前橋育英高等学校(群馬)【前編】
2013年夏の甲子園覇者・前橋育英。
当時、2年生エースだった高橋 光成(埼玉西武ライオンズ・ドラフト1位指名)(独占インタビュー・2014年8月29日公開 8月30日公開)を擁して、夏の群馬大会を勝ち上がり、見事、甲子園初出場を決めると、勢いそのままに、全国優勝を成し遂げた。
また、当時のキャプテン荒井 海斗は、荒井 直樹監督の息子ということもあって、“親子鷹”としても、一躍、注目を集めた。
今夏は群馬大会3回戦で、健大高崎に敗退するも、秋の群馬県大会では準優勝。彼らの強さは健在だった。それでも、この夏に引退した3年生も、また、現在の1、2年生の選手たちも、ずっと追い求めているチームがある。
それはあの夏、日本一に上り詰めたキャプテン荒井 海斗が率いていたチームだ。そして、その当時の練習での雰囲気は、今も受け継がれている。
選手間での会話の多さは日本一
練習中に選手間で会話
内野と外野、また投手陣との連携も含めて、実際の試合ではコミュニケーションがすごく大事になってくるので、こういった会話は必要だと感じています。入学してすぐの頃は、『一日の練習の中で会話をすることが多いな』と思いましたが、いまはもうこれが当たり前に感じています」
会話を重ねる中でチームのセオリーが生まれる
練習中、仲間の好プレーには笑顔で称える
実際に、この日の練習でも、グラウンドでは、こんな言葉が飛び交っていた。
「生きた声をもっと出そうぜ」
「もっと会話しよう」
そんな後輩たちの練習をみながら、この夏に引退した前キャプテンの工藤陽平は、こんなことを教えてくれた。
「僕たちが表現している“会話”というのは、難しいことじゃないんです。野球の場面で自然に起こりそうなことを、事前に気付いた選手が声で伝えてあげたりするだけ。例えば、ノーアウト一塁の場面では、ピッチャーに『バントあるぞ』とか、その場面で自然と起こりそうなプレーを周りに声を掛けたり。
他にも、2アウト二塁の場面であれば、外野がエラーした時に4つで刺せないので、打ったランナーを刺せ!とか、そういうミスしたあとの声掛けだったり、試合の中で起こりそうなことを練習中から、みんながお互いに声掛けをする。その雰囲気は、常に練習の中にあります」
また、練習でお互いに会話をしていくことで、『自分たちのセオリーを生み出すこともできる』と、荒井 直樹監督は語る。
「試合でも練習でも、何か問題があったときに流さずに、そこで会話をして、『こうやってやったほうがいいよな』とか話す中で、最終的に選手たちでチームのセオリーを作っていったほうが良いと思うんです。選手で話し合った結果、『じゃあ、うちはこういうふうにやろう』と見つけていくことが僕は本当の練習だと思っています」
例えばシートノックの練習の時に、カットに入る選手が、本来の野球でのセオリーであれば『このポジションの選手がカットに入るもの』だとされていても、前橋育英の場合は、この選手のほうが肩が強いから、この距離ならここのポジションの選手が一人でいったほうがいい。この選手だとここだと届かないけど、でもこの選手なら届くんじゃないか。そんな会話を重ねる中で、その年ごとのチームのセオリーが出来上がっていく。
そういったセオリーを作るために、毎日練習をする中で、仲間のコンディションをみたり、仲間の肩の強さをみるということが大事になってくるのだと、荒井監督は話す。
「選手によって、投げる時にシュートする子もいれば、いろんな球種の子がいるわけじゃないですか。だから、日頃の練習からそういう意識をちょっとしておくだけで、実際の試合においての準備が出来るわけですよね。
そのためにも、普段の練習の中で、コミュニケーションを取る。つまり、会話をしていく。そういうふうにやるといいんじゃないかなと思いますね。
ただ、それはどこのチームでも同じで、小学生でもプロ野球のチームでも一緒。コミュニケーションを取りたいっていうのは、コミュニケーションを取ることを意識するんじゃなくて、何か気付いた時に会話をすることだと思うんです」
(後編に続く)
(文・安田 未由)
前橋育英が日本一に輝いた2013夏の主将・荒井海斗が3年間書いた野球ノートとは?
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