Column

智辯学園高等学校(奈良)

2014.03.13

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智辯学園高等学校(奈良) | 高校野球ドットコム

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「いろんな方々が『今年の智辯学園は攻撃型のチームだ』とおっしゃるのですが、やはり大事なのは守備。守備がしっかりしていないとやはり大事な局面で足をすくわれてしまうんです」
 奈良県五条市に位置する練習グラウンドを訪れると、就任8年目の小坂将商監督が出迎えてくれた。小坂監督にとっては今回が2度目の選抜切符。春夏通算5度目の出場となる。

重要視すべきはディフェンス

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走者を付けての練習

 前回の選抜出場青山 大紀中道 勝士らを擁した2年前。全国制覇を目標に聖地に乗り込んだものの、2回戦の関東一戦(試合記事:2012年3月29日)で、記録に表われない守備のミスが重なり、1対2で敗れてしまった。

 昨秋の近畿大会では準々決勝で龍谷大平安(試合記事:2013年10月26日)に惜敗。その翌日からは、一日の練習時間の大部分を守備練習に費やしてきた。
「打撃練習の量を相当減らし、守備重視の練習をオフの間も続けてきました。2年前に痛感したのは、春の甲子園で勝ちあがるために大事なのはやはり守備なんだということ。

 守備のミスで浮足立ってしまうと、チームの動揺が止まらなくなってしまう。春はバッターもそこまで仕上がってきていないので、無駄な四球を出さず、守備が破たんしなければ、そうそう失点を喫することはない。
 しっかりと守れれば、そのいいリズムが自然と攻撃にも作用していくものです。春の選抜は投手力、守備力がしっかりしているところが勝ちあがるといわれますが、それが事実であることを2年前にあらためて学びました」

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智弁学園・小坂将商監督

 昨秋の公式戦7試合で失策はわずか3。現状の守備のレベルは既に高いが、さらなる高みをめざし、日々、ディフェンスの鍛錬に明け暮れた。と同時に、股関節の柔軟性を高めるトレーニング、走り込みにも貪欲に取り組んだ。走り込んだ量は監督に就任以来、過去最高だという。

「2年前のオフは選抜前にケガ人を出さないように安全にいきたいという気持ちが強すぎて、追い込んだ練習が不足してしまったんです。結果、春の大会で体が思うようにキレないことにつながってしまった。
 昨秋の秋から個々のレベルアップが著しいですし、今年は2年前に比べると選手の層が厚い。もしも誰かがケガをしてしまったとしても、周りでカバー出来る体制が整った。今は、ケガ人が多少出ても、大きく戦力が落ち込むことはないと思います」

 現在の部員数は3年生14人、2年生15人の計29人。以前同様、大所帯ではないものの、2年前の敗戦をきっかけに1学年当たりの人数を若干ではあるが増やしている。

「やはり以前の人数だと、ちょっとケガ人が続いたりすると、ポジションが手薄になってしまったりしていた。それに『上級生になったらベンチに入れるだろう』という雰囲気もあったので、そういった生ぬるい部分をなくしたいという気持ちもありました。やはり競争が激しい方がチーム力は間違いなく上がりますから」。

[page_break:秋以降のチームの成長]

秋以降のチームの成長

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エース・尾田 恭平投手

 投手陣は身長166センチの左腕・尾田 恭平が秋以降、エースナンバーにふさわしい結果を残してきた。公式戦成績は全7試合に登板し、3完投2完封、防御率1.74。41回3分の1を投げ与四死球が9という優れた制球力と粘り強いピッチングが身上だ。最速は136キロだが、球の伸び、キレが抜群。小坂監督に「球持ちがよく、ボールが伸びるので、コースに決まれば128キロでも十分抑えられる」といわしめた質の高いストレートにスライダー、フォークなどを織り交ぜ、アウトを積み重ねる。
 尾田の完投が戦い方の基本だが、リリーフには最速144キロを誇る岡本 和真、安定感を増した浦中 拓也らが控えており、準備は万端だ。

 打線は昨秋の公式戦7試合で打率.317、7本塁打、46打点。盗塁が16と多く、連打に頼らない攻撃も展開可能。犠打飛も18と多く、幅広い得点バリエーションを持つ。
「足のある1、2番の岩田 拓大西 涼太に粘りが生まれ、大きく成長した。ツーアウトからでも四球、盗塁、タイムリーという得点パターンが増えているのは嬉しい傾向です。やはりいいピッチャーにかかれば1試合にヒットを3、4本しか打てない試合だって出てくる。となると、鍵となるのは、ヒットが思うように打てない試合でいかにしてホームベースを相手よりも多く踏めるか。このオフは守備練習と共に、走塁練習にも相当力を入れてやってきました」

