第140回 岩津高等学校(愛知県)2014年05月29日

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[1] あえて「声を出せ」と言わない
[2] 戦術を徹底し攻め続け勝利を手にした豊川戦
[3] 高校生は自信でガラリと変わることができる

 この春季愛知県大会では、センバツベスト4に進出した豊川を下すなどの殊勲で、準決勝進出を果たした岩津。それまでは、高校野球としてはまったくの無名校だった。学校としても、まずは生活指導に重点を置くところから始めるなど、どちらかというと地域では指導困難校という位置づけでもあった。そういう状況でありながら、強豪ひしめく愛知県大会4強入りという結果を出した。その背景には何があったのか——。

あえて「声を出せ」と言わない

シートノックも声出しにはこだわらない

 もしかしたら違和感を抱く人もいるかもしれない。多くの高校野球部、とくに有力校や強豪校と言われている学校では、グラウンドではひっきりなしに選手たちが声を掛けあい、話を聞くのも大変だという状態になることもしばしばだ。
 そういう先入観からすると思わず、「愛知県のベスト4のチームのシートノックがこんな感じでいいのか」と思ってしまう。それくらいに練習は静かで、選手たちは声を出さない。声を出さないというよりも、声を掛け合わない。

 かといって、社会人野球チームのような大人びた雰囲気で、中継の指示の声以外に無駄なことを言わないというスタイルでもない。少し不思議な雰囲気である。

 もちろん、声を出さない方が良いという訳ではない。いかにしてベストな力を出させるか、指揮官たちが悩み、たどり着いた結論なのである。
 多くの人が、「高校野球とはこうあるべきだ」という理想があるだろう。しかし、岩津の現実は、そんな理想からは縁遠い状況から始まっていた。まずは普通に野球をすることを目指したのである。

「私自身、正式教員としてはここ(岩津)が最初だったんですが、その前には講師をしながら佐織工起工でコーチをしていました。そこでは、きちっとした野球を目指してやっていたのですが、岩津では、まずは部員9人揃えるところから始まりました」

 丘監督の赴任してきた7年前、野球部は活動するのが精一杯という状態だった。グラウンドは、学校の校舎を通り越して小高い丘の上に校庭として存在している。しかし専用球場ではなく、体育でも使用するということもあって、黒土も入れられているものではない。
 キャッチボールが精一杯の選手たち、十分でない練習環境、地元からのバックアップもない。そんな「荒れ地」に丘監督は鍬を入れたのである。
 丘監督も赴任当初は、「生活指導がメインだった」というくらいに、学校そのものも乱れていた。そうした中で、何とか野球部の活動を維持していくことに腐心した。

「最初は、土日に試合や練習があるということを認識できない子たちばかり。ですから、練習試合を組んでもらっても20対0とか、そんな試合もしょっちゅうでした」
 頭を下げて練習相手を探し練習試合を重ねた。黒星ばかりが続いたある日、監督はひとつの決意をした。
「覚悟を持って野球に取り組む姿勢を示すため、選手たちに坊主頭にするんだと説明しました。鏡は毎日見るだろうから、鏡を見た時に丸刈りの自分の顔を見て、覚悟を持って野球をやっているという気持ちを確認できると思うんですね。まずはそこからでした」

 丸坊主と同時に、身だしなみに関しても同じように指導していった。
 まずは、野球以外の部分から始めていった。部員たちには、野球で自分が変わることを感じて欲しかった。そして野球を続けることで、仲間が出来る喜びを知って欲しかった。部活動を通じて選手が成長していく様を、丘監督や岩崎 達哉部長たち、指導者は励みとしていた。
 そういう積み重ねが、今回の県大会ベスト4という結果だったのだ。
「練習試合もまともにできない時に、それでも相手をしてくれた監督さんから、今回ご連絡いただいたことは嬉しかった」と丘監督。

