島大会での連続Vは19861988年の3連覇まで。昨年、19972000年徳島商に並ぶ史上2校目の快挙を成し遂げた彼らは今年、前人未到の大記録に挑戦することになる。

 その鳴門は他を大きく凌駕する戦力を有する。投手陣では1年夏からエースの座を守る河野 竜生(3年・172センチ72キロ・左投左打・鳴門市第二中出身)をはじめ、森脇 稔監督も合格点の評価をしているサイドハンド・尾崎 海晴(3年・175センチ77キロ・右投右打・鳴門市第一中出身)に最速138キロまで伸ばした松本 凌斗(3年・右投右打・172センチ67キロ・鳴門市立大麻中出身)。これに春の県大会での登板が見込まれる最速146キロの長身右腕・中山 晶量(3年・右投右打・186センチ75キロ・生光学園中<ヤングリーグ>出身)が状態を取り戻せば、先発・中継ぎ・抑えの完全分業制も実現可能だ。

 またこの冬の鳴門は、昨秋四国大会2回戦で済美(愛媛)に2安打完封負けに終わった反省を踏まえ、「振る力を付ける」と同時に森脇監督就任後はじめてとなるチーム全体での加圧トレーニングを実施。その結果、手束 海斗(左翼手・3年・171センチ81キロ・右投右打・鳴門市立大麻中出身)や強肩捕手・佐原 雄大(3年・右投右打・176センチ88キロ・徳島ホークス<ヤングリーグ>出身)に続き、鎌田 航平(3年・二塁手・180センチ68キロ・右投左打・上板町立上板中出身)も主軸の輪に加わる勢いを見せている。

「最終学年の結果がお前らの結果」と選手たちに厳しい発破をかける指揮官に、選手たちがどのような化学反応を見せるか。鳴門にとっては夏までにいかなる進化を遂げられるかが、5連覇の先にある3年ぶり甲子園勝利。そして「黄金期復活」へのかぎである。

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鳴門に立ちはだかる逸材たち(昨秋県大会ベスト4勢)

武岡 大聖(生光学園)

 これに対し、「ストップ ザ 鳴門」に燃える各校は、逸材たちの力とチーム力の融合を図ろうとしている。

 その逸材たちを昨秋四国大会出場校からあげていくと、昨秋県大会準優勝の徳島城南は強打の4番、「春からは捕手から右翼手へのコンバートを予定している」(島 一輝監督)佐尾山 遼(3年・176センチ69キロ・右投右打・176センチ69キロ・徳島中央リトルシニア出身)とエースの大東 右頌(3年・右投右打・175センチ65キロ・徳島阿南シティーホープ<ヤングリーグ>出身)。3位の徳島池田では高松商浦 大輝から4打数4安打の松岡 翔(3年・三塁手・右投左打・173センチ65キロ・美馬市立脇町中出身)や昨秋公式戦打率5割を超えた恐怖の7番・西岡 侑輝(3年・左翼手・左投左打・172センチ70キロ・三次市立池田中出身)がその候補生である。

 現在進行形のタレントを多数有するのが昨秋県大会4位の生光学園。3月11日(金)にセンバツ連覇を狙う敦賀気比(福井)を相手に戦った練習試合でその片鱗を見せた。昨秋県大会3位決定戦で最速138キロ・中辻 颯(3年・右投右打・168センチ64キロ・大阪中央ボーイズ<大阪府>)の右ひじ故障により急遽投手転向となった先発の最速137キロ右腕・黒石 真生(3年・投手兼三塁手・右投右打・176センチ76キロ・忠岡ボーイズ<大阪府>出身)は、ほぼベストオーダーの敦賀気比打線を7回まで5安打無失点に抑える好投。中辻も1回無失点で実戦復帰初登板を飾っている。

 打線に目を転じても4番の武岡 大聖(3年・右翼手・右投左打・176センチ91キロ・徳島ホークス<ヤングリーグ>出身)が右中間最深部に飛ばす高校通算19本目となる120メートル弾。この冬に中学部監督から総合コーチに就任。「打撃にゲージの横についてアドバイスをしてもらっている」(河野 雅矢監督)元読売ジャイアンツ・大洋ホエールズ(現:横浜DeNAベイスターズ)で「左殺し」と恐れられた平田 薫コーチの指導が早くも現れた格好だ。

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昨秋県大会ベスト8以下でも「変えられる」要素あり

増田 将馬 (徳島商)

 昨秋県大会ベスト8以下のチームにも逸材は散らばっている。投手陣は2年生で早くも最速144キロを叩き出している板野森井 紘斗(右投右打・183センチ86キロ・徳島中央リトルシニア出身)を筆頭に、鳴門渦潮の最速140キロ右腕・近藤 壱来(3年・右投右打・176センチ71キロ・阿南市立第一中出身)。身体のバランスに優れ最速138キロを出すのは四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックスから巨人に育成選手として進んだ増田 大輝の実弟である徳島商増田 将馬(3年・右投右打・177センチ68キロ・徳島市立南部中出身)だ。

 また、海部には最速136キロの石本 光紀(3年・右投右打・178センチ68キロ・海陽町立宍喰中出身)。この冬、日産自動車・パナソニックで監督を務めた久保 恭久氏から左腕の心得を受けた新野任介 澪志(3年・左投左打・170センチ60キロ・阿南市立阿南中出身)も、中山 寿人監督から「クロスファイヤーがよくなってきた」と一定の評価を得るに至っている。

 野手では俊足外野手の3人をまず挙げておきたい。森下 義伸(3年・中堅手・右投右打・171センチ64キロ・東みよし町立三加茂中出身)は、昨年11月開催の「徳島県体力・技術向上研修会」で歴代2位となるベースランニング13秒89を記録したスピードスター。城東のリードオフマン・藤原 晴陽(3年・中堅手・右投右打・180センチ67キロ・徳島市立八万中出身)や、板野八木 紳吾(3年・右翼手・右投左打・173センチ61キロ・北島町立北島中出身)はベースランニングの速さに目を見張るものがある。また、徳島商齋藤 広夢(3年・三塁手・右投左打・178センチ78キロ・徳島松南<ヤングリーグ>出身)のバットコントロールは必見の価値ありだ。

 これらに加え、サイズの大きい徳島北やチーム力の川島富岡西徳島市立穴吹阿波は爆発力がある。さらに春季県大会は対外試合停止期間中のため、最後の夏に全てをかける徳島科学技術も状況を「変えられる」力を持っている。もし「鳴門優位」の均衡が崩れた場合、徳島県高校野球は一気に戦国時代へ突入することになるだろう。

(文・寺下 友徳


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2016年度 春季高校野球大会特集

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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