Column

東海大学付属望洋高等学校(千葉)

2013.12.31

[pc]

東海大学付属望洋高等学校(千葉) | 高校野球ドットコム

[/pc]

生徒や保護者向けに栄養学の講演会

東海大学付属望洋高等学校(千葉) | 高校野球ドットコム

東海大望洋 相川敦志監督

 毎年、春になると他校よりも身体が大きくなる印象を受ける東海大望洋。2010年選抜に出場し、関東大会は常連として定着している強豪だが、驚くべきことに寮がない。選手は全員が自宅からの通学生だ。生活を管理できない中、どのようにして身体作りに励んでいるのか。

 相川敦志監督は言う。
 「最近は結果を出しているので、それなりに意識の高い子が集まってきてくれています。それに加えて、生徒や保護者向けに栄養学の講演会をやります。今年からは栄養士の方に来てもらって、何を食べたかとか、体重、体脂肪などを個人的に指導してもらっています。毎日体重や体脂肪を量っていますし、やることはやっていると思います。いろんな人の協力を得ながら彼らの意識も高まっていると思いますね。
 2013年の3年生は特に大きかった。相手から『望洋デカいね』という声が頻繁に聞こえるんですよ。春の関東大会でも他校に見劣りしなかったですからね」

 近年は強豪校ともなれば、毎食のごはんの量にノルマが設定され、指導者の見張りの下で食べさせられることも珍しくないが、東海大望洋にそれはない。

 「どんぶり飯3杯食べろとか、そこまでやらせてないんですよ。それでも、栄養の話をすることで子供たちが実践している。父兄も熱心ですしね。それがウチの強みだと思います。おにぎりを持って来て食べたり、練習後にプロテインを飲む子も非常に多いですから」

 目標体重は身長マイナス100キロに設定されているが、食事量をチェックするのは年間数回、2~3泊で行う校内合宿のときぐらいだ。それでも、意識の高い選手は食べる量が多い。5番を打つ木村 幸樹は栄養学講座を聞いて、内容も考えるようになった。
 「メニューは親に任せるのではなく、自分で言うようにしています。何でもいいから多く食べていればいいというのはダメ。野菜や魚をプラスして、バランスよく食べるように意識しています。炭水化物をたくさん食べると体重が増えるので、体重を量りながら、増減を考えて食べています。体重が増えて鈍くなったと思ったら、ウエイトやダッシュをやってカバーしています」

東海大学付属望洋高等学校(千葉) | 高校野球ドットコム

東海大望洋 木村幸樹選手

 そう話す木村の毎日の食事はこんな感じだ。自宅が遠方で朝は家を出るのが早いため、朝食は学校に着いてから。2合サイズの弁当とおにぎり2個を食べる。昼食は学校の食堂で定食とうどん。練習後におにぎり1個とプロテインを摂り、帰宅後に夕食。どんぶり3杯とおかず、果物を食べるようにしている。

 この結果、体重は入学時の70キロから78キロにアップ(身長は172センチ)。現在は20パーセントある体脂肪率を10パーセント台前半に落とすのが目標だ。

 他の選手も同じように食べる。4番の鈴木 将平も夕食ではどんぶり2杯のごはんを食べ、3食以外にも授業の合い間におにぎり2個を食べるようにしている。「ウエイトでデカくなりました。ウエイト(トレーニング)後のプロテインは体重が増えますね」。体重は入学時の74キロから81キロになった。鈴木の身長は177センチ。体脂肪率は17パーセントだ。

[page_break:身体作りに見落とせない睡眠時間]

身体作りに見落とせない睡眠時間

[pc]

東海大学付属望洋高等学校(千葉) | 高校野球ドットコム

[/pc]

 食事に加え、身体作りに見落とせないのが睡眠時間。平日は学校からの最終のスクールバスが19時25分に出るため、18時半から19時には練習を終えなければいけない。通学に2時間以上かかる部員もおり、朝練習はないため、ゆっくりと睡眠をとることができる。部員に平均睡眠時間を尋ねてみると、鈴木は7時間、ショートの山口 洲は7~8時間との答えだった。よく食べ、よく寝る。これが身体作りの第一の条件になっている。
 「ウチは公立より練習時間が短いですから(笑)。強豪校で22時、23時頃に帰るところよりは睡眠が取れますよね」(相川監督)

 食事に加え、身体作りに欠かせないのがウエイトトレーニングだ。東海大望洋では、12月から2月の3ヵ月を中心に、専門のトレーナーの指導の下で行っている。また、体幹トレーニングは毎日行っている。体幹トレーニングのメニューは以下のとおりだ。

東海大学付属望洋高等学校(千葉) | 高校野球ドットコム

腕立て伏せ

 腕立て伏せ、腹筋(ノーマル)、背筋(ノーマル)各30回
 腕立て伏せ、クランチ(小刻みにやる腹筋)、左右交互にやる背筋 各30回
 腕立て伏せ、Vシットアップ(足と手を真ん中でくっつける腹筋)、背筋(左右交互2、ノーマル1×10)各30回
 以上を3セット


 すべて終わった後に一定の姿勢をキープするピラティス(3~4種類)を1分から1分半

 最後にキープ系のきついメニューが残されているのは、「自分を追い込んだ後、それを支えるために根性を出す」という精神面強化の狙いがあるそうだ。
 「体幹トレーニングは毎日です。投手なら投げるスピード、打者なら遠くに飛ばす力。これは背筋の強さに関係します。もちろん下半身の強さもありますけどね。人間の身体はバランスがありますから、背筋だけ鍛えてもダメだということで腹筋もきっちり鍛えています」(相川監督)