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愛工大名電 【高校別データ】
岩津 【高校別データ】
成章 【高校別データ】
豊川 【高校別データ】
豊川工 【高校別データ】
コメント (2)
後輩達、頑張って!2014.07.31 にーさん
随分前のOBです。
以前、学校に立ち寄った時のこと野球部の生徒達と言葉を交わしました。とても礼儀正しく頼もしい後輩達に喜びを感じました。
応援してます。頑張って欲しい!
頑張れ!! 岩高!!2014.06.13 とりいきよみ
娘の通う高校。
あまり野球には興味なかったけど、活躍楽しみ♥

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プロフィール

手束仁
手束 仁
  • 生年月日:1956年
  • 出身地:愛知県
  • ■ 経歴
     愛知県知多市出身。半田高→國學院大81年卒。大映映像事業部など映像会社で、映画・ビデオなどの販売促進、営業等を経て、編集プロダクションに10年勤務後独立。
     99年に『熱中!甲子園』(双葉社)を仕掛け、を刊行。同年に『都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社・刊)で本格的にスポーツ作家としてデビュー。99年12月に、『アンチ巨人!快楽読本』(双葉社)を企画編集・執筆。その後、『ふたりの勇気~東京六大学野球女子投手誕生物語』、『高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)などを相次いで刊行。さらに話題作となった『甲子園出場を目指すならコノ高校)』(駿台曜曜社)、『野球県民性』(祥伝社新書)、『プロ野球にとって正義とは何か』、『プロ野球「黄金世代」読本』、『プロ野球「悪党」読本』(いずれもイースト・プレス)などを刊行。
     さらには『高校野球のマネー事情』、『スポーツ(芸能文化)名言』シリーズ(日刊スポーツ出版社)、『球国愛知のプライド~高校野球ストーリー』などがある。
     2015年には高校野球史を追いかけながら、大会歌の誕生の背景を負った『ああ栄冠は君に輝く~大会歌誕生秘話・加賀大介物語』(双葉社)を刊行し18年には映画化された。

     スポーツをフィルターとして、指導者の思いや学校のあり方など奥底にあるものを追求するという姿勢を原点としている。そんな思いに基づいて、「高校生スポーツ新聞」特派記者としても契約。講演なども國學院大學で「現代スポーツ論」、立正大で「スポーツ法」、専修大学で「スポーツジャーナリズム論」などの特別講師。モノカキとしてのスポーツ論などを展開。
     その他には、社会現象にも敏感に、『人生の達人になる!徒然草』(メディア・ポート)、『かつて、日本に旧制高等学校があった』(蜜書房)なども刊行。文学と社会風俗、学校と教育現場などへの問題提起や、時代と文化現象などを独自の視点で見つめていく。 そうした中で、2012年に電子メディア展開も含めた、メディアミックスの会社として株式会社ジャスト・プランニングを設立。新たなメディアコンテンツを生み出していくものとして新たな境地を目指している。
  • ■ 著書
    都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社) 
    甲子園への助走~少年野球の世界は、今』(オーシャンライフ社)
    高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)

    話題作となった
    甲子園出場を目指すならコノ高校(増補改訂)』(駿台曜曜社)
    スポーツ進学するならコノ高校
    東京六大学野球女子投手誕生物語~ふたりの勇気』(三修社)
    三度のメシより高校野球』(駿台曜曜社)
    スポーツライターを目指す人たちへ~江夏の21球の盲点』(メディア・ポート)
    高校野球に学ぶ「流れ力」』(サンマーク出版)
    野球県民性』(祥伝社新書)
    野球スコアつけ方と分析』(西東社)
    流れの正体~もっと野球が好きになる』(日刊スポーツ出版社)NEW!
  • ■ 野球に限らずスポーツのあり方に対する思いは熱い。年間の野球試合観戦数は300試合に及ぶ。高校ラグビーやバレーボール、サッカーなども試合会場には積極的に顔を出すなど、スポーツに関しては、徹底した現場主義をモットーとしている。
  • ■ 手束仁 Official HP:熱中!甲子園
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