目次

[1]根拠のある奇跡を
[2]新チームのテーマは「愛」相思相愛の監督と選手たち
[3]二流魂を培って相手に対応し、自分たちの野球を

「17人で挑む最後の夏〜根拠のある奇跡を〜」

 今春の関東大会浦和学院が二季連続関東大会優勝を決めた。投打の総合力が高く、さらに安定した試合運びに王者の貫録さえ感じさせ、春夏連続の甲子園出場へしっかりと標準を高めている。さらに各校のレベルは高まっており、今年の埼玉は混沌したものとなっている。

 そんな中、選手17人でこの夏、甲子園を目指して挑むのが、春季埼玉県大会で強豪を次々と破り、ベスト4に進出した東京成徳大深谷である。彼らは昨年4月に野球部の練習グラウンドを失った。そして野球部希望の生徒を勧誘しなかったこともあり、この17人はすべて3年生である。普段は公共の球場やバッティングセンターを借り、練習場所を点々とする毎日。

 グラウンドがあるのが当たり前だった環境から一変して苦しい環境の中でも春季大会、チーム歴代最高のベスト4の成績を残した要因、チームの現状について、選手、泉名智紀監督が話す「根拠ある奇跡」を起こすには何が必要なのかを語っていただきました。

根拠のある奇跡を

有賀洋志トレーナーの話を聞く選手たち(東京成徳大学深谷高等学校)

「『数が勝負だ』って言えなくなっちゃったのはホント辛いですよね。グラウンドがあればいろんな時間も取れる」
こう語るのは、東京成徳大深谷を率いる泉名 智紀監督。実は昨年、野球部のグラウンドとして使用していた土地を諸事情で返さなくてはいけなくなったため、現在グラウンドが無い。練習は、各地の球場やバッティングセンターを借りたり、練習場所が無い日は、砂利の駐車場の上で行うこともある。

 これまで泉名監督は選手に、「量より質。でも質は量からしか生まれない」ということと「高校野球に奇跡は無い」ということを口すっぱく伝えてきた。その考えを根底から覆されてしまった今、どのような指導を行っているのか。
「グラウンドも無いですが、生徒は一生懸命やっていて。どういうところを目指すんだって話し合いをしたら『甲子園に行きたい』と。だから『根拠のある奇跡を起こそう』ということをテーマに取り組み始めました」

「根拠のある奇跡を起こそう」を合言葉に、選手達は春季大会で勝ち進む。
春季大会ベスト4で決して満足をしている訳ではないんですよ。高校野球なんだから1番にならなかったら、2番も最下位も一緒だと。甲子園に行けるのは1番だけ。
とは言うもののベスト4はうちの中で過去最高の成績なんで、良い意味で雰囲気が変わったのかもしれない。せっかく自分たちで勝ち取ったベスト4だから、それに値するチームであったり、値する人間になれるかどうかが大切です」

 選手たちは1分1秒でも無駄にできない。練習場所へ移動する際のバスの中では、練習内容を決める選手の真剣な顔があった。
監督自らバスを運転しながら、選手たちの話し合いに耳を傾ける。

 練習に向かうバスでは、これまでの試合や課題に対して、なぜできなかったのかを全員で徹底的に話し合い、帰りのバスでは、1日の反省を話し合う。限られた練習時間を精一杯使って、今自分たちにできる最大限の努力をしていた。練習終了後には、学校で有賀 洋志トレーナー指導のもと自分たちで工夫して作られたトレーニング用具で汗を流す。17人が声を掛け合いながら徹底的に鍛え抜いてきた。

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