 ウエイトトレーニングは1日1種目。周囲の仲間と競い合うように明るい雰囲気でやる。ベンチプレス、スクワット、デッドリフトを順番に行う。初めに自分のMAXを測定し、その後はMAXの80パーセントの重量で行うのがポイントだ。このやり方を継続すると、結果的にはMAXも更新できる。ショートの山口は昨年の冬、以下のように数値が伸びた。

東海大学付属望洋高等学校(千葉) | 高校野球ドットコム

背筋を鍛えるトレーニング

 ベンチプレス 50 → 80
 スクワット 120 → 160
 デッドリフト120 → 180

 「トレーナー曰く、体力トレーニングというのは、少しペースを落としてでもシーズン中も続けてやらなきゃいけないと言われているんですが、どうしても6月ぐらいになってくると、夏の大会直前になるんでできてないですね」(相川監督)

 練習時間が短いこともあり、年間を通してなかなか継続できないのが悩みだ。

[page_break:ランメニューは短距離中心]

ランメニューは短距離中心

 また、冬といえばランメニューが定番だが、東海大望洋では長距離を走ることはない。毎日やるのはアップ後に行う100メートルを10本、または200メートルを10本のインターバル走。あとは20分間の打撃練習中に打つ班以外の選手がポール間走とグラウンドわきにある坂道ダッシュを行う。
 ちなみに、取材当日は雨のために雨の日用のメニューだったが、選手たちは「きついっす」と口を揃えていた。その内容は以下のとおりだ。

東海大学付属望洋高等学校(千葉) | 高校野球ドットコム

選手たちが「きつい」と口を揃える階段ダッシュ


※すべて校舎の1階から4階まで
 階段ダッシュ 10本
 手押し車   2本
 片足ケンケン 2本
 おんぶして登る 2本

 この他、今年の課題は股関節をやわらかくすることと強化。これまた選手たちが「きつい」とこぼすのが、股割りの姿勢を作った状態で前後左右に5回ずつジャンプするトレーニング。今後は四股を踏んだり、ハードルを跳んだり、くぐったりするメニューも取り入れていく予定だ。

 また、いわゆるトレーニングのメニューではなく、野球の動作の中でのパワーアップも図る。ロングティーはもちろん、長さ2メートル半の竹でのスイングも行う。
 「外野の奥に竹がいっぱい生えているので、それを切ってきて使います。バットの遠心力を感じるためですね。トレーニングとはいっても、ボディビルではない。野球のための筋肉、スピードをつけてるわけですから、野球に反映されたかチェックします。そこで何か弱いというのがあれば、トレーナーと連係してトレーニングの期間を延ばすこともあります。いくらいい身体を作っても野球につながらなかったら何にもならないですから」(相川監督)

東海大学付属望洋高等学校(千葉) | 高校野球ドットコム

厳しいトレーニングを終え、床に倒れこむ球児たち

 近年の東海大望洋は大学や社会人で野球を続ける選手が多い。13年の3年生も「ここまで多いのは初めて」と相川監督も驚く10人以上が上で野球を続ける。高校で終わりではないため身体作りの意識も高くなる。また、年末にはグラウンドに大学・社会人で続けている卒業生が集まる行事もある。上のレベルで活躍している先輩たちの身体の大きさを見て、体格差を実感し、「自分たちもそうならなければいけない」と思う環境があることも、選手たちの意識を高めている要因になっている。
 「何事もそうですよね。勉強も教員がいかに勉強しろと言っても、本人にその意識がなければやらないですよね。ウチはそこなんだろうな。先輩の姿を見てますから。これが伝統になりつつあるのかな」(相川監督)

 2008年夏準優勝、09年春準優勝、秋準優勝、10年夏準優勝、11年秋準優勝13年春優勝とここ6年間のうち5年間は春夏秋いずれかで県大会決勝に進出している東海大望洋
「指導は間違っていないと思っています。あとは2度目の甲子園ですね」と話す相川監督。

 寮はなくても意識次第で身体は作れる。2010年選抜に続く甲子園出場へ向けて。東海大望洋ナインの挑戦は続く。

(文・田尻賢誉)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.16

【春季埼玉県大会】2回に一挙8得点!川口が浦和麗明をコールドで退けて県大会へ!

2024.04.15

【春季東京都大会】日大豊山、注目の好投手を攻略し、コールド勝ち!指揮官「うちが東京を勝ち上がるには機動力しかない」

2024.04.15

【福島】聖光学院は福島明成と「福島北・伊達」連合の勝者と対戦<春季県大会支部予選組み合わせ>

2024.04.15

【鳥取】八頭と倉吉北がサヨナラ勝ち、鳥取東と米子東も8強入り<春季県大会>

2024.04.15

【広島】広陵は祇園北と、広島新庄は崇徳と対戦<春季県大会組み合わせ>

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!

2024.04.10

【沖縄】エナジックが初優勝<春季大会の結果>

2024.04.12

【九州】エナジックは明豊と、春日は佐賀北と対戦<春季地区大会組み合わせ>

2024.04.11

【千葉】中央学院は成田と磯辺の勝者と対戦<春季県大会組み合わせ>

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.03.17

【東京】帝京はコールド発進 東亜学園も44得点の快勝<春季都大会1次予選>

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>