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今大会を代表する打者の1人・岡本和真選手

 そして打線の軸は、2年秋の時点で通算56本塁打をマークしているプロ注目のスラッガー・岡本 和真。新チーム結成以降の52試合で22本塁打を量産。秋の公式戦でも7試合で.632、4本塁打、13打点と打ちまくった。打率、本塁打は今大会出場選手中トップだ。
 しかしスラッガーの宿命で、打てば打つほど、相手がまともに勝負をしてこないケースが増える。近畿大会準々決勝では、4打席中、3敬遠。後続が岡本の出塁を生かせず、試合に敗れる要因のひとつになってしまった。小坂監督は昨秋まで4番に据えていた岡本を今春からは3番で起用する方針だという。
「初回に必ず岡本に打席が回ってくる方が相手にはプレッシャーがかかるはず。4番には成長著しい、スケール感のある2年生の廣岡 大志に任せる予定です。岡本が歩かされても、広岡がプレッシャーに負けない仕事ができれば、得点力は上がる」

 そして主砲・岡本自身にもさらなる成長が秋以降生じているという。
「以前は、相手がまともに勝負する気がないのにもかかわらず、強引に打ちに行ったり、ボール球に手を出したりして凡打に終わるケースがよくあった。しかし今ではしっかりとボール球を見極められるようになり、歩かされても、後続の打者に『後は頼んだぞ!』と声をかける気配りまでできるようになった。

 インコースを体の回転でシンプルにさばくコツもつかみ、技術的にもさらに成長している。相手がまともにストレートで勝負してこないことを読み、初球のフォークボールを待って、フルスイングできるような術も身につけてきた。初球からフォークをあれだけフルスイングされたら、今後ますます四球は増えるでしょう。間違いなく、ぼくの教え子の中で、歴代ナンバーワンのスラッガーです」。

[page_break:目指すは頂点!]

目指すは頂点!

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 前回の選抜出場時青山 大紀や昨年の大型遊撃手・大﨑 拓也、今年の岡本 和真など、智弁学園は技術力の高い、個性あふれる選手を毎年のように輩出している印象が強い。選手の個性を生かしながら育てていく上で、小坂監督が心がけていることはどういったことなのだろうか。

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日が暮れても懸命にバットを振る智弁学園の選手たち

「やはり入部してくる子は必ずどこかしら長所を持って入ってきますので、そこが絶対に消えることのないように、ということは強く意識しています。アドバイスのつもりが、言い方一つ間違えただけで、長所というものはけっこうあっさりと吹き飛んでしまったりするので、基本的には選手から聞かれるまで、こちらからは言いません。青山なんかは自分の考えをしっかり持っていたので、こちらから言うことはほとんどなかった。自分でおかしいと思った時に、ようやく助言を求めに来る、という感じでした」

 アドバイスを授けるとしても、「こうやれ!」といった具合に頭ごなしに言うのではなく、あくまでも『こういうやり方もある、してみたら』というヒントレベルにとどめるのだという。

「最終的にその子に合うかどうかなんて、選手本人にしかわからない。野球なんて1から10まで人に教えてもらって結果が出せるほど、甘いスポーツじゃない。自分で考え、苦しんで初めて本物の技術が身につくと思うんです。でも見てると、大物と呼ばれるような選手はやはり自分の考えをしっかりと持っているものですよ。そこを指導者サイドがいらんことを言って、邪魔しないことですね」

「監督としての考え方は以前と比べると、だいぶ変わった」と小坂監督は話す。

 以前は平日の練習も終電までするのが当たり前。昼の15時前から20時半ごろまでぶっ通しで練習していたが、近年は間に夕食タイムを45分ほど挟み、その後、練習を再開し、20時15分頃に一斉に終了する流れが定着してきているのだという。
「15時頃から18時半まで練習し、そこでいったん休憩し、夕食を食べ、19時15分ごろから約1時間、練習をする。いいタイミングで気分転換ができるし、お腹も満たされているので、後半の最後の1時間にいい集中力をもって練習に臨めることに気づかされました。練習終了後、もう一度夜食を食べることができるので、以前に比べると、体が大きくなりやすいこともわかった。トータルの練習時間は少なくなるので、最初は勇気がいりましたが、導入してみるとプラス面が明らかに多いと感じます」

 最後に、選抜大会に向けての意気込みを伺った。
「目指すは頂点ですし、最低でも3試合は甲子園で戦えるだけの準備はしてきたつもりです。とにかく目先の一戦一戦を大切にすること。当たり前のことをどれだけ当たり前にできるか、だと思っています」

 グラウンドでバットを振り込む教え子たちに視線を向けながら、指揮官はきっぱりとそう言い切った。

(文・服部 健太郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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