Column

県立松山東高等学校(愛媛)【後編】

2014.12.02

 愛媛県を代表する伝統校・松山東。63年ぶりの愛媛大会決勝進出、四国大会出場を果たし、復活を印象付けた。その秘訣として、意識が高い選手たちが中心となって早朝練習だ。さらに力を発揮するために選手間でのミーティングがカギを握っている。後編は松山東のチーム力を押し上げるミーティングの内容に迫った。

選手ミーティング、LINE、etcから朝練習・自主練習・戦術化へ

選手間ミーティング

「全体練習後には時間が特にないとき以外は、毎日選手だけでのミーティングをします。内容は試合翌日には試合の反省や連絡事項、僕だけでなく、意見がある選手が練習の中から家での自主練習につながることを話すようにしています」(2年主将・米田)
「監督さんと選手が考えていることが一致できるように、橋渡しになることを話しています」(2年・副将・二塁手の松下 洸貴

 朝練習、全体練習に加え松山東のチーム力を押し上げる三本目の矢、それが全体練習後の自主練習である。

「昨年12月から約2時間、ジムでのトレーニングをしています」(亀岡)、「近所にある神社の階段を週2回登ったり、短距離ダッシュや速振りに取り組んでいます」(1年・三塁手の有田 虎之介)、「動画を見ながらフォームの向上に取り組んでいる」(2年・投手兼右翼手の羽藤 大晟)など、自主練習の負荷や内容は異なるが、全体練習後の選手間ミーティングが自主練習への課題を明確にする機会、さらに翌日の朝練習へつなげる貴重な時間であることには変わらない。

 彼らは同時に同学年での交流も密に行った。9人の2年生選手は少人数の利点を活かし、時には焼肉を囲みながら「厳しく言い合っても大丈夫になれるように」(米田)親交を深めた。一方、27人の大人数で同時交流が難しい1年生選手は文明の利器「LINE」のグループトークを使用。「1人1人の個人目標を最初に言って、練習での課題や目標への達成度をお互いに注意していく」(1年・左翼手の向井 飛雄)ことで、チーム内の一体感を保った。

 こうしてまずは個人スキルの高め方を統一した松山東。秋季大会を前に選手間ミーティングは「粘り強い試合をするために、どう闘うか」(亀岡)に特化していく。データを分析する中で選手間での意思と堀内監督の考えをすり合わせ、チーム戦術を決定する動きが生まれた。

 夏のリベンジ戦となった秋季県大会準々決勝・愛媛小松戦が最も象徴的である。

「愛媛小松は試合を見ていると中盤以降に力を出すので、亀岡を先発させてつないでいく形では勝ち目はない。ですので、投げたい意思を持って準備していた羽藤を先発させて、1イニングでも多く投げる形をとった」
あらかじめ向井ら電脳系1年生をリーダー格にデータ班が集めた「打者の特徴や配球や癖など」の特徴に基づき、「先発・松井 智也(2年)のシンカーを捨てる」攻撃面との二本柱で指揮官が大まかな指示を出す。

 続いて選手たちは全体ミーティング後、「4番の大上 拓真(3年・捕手)に対し、厳しく攻めることを心がけた」先発・羽藤や亀岡、米田が入るバッテリーミーティング、内野手ミーティング、外野手ミーティングの3つに別れてそれぞれの役割を再度徹底した。

「自分たちが強烈でないことは判っているから、コツコツやれる」(堀内監督)選手たちの意図を持った努力は序盤に松井を攻略。羽藤が4回2失点で踏ん張っての4対3と勝利につながることになった。

チーム内 コミュニケーション術

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現状に留まらず、行動力でチームを動かす

体幹トレーニングに励む選手たち

 こうして、選手たち発案のよき習慣を伝統とし、さらに思考を加えることで63年ぶり4回目の秋季県大会決勝進出秋季四国大会出場を決め、次なる伝統を創った松山東。彼らは2014年冬、秋季四国大会1回戦で甲子園常連の鳴門に2対5で敗れた悔しさを踏まえ、「全国・四国レベルとの差を埋める」という新たな目標へ向かってすでに走り出している。

 四国大会での宿泊は同ポジションの1年生と2年生を同じ部屋割りに設定。「このチームは1年と2年の縦のつながりをつくれば、もっと向上する可能性がある」とエース亀岡も、一定の手ごたえを感じている。

 トレーナーとして松山東雲高校女子バレー部(先月、春高バレー2年連続出場決定)、男子ソフトボール。ウエストSBC(昨年度ソフトボール全日本クラブ男子選手権大会優勝、今年度同大会準優勝)などの指導実績を有し、「ひまわり整骨院」院長を務める川中 大輔氏を外部コーチとして11月より行っている「体幹トレーニング」もその一環。実はこれも選手発案である。

「キャプテンの米田が砥部リトル時代から川中さんと知り合いで、米田からの発案で始めました。これをすることで体重管理への意識も高くなっています」(堀内監督)

「四国大会に出る他校は圧倒的に練習量が多い。その分、ウチは練習時間が短くても質を上げる必要性は常々全員が判っていたと思う。球際の足腰の弱さを直すための鍛え方が判ったことは収穫ですね」と松下も成果への期待を抱きながら、トレーニングに励んでいる。

 一方、「野球に連動した専門的な動きを川中さんからは教わっていたし、鳴門と対戦した四国大会で身体づくりをしないとプレーの質が上がらないと感じたので、お願いすることにしました」と、米田主将からの要請を受け、招聘された当の川中氏。「聴く能力があるので、同じことを2回言う必要がない。吸収力は速いです」と彼らの意欲に驚きの表情を隠せない。

 先月には愛媛県高野連から「一般枠」及び「21世紀枠」センバツ推薦を受け、周囲の喧騒も高まりつつある松山東。それでも彼らは今日もコミュニケーションを軸に新たな伝統を創り続ける努力を怠らない。

「愛媛県で3つしかない甲子園に行くチャンスを頂けていることはありがたいこと。その可能性がある中で最初の1ヶ月で甲子園を見据えた精神・メンタルを鍛えて追い込める態勢を整え、亀岡を助けるために5点取れる打線になれるよう、レベルを引き上げていきたい。自分たちで野球を勉強して、頭を使って『全国で戦う野球』を目指していきたい」

『フルタの方程式』を読書の時間に読んでいる米田の言う通り。いわば、その結晶が松山東野球部の「がんばっていきまっしょい」なのである。

(取材・文 寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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