目次

[1] 勉強以上の「絶対評価」導入
[2] 悩みと出会いの中で決まった「評価基準」
[3] 「評価基準」を整える上での「決まり事」
[4] 決まり事の精度を高めつつ、絶対評価を得るためのシビアな練習
[5] 甲子園出場・勝利という「絶対評価」を得るために

 今年の春季四国大会優勝でセンバツベスト8の実力を改めて示した明徳義塾(高知)や、第10回BFA・U18アジア野球選手権日本代表監督も務める高橋広監督率いる鳴門渦潮(徳島)など甲子園出場経験校が軒を連ねた中、初出場を果たしたのは春季香川県大会準優勝の大手前高松(香川)だ。 2010年4月、47年ぶりに硬式野球部を復活させて以来、わずか5年目、しかも文武両道を掲げ、学習にも厳しく取り組んでいる進学校にもかかわらず果たした大躍進。そんな彼らを支えたのは詳細な個人データを基にした「絶対評価」。そして選手の対応性をも引き出す確固たる「チーム戦術」である。

勉強以上の「絶対評価」導入

試験後、練習前に2時間の自習時間に勤しむ香川県大手前高松高校野球部の選手たち

 高松市の西南部・栗林トンネル近く。「奥の池」と呼ばれる水と緑に囲まれた場所に大手前高松高校はある。5月14日・水曜日の取材日は中間テスト期間中。本来11時前になれば、選手たちは市内東部地区にある倉田学園グラウンドへバスで向うはずである。が、昼前になっても選手たちが出てくる気配は全くない。その理由は、「松坂世代です」と開口一番・ユーモアを見せた山下裕監督が教えてくれた。

「テスト期間中は練習前に野球部で1つの教室を使って2時間の自習をしているんです。見ていかれますか?」

 現役時代は古高松中→高松一高→大阪体育大と外野手。一年間・初芝富田林(大阪)軟式野球部監督を務めた後、同校軟式野球部監督へ。

「当初は部活動は2年夏で引退。対外試合も月に1回だけ」という厳しい環境から6年間をかけ文武両立ができることを証明。正に選手たちと共に硬式野球部復活を掴み取った指揮官だけに、勉学への取り組みも野球同様に熱い。

 ということで早速、教室を覗かせてもらうと……。選手たちは難解な数学公式を使った数式解きや、古典文学の学習などそれぞれの試験勉強に勤しんでいた。中には質問を携え各教科の先生をつかまえにいく選手も。野球部のスローガンは「感じ・考え・動ける人間になろう」であるが、彼らはこれを勉強でも実践している感がある。

 さらに試験期間以外でも通常平日5日間のうち週1回は練習を行わない補習日がある。週3回は練習後にも1時間「ナイトスタディサポート」と称された全校共通の自習時間が待っている。まずは自分の成績・進路を決する「絶対評価」と立ち向かう。これが大手前高松高校野球部員・1年生18名・2年生15名・3年生16名、計49人の日常である。

 さらに彼らは机を離れ、グラウンドに向かっても「絶対評価」が自分のレギュラー入りやベンチ入りを決めるものさしとなっている。山下監督は自らのipadを巧みに操りながら、詳細な評価基準を説明する。

「打者であれば出塁率。一塁からどれだけ進めたかを示す『奪進塁』を見ています。目標としては打率3割5分以上に加え、出塁率を奪進塁で割った数値は2.0以上。盗塁占有率という盗塁を出塁率で割った数値は0.4以上。打者としてランナーを進めた与進塁は0.75以上です」

 数字が並んだ表は圧巻だ。これに個人スキルとしてスイングスピード125キロ以上、二塁盗塁3.5秒以内(ベースからの3mの位置に左脚をおいた状態から)が加わる。

「この評価基準を冬の練習前に全部選手の前で提示したんです。今年2月の紅白戦メンバーA・B分けも11月からの測定とマシンや全投手との1箇所バッティングで出た成績で決めました。もちろん打席数も全員合わせました」

 勉強以上とも言える絶対評価で決まる大手前高松のレギュラー・ベンチ入り。その根拠として明確な数字を提示されるとなれば、選手たちも言い訳はできない。

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