2011年の春季神奈川大会で準優勝。は8強入りを果たすなど、近年急速に力を付けている向上の冬合宿の様子からその強さの理由と、向上野球の魅力を探った。

目次

【目次】
[1]部員が互いに育て合うチームへ
[2]組織化の徹底による100名の意識統一
[3]選手同士で生み出す練習の雰囲気
[4]オリジナルのものを見つけて勝負する


特集 ライバル校 冬の実況中継

部員同士で互いに育て合うチームへ

向上

"平田監督(左)と浦山トレーナー(右)"

 「最初、僕が就任した時は、この合宿をやらされてる感があったんです。辛いという感情が先にくる。早く終わらないかなという表情で選手たちは走っている。それが年々、無くなってきましたね」
 互いに盛り上げながら苦しい冬合宿を乗り切ろうとする部員たちの姿をみながら、平田隆康監督は言葉を続けた。

「彼らの何が変わったかというと、まず、表情がよくなりました。先を考えた動きや声掛けが出来るようになってきました。選手同士で『今、夏のために走ってるんだぞ』『これを走って俺がエースになるんだ!』そんな言葉が自然と練習中に出てくるんです。またここ数年では、こいつが声掛けてくれたらなってやつが、こっちが何も言わなくても声を出してくれるようになったんですよ」

 今では、この冬合宿の練習中に平田監督が指示を出すことはなくなった。選手たちのそばで一緒に笑い、励まし、そして時々、一緒に走る。
 部員が、互いに育て合う。そんなチームを平田監督は10年かけて築いてきた。

 向上といえば、09年に横浜からドラフト指名された安斉 雄虎投手をはじめ、これまで7人のプロ野球選手を輩出しているが、創部47年の歴史の中で、いまだ甲子園の出場経験はない。
 それでも、ここ最近の向上は、県内でも高い戦績を残している。2011年は、春季神奈川大会で準優勝。は8強入りを果たした。ちなみに、09年~11年の3年間でも、春夏秋の県大会でベスト8以上が計5回。それ以前の戦歴を振り返ると、夏に8強入りしたのは、94年が最後となる。この結果からみても、昨今の向上の強さがうかがえる。

 しかし、先に触れておくと、向上の練習環境は、決して恵まれているとは言い難い。もちろん向上に限ったことではないが、グラウンドは複数の部活動と使用しているため、野球部は外野までスペースを確保できない。室内練習場も、照明設備もない。練習では、フリーバッティングも、外野からの連携プレーも、中距離以上のランニングメニューも実施することは出来ない。さらに、近年の活躍により部員もここ数年で大幅に増え、今では100名を超える大所帯となった。それでも、部員たちはそんな練習環境を知った上で、自ら向上野球部に入部してくるのだ。