県立浜松工業高等学校(静岡)
過去に夏の甲子園に2回、春の選抜は3回出場している静岡県立浜松工業。
卒業後の就職率も高く、地元では人気校のひとつとなっている。また、81名が所属する野球部の生徒たちは、入学当初から『浜松から甲子園』を目指し、高い意識で入部を決めてくるという。その浜松工を率いて今年で5年目となる稲垣博監督が、2年前の春から、徹底して行っているのが、選手たちの体作りだ。
徹底された体力管理
今年で就任5年目の稲垣監督
「浜松工では、体力に関してはうるさいほど言って、管理しています。トレーニングでも、食事でも睡眠でもそうですけど、そこら辺はある程度縛りをつけて管理しているので、どこに行っても『体が大きくなったね』と言われますね」
夏休みの練習では、冬のトレーニング以上に厳しく、体重の増加を目指す。
「夏休みの練習では、体重が前日よりも落ちている選手は練習させません。それは罰とかじゃなくて、体力が落ちている時に練習すると、どんどん体力が落ちてしまう。だから、今日は球拾いや練習の手伝いをして食事をしっかり取って、体力をためなさいという休養の日としてのものなんです。おかげで、ここ4年間で熱中症になった生徒はゼロですよ」(稲垣監督)
また、筋力測定も欠かさない。
「うちの部員たちは、夏休みに2キロは増えますね。1週間に500グラムずつ増えていくんですよ。ただ、1ヶ月に2キロいきなり増やすのが難しい生徒は、本人と相談をしながら、それでもなんとか2キロを目安に増やしていきますね」
浜松工の生徒たちは家から通うため、各家庭が協力して一日の食事もしっかりとサポートしてもらっている。浜松工がここまで、体作りを大事に考える一番の理由とは、なんなのだろうか。
ノックを受ける選手たち
「甲子園に出ている選手の体格ってすごいでしょ。やっぱり、その土台があった上で、技術をつけていかないと、ついていかないと思うんです。
でも、そこで『体重上げましょう』って言って、1、2ヶ月で体重が増えれば誰も苦労しないじゃないですか。やっぱり3年間かけてコツコツやっていかないと出来ないので、入学してきた時から体づくりについては話していますね。選手たちも、一生懸命やってくれるので、しっかりと成果も出ています」(稲垣監督)
こういった取り組みの継続によって、この春、浜松工は静岡県大会8強入りを果たした。
産業の街をさらに熱く!
[pc]
[/pc]
また、体重が増えてきた選手たちが、野球面でとくに成長を感じるのは、打撃力だと稲垣監督は語る。
「やっぱり体力の差が出るのは、バッティングだと思います。今年のキャプテンの朝倉も160センチで小柄なほうだけど、入学してから体重を15キロちかく増やして、今はうちの1番を打っています。
この朝倉が、秋の公式戦で、2対4と2点を追う9回裏に、サヨナラ3ランを打ったんですよね。小さな選手でも、一番大事な場面で、あれだけのホームランを打つのは僕としても嬉しかった。そういう努力が実る瞬間っていうのは、やっぱり嬉しいですね。
体力が増えると技術も上がるので、そういうのが自信につながっていくんだと思うんです」
キャプテン・朝倉陽輔は、これまでのトレーニングをこう振り返る。
「体が小さくても力負けはしたくなかったんです。下級生の頃は、苦しかったけどたくさん食べて体重を増やしました。中学時代の仲間にあっても、『体がでかくなったな』って驚かれますね。やっぱり甲子園に出ることを目標にしてきたので、この夏も誰よりもホームランを打ちたいです」
浜松工業の練習風景
ちょうど2年前の夏、浜松工は静岡大会で、ノーシードからベスト4まで勝ち進んだ。この年の浜松工ナインは、どんなに点差をつけられても終盤から逆転する強さを持っていた。その当時のチームと、今年の代には、似たものがあると稲垣監督は言う。
「当時、2年続けて初戦敗退が続いて、それでも、みんなが前向きについてきてくれた。今までやってきたことを試合で出してくれればそれで十分だって。生徒たちも、どんなに劣勢でも『どんどん、いけ!』という雰囲気でしたね。その時に、背番号をつけてベンチしていた当時1年生の部員(現3年生)が3人いたんです。ベスト4まで勝ち上がる雰囲気を知っている選手が、残っているということは大きいですね」
この夏は、頼もしい投手陣の藤沼翔太郎、青池優也、樽井健一郎、花松佑哉、中根浩也ら。また、打線も主軸を打つ長谷川綾也(内野手)、木下圭(内野手)、馬渕賢弥(外野手)を中心に、全員野球で戦い抜く。
秋から春。そして夏と大きな成長をみせてきた浜松工ナインたち。
「ここにいる選手たちは、県内の強豪私学に行こうと思えば行けたと思うんです。だけど、多分そういう気持ちがなかったんでしょう。甲子園に行くような高校をライバルとして、出来れば浜松で甲子園に行きたいと思ってくれている。そんな選手たちのことを、地元の浜松の方々も応援してくれていますね」
浜松市内の高校が夏の甲子園に出場を決めれば、2002年の浜松学院(当時:興誠)以来、10年ぶりとなる。浜松工にとっては、15年ぶりの夏だ。
この夏、浜工球児が、浜松の街をさらに熱くする。
※浜松工の初戦は7月16日の予定です!