2016年の高校野球を占う【長野編】「全チームが横一線の長野県を抜け出すチームは??」
北信越地区内でも激しい争いが繰り広げられている長野県。伝統校・新鋭校がひしめきあっており、今年も横一線の予想となっている長野県を占っていきたい。
長野勢 北信越でも健闘
3年ぶりに長野県から選抜甲子園への出場がなく、全チームが横一線のスタートを切っている。しかし昨秋の北信越大会では、県優勝の長野商業と県準優勝の佐久長聖がそろって2勝し準決勝に進出。選抜を決めた福井勢とも好ゲームを繰り広げており、長野県内では今季も高いレベルでの激しい戦いが予想される。
押さえておきたいのが、昨秋の県上位校でエース格が本調子でなかったチームが多かったこと。優勝した長野商は、前チームから経験豊富な左腕・中野 太輔が腰痛で出遅れたが、制球のいい富岡 優馬が救世主となり、抑えの曺 瑛敏と3人の継投がうまくはまった。
佐久長聖はエース小林 玲雄が県大会序盤で膝を負傷。北信越大会も万全ではなく、2番手の左腕森本 雄河が130キロを超える直球で代役を果たし、準決勝の敦賀気比戦でも粘投した。
県3位で北信越大会に進んだ松商学園は、前年の選抜でも登板し主戦の期待が掛かっていた徳田涼介がフォームバランスを崩し不調。投手陣のやりくりに最後まで苦労した。
草海 光貴(上田西)
昨年夏の甲子園初戦で2年生ながら完封勝利を挙げた上田西は草海 光貴が健在。しかし夏からの心身の疲労もあってか、トップギアに入りきらず、県準々決勝で長野商に2対4と押し切られた。
このほか県8強の東京都市大塩尻の左腕エース石田 航大が左肩の故障からこの冬復帰した。各チームとも打力にそれほど大きな差がないため、エース格の復調ぶりが今季の出来を左右しそうだ。
名将が帰ってくる!
県内甲子園最多勝監督が帰ってくる。1991年に上田 佳範(DeNAコーチ)を擁して選抜準優勝するなど、長野日大時代を含め甲子園14勝の中原 英孝氏が、開校したばかりの長野日本ウェルネス高校信州筑北キャンパスの監督に就任。この4月に新入部員が集まったところで県高野連に登録申請し始動する。夏の大会には初陣に臨めるだろうか。
長野俊英には昨秋、元NPB選手が監督に就任。長野県内でNPB経験者が監督に就くのは初めて。元ロッテ捕手でパ・リーグ審判員も務めた桃井 進監督(長野県出身)が、1、2回戦敗退が常連のチームをどう成長させるか注目される。
21世紀枠候補の最終9校に残った長野は、惜しくも落選。31年ぶりの選抜出場はかなわなかった。昨年秋は県ベスト4入りし、文武両道の取り組みが評価されての候補推薦。落選校は春、夏と苦戦する傾向があるが、エース待井 壮一郎を軸に力のある打線でジンクスを打ち破りたい。
甲子園完封右腕が健在
元山 飛優(佐久長聖)
昨年夏の甲子園で最速143キロを記録した上田西のエース草海 光貴。168センチの小柄な体格で体が出来上がっていないだけに、原 公彦監督もまだ球速は伸びるとみている。また草海は打撃も非凡。県準々決勝の長野商戦では反撃の一発も放っている。勝負どころの集中力は実証済みで、今季もチームは草海を中心に回っていくことになりそうだ。
佐久長聖のショート元山飛優は、攻守でセンスの高さが光る。1年夏からサードでスタメンを張り、甲子園にも出場した。ショートに入っても前に出るスピードと正確なスローイングは群を抜く。打者としても3番に入り、アベレージを残す中距離ヒッターとしてけん引。そして主将も務める絶対的なチームの柱だ。
長聖、長商、上田西 止めるのはどこだ?
過去4年間、佐久長聖と上田西が交互に夏の大会を制し、甲子園に出場している。特に佐久長聖は、藤原 弘介監督が就任して以来、夏に関しては4年連続で決勝進出を果たし、夏に合わせた強さを持っている。その佐久長聖は今季も優勝争いの中心になりそう。左右の二枚看板を軸にした守備力は県内屈指。破壊力がある中軸打線と機動力野球が機能するかが覇権奪還の鍵となる。
佐久長聖の対抗となるのが長野商と上田西。長野商は中野の回復が大きい。富岡もスケールアップしており、こちらも左右の2本柱が心強い。昨秋は驚異の集中打を見せて県を制した打線は、冬の体力づくりでさらにパワーアップした。長野商にとって質量とも充実した最上級生学年だけに期待も高い。
上田西は草海を助ける2番手以降の成長が鍵を握る。昨年1年生ながら甲子園でも放った上田西工藤 陽平は球威が増した。左腕の坂本 貫太(新3年)は制球がまとまってきた。体格に恵まれた選手が多い1年生が一冬越してスタメン争いに加わってくると秋とは違う上田西になる。
この3校にストップをかけていくのが、秋3位の松商学園、8強の松本第一や東京都市大塩尻などだ。松商学園は投手陣の整備に浮沈がかかる。経験豊富なエース格徳田の復調は好材料だ。
準々決勝で佐久長聖に競り負けた松本第一も投打に力を秘める。投手は経験豊富な左の吉原 快と190センチ右腕若林 洸、打線も3番牧 秀悟と4番新山 進也の強力な柱が健在。
エース石田を故障で欠きながら本来捕手の原 航大が投手の代役を務め切った都市大塩尻は秋からのマイナス要因が見当たらない。投手の底上げが進み、けがから回復中の原は攻撃面でもプラスになると見られる。
この冬は長野県も暖冬で、例年になく1月中旬までグラウンドでボールが使えた。とはいえ寒い信州での地道な冬の練習は、春以降の戦力に大きく影響する。昨秋の上位校が軸になりながらも突き抜けた存在はないだけに、特に番狂わせが起きやすい大会序盤に注目したい。
(文・小池 剛)
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