Column

県立浜松工業高等学校(静岡)

2012.07.09

野球部訪問 第74回 県立浜松工業高等学校(静岡)

 過去に夏の甲子園に2回、春の選抜は3回出場している静岡県立浜松工業。
 卒業後の就職率も高く、地元では人気校のひとつとなっている。また、81名が所属する野球部の生徒たちは、入学当初から『浜松から甲子園』を目指し、高い意識で入部を決めてくるという。その浜松工を率いて今年で5年目となる稲垣博監督が、2年前の春から、徹底して行っているのが、選手たちの体作りだ。

徹底された体力管理

今年で就任5年目の稲垣監督

 「浜松工では、体力に関してはうるさいほど言って、管理しています。トレーニングでも、食事でも睡眠でもそうですけど、そこら辺はある程度縛りをつけて管理しているので、どこに行っても『体が大きくなったね』と言われますね」

 夏休みの練習では、冬のトレーニング以上に厳しく、体重の増加を目指す。
「夏休みの練習では、体重が前日よりも落ちている選手は練習させません。それは罰とかじゃなくて、体力が落ちている時に練習すると、どんどん体力が落ちてしまう。だから、今日は球拾いや練習の手伝いをして食事をしっかり取って、体力をためなさいという休養の日としてのものなんです。おかげで、ここ4年間で熱中症になった生徒はゼロですよ」(稲垣監督)

 また、筋力測定も欠かさない。
「うちの部員たちは、夏休みに2キロは増えますね。1週間に500グラムずつ増えていくんですよ。ただ、1ヶ月に2キロいきなり増やすのが難しい生徒は、本人と相談をしながら、それでもなんとか2キロを目安に増やしていきますね」
 浜松工の生徒たちは家から通うため、各家庭が協力して一日の食事もしっかりとサポートしてもらっている。浜松工がここまで、体作りを大事に考える一番の理由とは、なんなのだろうか。

ノックを受ける選手たち

 「甲子園に出ている選手の体格ってすごいでしょ。やっぱり、その土台があった上で、技術をつけていかないと、ついていかないと思うんです。
でも、そこで『体重上げましょう』って言って、1、2ヶ月で体重が増えれば誰も苦労しないじゃないですか。やっぱり3年間かけてコツコツやっていかないと出来ないので、入学してきた時から体づくりについては話していますね。選手たちも、一生懸命やってくれるので、しっかりと成果も出ています」(稲垣監督)
こういった取り組みの継続によって、この春、浜松工は静岡県大会8強入りを果たした。

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 また、体重が増えてきた選手たちが、野球面でとくに成長を感じるのは、打撃力だと稲垣監督は語る。

「やっぱり体力の差が出るのは、バッティングだと思います。今年のキャプテンの朝倉も160センチで小柄なほうだけど、入学してから体重を15キロちかく増やして、今はうちの1番を打っています。
 この朝倉が、秋の公式戦で、2対4と2点を追う9回裏に、サヨナラ3ランを打ったんですよね。小さな選手でも、一番大事な場面で、あれだけのホームランを打つのは僕としても嬉しかった。そういう努力が実る瞬間っていうのは、やっぱり嬉しいですね。
 体力が増えると技術も上がるので、そういうのが自信につながっていくんだと思うんです」

 キャプテン・朝倉陽輔は、これまでのトレーニングをこう振り返る。
「体が小さくても力負けはしたくなかったんです。下級生の頃は、苦しかったけどたくさん食べて体重を増やしました。中学時代の仲間にあっても、『体がでかくなったな』って驚かれますね。やっぱり甲子園に出ることを目標にしてきたので、この夏も誰よりもホームランを打ちたいです」

浜松工業の練習風景

 ちょうど2年前の夏、浜松工は静岡大会で、ノーシードからベスト4まで勝ち進んだ。この年の浜松工ナインは、どんなに点差をつけられても終盤から逆転する強さを持っていた。その当時のチームと、今年の代には、似たものがあると稲垣監督は言う。

「当時、2年続けて初戦敗退が続いて、それでも、みんなが前向きについてきてくれた。今までやってきたことを試合で出してくれればそれで十分だって。生徒たちも、どんなに劣勢でも『どんどん、いけ!』という雰囲気でしたね。その時に、背番号をつけてベンチしていた当時1年生の部員(現3年生)が3人いたんです。ベスト4まで勝ち上がる雰囲気を知っている選手が、残っているということは大きいですね」

 この夏は、頼もしい投手陣の藤沼翔太郎青池優也樽井健一郎花松佑哉中根浩也ら。また、打線も主軸を打つ長谷川綾也(内野手)、木下圭(内野手)、馬渕賢弥(外野手)を中心に、全員野球で戦い抜く。

 秋から春。そして夏と大きな成長をみせてきた浜松工ナインたち。
「ここにいる選手たちは、県内の強豪私学に行こうと思えば行けたと思うんです。だけど、多分そういう気持ちがなかったんでしょう。甲子園に行くような高校をライバルとして、出来れば浜松で甲子園に行きたいと思ってくれている。そんな選手たちのことを、地元の浜松の方々も応援してくれていますね」
 浜松市内の高校が夏の甲子園に出場を決めれば、2002年の浜松学院(当時:興誠)以来、10年ぶりとなる。浜松工にとっては、15年ぶりの夏だ。
この夏、浜工球児が、浜松の街をさらに熱くする。

浜松工の初戦は7月16日の予定です!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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