躍進から一転、初戦敗退のチームに

"府立交野高校野球部 村木監督"

 何かに取り憑かれてしまっているかのようだった。苦笑交じりに村木監督は言う。

「力もないのに、勢いだけで勝ったんやから、わきまえろよ!っていう神様の戒めちゃいますかね?」

 大阪府立・交野高――。一昨年3季連続で府大会ベスト8の好成績を残した普通公立校だ。『私学30強の激戦区』と呼ばれる大阪府にあって、交野の躍進ぶりには目を見張るものがあった。

 しかし、昨年の交野の成績は惨憺たるものだった。3大会連続で初戦敗退。それも、全ての大会で初戦から強豪校とぶつかるという不運が重なってのものだった。村木監督の、なかば自嘲気味の冒頭の言葉は、私学全盛の大阪で戦う指揮官の、ちょっとしたジョークだ。村木監督は続ける。

「一昨年に3季連続でベスト8に行ったのは、いろんな偶然が重なったからやと思っていたので、その分が、降りかかってくるやろうなというのは思っていました。でもね、昨年のチームなんかは、そんなに力があるわけでもなかったのに、初戦から大阪桐蔭東大阪大柏原と試合ができた。幸せなことやったと思います。どのチームにもプロに行った選手がいましたからね。石川 慎吾(日ハム)はどんなバッターやねんとか、いい経験でした」

 交野はごくごく普通の公立校だ。野球に特化しているわけでもなく、進学校であるわけでもない。体育科もないし、実業系の学校でもない。そんな普通のチームに、なぜ躍進が訪れたのか。


 指揮官に尋ねると、村木監督からは意外な言葉が返ってきた。

「結果なんでね。たまたまだと思いますよ。大会には勝ちにいきますんで、作戦面など色々やりますけど、普段から、勝つためにどうしようとかは考えていないです。自分らなりで一生懸命やって、勝つときは勝つし、負ける時は負ける。執着してやっているわけではないんですよ」

 勝っても、勝てなくてもいい――。

 動(やや)もすると、捉え方を間違ってしまいそうな表現だが、この言葉は言いかえれば、チームとしての骨格にそれほどの自信がないと言えるものではない。村木監督は、勝利を目指していないわけでも、敗北に向かっているわけでもない。ただただ、自分らのやっている野球を信じ、貫いているのだ。

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