第100回 県立加古川北高等学校(兵庫)2013年04月19日

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【目次】
[1]ウォーミングアップと走塁練習はセットで考える
[2]ワンバウンドゴーがもたらす打者側のメリットとは?
[3]チームの約束事こそが野球のセオリー


 平日の練習時間は約3時間。グラウンドは他クラブと共用。中学時代に名を馳せた選手を勧誘できるシステムもない。そんな、ごく普通の公立高校が強豪ひしめく兵庫の上位進出常連校となり、2008年夏、2011年春には甲子園出場を成し遂げた。
 チーム最大の武器は「走塁力」。盗塁を量産する技術はもちろんのこと、二塁走者がシングルヒット一本で本塁へ生還する技術、内野ゴロの間に三塁走者が本塁へ生還する技術、投球がワンバウンドになった際に素早いスタートで次の塁を奪う技術など、あらゆる走塁シーンにおいて、高いレベルを誇っている。甲子園出場を導く「カコキタ流走塁術」は、いったいどのような発想と練習メニューの下で生まれているのか。兵庫県加古川市に位置する学校を訪ねた。

ウォーミングアップと走塁練習はセットで考える

▲走塁練習を兼ねたウォーミングアップ

 加古川北高校の練習メニューは、ランニングでもストレッチでもなく、軽い助走をつけたフックスライディングから始まる。
 「あれはウォーミングアップとスライディング練習を兼ねた『スライディング体操』です。フックスライディングで滑ることによって、股関節をほぐす効果もあります」
 そう説明してくれたのは今年で就任11年目を迎えた福村順一監督だ。

 「このまま走塁練習に入っていきます。うちは練習時間がそう多くないので、走塁練習とウォーミングアップを同時にやってしまおうという発想ですね」。

 内野のフェア地域全面をフル活用したスライディング練習が始まった。素早く立ち上がり、次の塁を奪うシーンを想定した動きもあれば、次の塁を狙いかけたものの、無理と判断し、慌てて帰塁する動きを見せるなど、試合中に起こりうる様々な場面をイメージした走塁練習がダイアモンド内のいたるところで繰り広げられている。ベース1個あたりの人数は数人レベルのため、走塁練習にありがちな待ち時間はほとんどなく、時間効率も抜群だ。
 ベースランニングでは、ベースを回る際の膨らみを抑える感覚を養うため、ダイアモンドの内側に置かれたベースに向かって、滑り込んでいくメニューも存在。ベースランニングのタイムを向上させるべく、ベースの踏み方にも加古川北独特のこだわりがあるという。
 「うちは、スパイクの一番つま先寄りの歯をベースの内側の角に引っ掛けながら踏むように指導しています。そうすることで、ベースをより強く蹴れるようになり、膨らみを抑えつつ、スピードを加速させることができる。選手たちには『ベースは陸上競技のスターティングブロックだと思え!』と常々言っています」

 よくよく見ると、練習用のベースの多くが側面に穴が開いてしまっている。「購入した新品のベースはどれも一年以内には使い物にならなくなりますね…」と苦笑いする福村監督。
 繰り返し踏まれ、強く蹴られることで穴の開いてしまったいくつものベースを眺めているだけで、走塁に対するチームの強い意識が十二分に伝わってくる。

カコキタ流走塁を支える「こだわりのシャッフル」

▲加古川北 福村順一監督

 アップを兼ねたスライディング練習、ベースランニングが終了すると、次の走塁練習メニューが始まった。

「今からバッテリーをつけ、満塁の状態で、ゴー、バックの走塁練習を始めます」

 実際にボールを打つわけではないが、バッターボックスには打者役の選手がバットを持って立っており、投手が投球すると、本番同様、各塁の走者たちは、第1リードから第2リード地点へとシャッフル動作をおこないながら、離塁する。バッターがスイングをした場合はゴー、見逃せばバック、投球がワンバウンドした場合は打者が見逃しても、一、二塁の選手はゴーという決まりだ。

 「走者は、右足が空中に浮いている状態でインパクトシーンを迎え、ゴーか、バックかの判断を下します。スムースに一歩目が切れるよう、右足はつま先を進行方向に向けながら、カカト→つま先の順に地面に着地する。ゴーならばそのままつま先で地面を掻き、スタートを切る。打たないと判断した場合は、右足のつま先を少し内側に閉じながら、左回りで帰塁します」

 しかし、時には勢いが付きすぎ、バックしなければいけないのにもかかわらず、左足が一歩、進行方向に出てしまうケースもある。その場合は左回りでなく、右回りで帰塁するのがカコキタ流だ。

 「左足が一歩出てしまった状態からだと、人間の体の構造上、右回りの方がスムースに帰塁できるんです」 
 帰塁力を高めることで、より大きな第二リードをとれるようになる。そこに「スムースな一歩目のスタート」が加わることで、より速く先の塁へ到達することが可能になる。
 「うちの選手は50メートルタイムが速い選手はほとんどいない。今年は、6秒2の選手が一人(戸田祐生)いる以外は、軒並み7秒前後。でも、このシャッフルが実戦できちんとおこなえるようになると、シングルヒット一本で二塁から生還する確率や、内野ゴロで三塁からホームを奪える確率、投球がワンバウンドになった際に次の塁を奪える確率がどれも大幅に上がってくるんです」

 細部までつきつめた、こだわりのシャッフルがもたらす、抜群の帰塁力とスタート力。加古川北の走塁力を語る上で不可欠な基本技術といっていいだろう。

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