9年で5人の内野手をプロへ輩出した國學院大コーチが伝授する知られざる基本【vol.1】
ゲームメイクを行う上で、内野手の守備力向上は欠かすことのできないテーマだ。今回は内野守備の基本的な考え方・技術についてアマチュア球界の名コーチにお話を伺った。
國學院大の上月健太コーチ(八幡商出身)は、守備の名手として國學院大、社会人野球の東海REXで活躍された後、母校の國學院大学のコーチに就任。2012年以降は、谷内亮太選手(日本ハム、金沢西出身)や山下幸輝選手(DeNA、関東第一出身)、柴田竜拓選手(DeNA、岡山理大付出身)に山崎剛選手(楽天、日章学園出身)など、守備に定評のある選手を次々とプロに送り出し、昨年のドラフト会議でも小川龍成選手(前橋育英出身)が千葉ロッテマリーンズにドラフト3位で指名を受けた。
そんな上月コーチには、守備における基本的な技術とその練習方法を伺った。まず第1回目の今回は、ゴロに対して近づいていくところから、捕球するまでのポイントだ。内野手にとって勉強になる話ばかりなので、是非最後までご覧頂きたい。
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國學院大・上月コーチが伝授する「握り替え」の3つのポイント【vol.2】
ゴロに近づく際のポイント
内野守備を局面ごとに見ていくと、まずゴロに対して近づいていき捕球、握り変え、スローイングと続いていく。まずは最初の局面である、ゴロに近づいていくところのポイントを伺っていく。
ゴロに近づいていく際に、よく耳にするのが「ゴロに対して右から入っていく」という指導だ。一塁へのスローイングに繋げるために重要であるようにも思えるが、上月コーチは無理に右から入る必要はないと解説する。
「基本的には、まずはボールに対して右から入るという意識よりも、ボールに対して真っ直ぐ動いた方が良いと思っています。少し右から見る意識も持ちますが、しっかり右からいこうとし過ぎると行う作業が増え過ぎてしまいます。直線で入っても、自分の左側(例えば一塁方向)に投げるのであれば、直接入っても投げやすいのかなと思います。
その際に注意すべきことは、ボールにぶつかるのも良くないですが、待っていてもあまり良くありません。まずはボールに寄っていくこと意識して、そこからボールにぶつからないように自分で減速して向こうから来るのを待つか、来ないのなら寄っていくか、ある程度まで寄っていきながら合わせるのか。そういったところを意識しながら対応していきます」
重心が右側にあった方がチャンスがある
國學院大学では、ゴロの捕球というよりも足の運び方や加速と減速のアジリティを練習の中で大切にしているという。ボールへの合わせ方を間違うと、動きが止まってしまいその後のの動きに繋がっていかない。ゴロに上手く合わせることは、捕球からスローイングまでを一連の動きでスムーズに行うことに繋がるのだ。
「ゴロに近づくときに、重心が右側にあった方がチャンスがあります。左側に重心があるとほぼチャンスがないので、左の時間よりも右の時間が長い方がいいなと思います。ステップの際には、右足がどのように支えているがポイントなので、いつも選手にも右足が大事と伝えています。
ステップは「2スキップ」と呼んでいるのですが、「パパン、パパン」というタイミングで捕球します。1回目のステップで捕球し、2回目のステップで送球に繋げるイメージを持ってもらえたらと思います」
グラブの捕球するポイントは3つ作る
そしていざグラブで捕球する際、上月コーチは捕球するポイント(ポケット)を3つ持っておくと良いと話す。基本はグラブの薬指の付け根の辺り、素手で見ると薬指の中央辺りのポイントだ。またシングルキャッチでは、グラブのウェブ部分の根っこ、親指、人差し指、中指の三本の指で捕球する意識を持つと良い。
またこの二つのポイントの中間辺りにも、捕球のポイントを作っておくと捕球がズレてしまった時にも対応できる。この3つのポイントを普段のキャッチボールから作っておくと、実戦でも対応できるグラブにできると上月コーチは語る。
「できればキャッチボールの時に、逆シングルで当てるようなイメージ作りをした方がグラブにもいいと思います。そうすると、クラブを握らなくてもボールが収まるような位置作りができると思うので。あまり『グラブの型を作る』といった意識を持たなくても、ここに通していけばパーンと鳴るようなグラフ作りをしておくと、勝手に捕球のポイントは出来ると思います」
(取材・執筆=栗崎 祐太朗)
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